食物からの内部被曝

川崎市の主婦B子さん(37)は、福島第一原発の事故以来、小学3年生を頭に3人の子どもの食事に苦心してきた。
野菜と飲料水、牛乳は、西日本から月1回、宅配便で取り寄せる。
野菜はよく洗い、生では食べさせない。

肉は塩と酢を入れた水に数時間漬けてから調理する。
チェルノブイリ後の実験で放射性物質を除去できるとのデータを見つけたためで、「どの程度効果があるかはわからないが、塩味がつくし、油が水に溶けてフライパンが汚れないこともあり、続けている」と話す。

放射能の体への影響は、外から浴びる外部被曝のほかに、食物や呼吸で体に取り込んだ放射性物質による内部被曝がある。
国は、飲料水、肉・野菜・卵などについて放射性ヨウ素放射性セシウムそれぞれの、暫定規制値を定めている。

放射性ヨウ素半減期放射線が半分になる時間)が8日間と短いため、現在主に問題になるのは放射性セシウムだ。

放射性セシウムの規制値(1キロあたり500ベクレル)の値の牛肉200グラムを食べた場合、体内に取り込まれる量は100ベクレル。
すべて放射性セシウム137と仮定した場合、国際放射線防護委員会の示す計算式で被曝量に換算すると大人で1・3マイクロ・シーベルトになる。
セシウム137の半減期は30年で、尿などから徐々に排出されることも含めて、50年間での被曝量を計算したものだ。
子どもは、大人より被曝量は増える。

国際放射線防護委員会の計算式は内部被曝の影響を軽視している、との批判もあり、より厳しい計算式を示すグループもある。

体内の放射性物質を効率的に排出できる食材はあるのか。岐阜環境医学研究所所長の松井英介さんによると、科学的に確かな効果が確認された排出法はない。
松井さんは、「まずは、なるべく取り込まないこと。バランス良い食事や睡眠、運動を心がけて、健康で抵抗力のある体を作ることが大切。そのうえで、ほかの放射性物質も含めたきめ細かな検査や基準の見直しを国に求めたい」と話す。

B子さんは、今は、こう思い始めている。

「どれだけ汚染されているかわからない以上、同じものばかり食べるのではなく、様々な産地の食材を使うことが危険を減らすことにつながるのではないか」。
足りない食材をスーパーで買う際は、なるべく産地が偏らないようにしている。



東京都品川区のシステムエンジニア(34)は、食品中の放射性物質の濃度と摂取量を入れると年齢別に被曝量がわかるシステムを作成、ホームページで公開している。



出典 読売新聞 2011.8.11
版権 読売新聞社




<関連サイト>
放射線測定器、相談391件=廉価品、不正確な数値も―国民生活センター
福島第1原発事故で、国民生活センターは8日、放射線測定器に関する相談が7月末までに391件に上ったと発表した。
インターネット販売されていた安価な測定器のテストでは、低い線量を正確に測定できなかったとしている。
 
同センターは事業者に対し、製品の改善を要望。
その上で、政府の公表データを参考に、機器の測定値を直ちに信頼することは避けるよう消費者にアドバイスしている。
 
同センターによると、相談は3月8件、4月68件、5月85件、6月152件、7月78件。
内容別(重複可)では、「契約・解約」が最も多く274件。次に「販売方法」197件、「品質・機能」122件と続いた。
金額別では、5万円以上10万円未満がトップで149件、次に1万円以上5万円未満が97件。合計すると全体の62.9%を占めた。
 
同センターは1万円以上10万円未満の価格帯でネット販売されていた十数種の製品のうち、入手できた中国製、製造国記載なしの9製品をテスト。
自然放射線の測定値がいずれも、正しいとみられる数値より高く、各10回の計測でばらつきも見られたという。
日本製は含まれていないが、自治体が購入したケースもあった。

出典 時事通信 2011.9.8発信
版権 時事通信社


「東北の野菜や牛肉を食べたら健康を害する」武田邦彦教授に一関市長が抗議
読売テレビ(本社・大阪市)制作の番組で「(岩手県)一関市には放射性物質が落ちている」などと発言したとして、同市の勝部修市長は、中部大の武田邦彦教授に抗議のメールを送ったことを読売新聞の取材に対して明らかにした。

番組は「たかじんのそこまで言って委員会」で、東北の一部では4日午後1時半から放送された。
同市によると、小学生からの「東北の野菜、牛肉を食べたら僕らはどうなるの」との質問に対し、武田教授は「今、生産するのが間違っている。東北の野菜や牛肉を食べたら健康を害するから、捨ててほしい」などと発言。
他の出演者が反論したが、武田教授は発言を取り消すつもりはないとしたという。

岩手県内では放送されなかったが、市民の情報提供で発覚。
インターネットで確認した勝部市長が6日、「地元自治体の首長として強く抗議する。本当に発言を取り消す考えはないのか」とメールを送ったという。

武田教授は読売新聞の取材に対し「メールはまだ届いていない。生産者の利益ではなく、子供たちの健康を守ることを考えた。間違った発言ではない」と話した。読売テレビ総合広報部は「武田教授を批判する意見も取り入れている。番組を通して見てもらえば、問題のある内容とは思わない」としている。

出典 読売新聞 2011.9.7
版権 読売新聞社

<私的コメント>
「東北」というくくりには問題があります。
逆に「一関市」と限定した発現が問題になったのでは、と思われます。
武田教授は歯に衣着せず分かりやすく説明する方です。
結果的に一見乱暴な物言いになってしまいます。
御用学者のように「現在直ちに影響が出るわけではない」といった訳の分からない物言いはしません。
東北特に名指しされた一関市の生産農家の方の怒りはよくわかります。
しかし、少し冷静になって考えた場合、「全く問題ない」「大方安全である」「安全かも知れない」「安全とはいえない」「直ちに問題はない」「危険とはいえない」「危険かも知れない」「危険性は排除出来ない」「危険と思われる」「危険である」といった言い方のいずれかになります。
「全く問題ない」以外は、実は「危険である」か「危険性をはらんでいる」のです。
小学生ということで、「大人よりも危険である」「分かりやすく説明しよう」という考えからの発言(失言?)だったのではないでしょうか?
武田教授も、抗議に対して「じゃあ、本当に安全なんですか?」と反論したいのをグッとこらえているんだな、と思いました。


読んでいただいてありがとうございます。
他にもブログがあります。

他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
があります。