体とこころの通信簿 嚥下障害 のみ込む時の痛み すぐ受診

食事をしたり、飲み物を飲んだりするとき、ちゃんとのみ込めていますか? 
高齢者を中心に、障害を引き起こすことがあり、注意が必要です。

のみ込む仕組みは、様々な神経や筋肉が複雑に関係している。
まず、目で見たり、鼻で香りをかいだりして食べ物だと認識する。
口へ入れ、かんでのみ込みやすい硬さと大きさにし、舌やほおでのどへ送りこむ。
食べ物や水をのみこむとき、食道の入り口が開き、隣り合う気道に誤って入らないよう「喉頭蓋」という器官が閉じてフタの役割を果たす。
食べ物や水は重力や食道の筋肉によって胃へ運ばれる――というわけだ。

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うまくのみ込めない嚥下(えんげ)障害には物がのどや食道にひっかかるなどする「器質的障害」とまひなどでのみ込む仕組みが働かない「機能的障害」がある。
器質的障害には、炎症などのほか、がんや良性の腫瘍の可能性もある。

舌を含む頭頸部のがんは、世界的には6番目に多いが、日本では非常に少ない。
日本のがん新規患者は年50万人超で、そのうち頭頸部は約1万5千人だが、米国は3万~5万人という。

咽頭、のどの下の方に痛みを伴う場合や、首や首のリンパ節が腫れたり、しこりができたりした場合は、速やかに専門医に受診する必要がる。
特に、のみ込んだときに、耳、耳の裏に響くような痛みを訴える人は要注意だ。

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一方、機能的障害の原因には、脳梗塞脳出血によるまひなどがある。
麻痺によっては、喉頭蓋が閉まる反射や筋肉の動きをつかさどる神経がうまく働かなくなる。

さらに加齢の影響もある。年をとると、歯が少なくなりかんでのみ込みやすい硬さや大きさをつくるのが難しくなったり、知らない間に小さな脳梗塞が起こっていたりする場合がある。
喉仏(のどぼとけ)が引き上げられ喉頭蓋が閉じるのに時間がかかる場合や、気管に入ってもむせにくくなることもあるという。

機能的障害や加齢に伴う場合、嚥下の機能訓練に取り組む医療機関で、リハビリやトレーニングを行う。食べることで、のみ込みにかかわる筋肉が鍛えられている。
特にお年寄りの場合、例えば、手術で1週間、1カ月と食べられないと、リハビリテーションが必要になる。

「食べることには生きる楽しみがある。検査でのみ込む能力を定期的に確かめた上で、どういう硬さや形状なら、気管に入らず安全に食べたり飲んだりできるのか、助言することもできる」とリハビリの専門医は話す。(寺崎省子)

◆相談ナビ
日本気管食道科学会のウェブサイト
http://www.kishoku.gr.jp/index.html
(食べ物がのどにつまる原因、専門医や施設を紹介)

慶応病院の医療・健康情報サイトKOMPAS
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000270.html
(嚥下リハの内容などを紹介)

出典 朝日新聞・朝刊 2012.2.2
版権 朝日新聞社