重症アレルギーに緊急の自己注射

アレルギーでショック症状… 緊急の自己注射で緩和

アレルギーのある食物を食べたり、ハチに刺されたりした時、呼吸困難や意識消失など急激な症状が表れることを「アナフィラキシー」という。
この状態になった場合、緊急に使用して症状の改善を図る自己注射薬が2011年秋に保険適用された。(針原陽子



関東地方の小学校に通う児童は数年前、給食を食べてすぐ、呼吸困難などの症状が出た。
牛乳に対するアレルギーがあり、代替食の提供を受けていたが、おかわりの際、調理師が誤って通常食を提供したのだ。
学校はすぐに保護者に連絡、駆けつけた母親が、症状を緩和する自己注射薬を使った後に病院で受診し、事なきを得た。

アナフィラキシーは、食べ物などが体に入った時、過剰に反応するアレルギー反応の一つだ。

食べ物やハチの毒、薬などのアレルゲン(アレルギーのもととなる物質)が体内に入ると、それを「異物」とみなして攻撃する「抗体」が作られ、目や鼻の粘膜や気管支、腸などに存在する「マスト細胞」に結合する。
その後、再びアレルゲンが入ると、抗体と結合して、マスト細胞が活性化し、細胞内の神経伝達物質が血液中に放出される。

神経伝達物質ヒスタミンは、かゆみやくしゃみ、鼻水などを誘発する。
ロイコトリエンは気管支の収縮などを招き、呼吸困難、嘔吐、発疹、下痢などを引き起こす。意識消失や血圧低下などを伴う「アナフィラキシー・ショック」に陥ると、死に至ることもある。

国立病院機構相模原病院(神奈川県相模原市)臨床研究センター・アレルギー性疾患研究部長の海老沢元宏さんによると、日本では年間約60人がアナフィラキシーショックで死亡する。
半数はハチ毒が原因で、残りは食物や薬によるものか、原因不明という。

死亡を防ぐには、症状を緩和する自己注射薬(商品名「エピペン」)を使うのが効果的だ。
エピペンは、アドレナリン(別名エピネフリン)が入っており、気管支を広げて呼吸困難を改善するほか、心臓の機能を増強して血圧を上げ、ショック症状を和らげる。
しびれやせき込みなど、アナフィラキシーの初期症状が出た時点で、太ももの前の外側に注射する。

エピペンは、アメリカで30年以上前から使われている。
日本では2003年、ハチ刺されに対し承認され、05年に食物や薬によるアレルギーにも認められた。しかし当初は保険がきかず、処方料なども含め1本約1万5000円と高価で、患者団体は保険適用を求めてきた。
11年9月に保険が適用され、薬価は1万950円(0・3ミリ・グラム)、8112円(0・15ミリ・グラム)で、3割負担だと約3300~約2400円程度になる。

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文部科学省が児童・生徒約1280万人を対象に04~05年に行った調査では、食物アレルギーの有病率は2・6%。0・14%が、アナフィラキシーショックの経験があった。

保険適用により、発症の可能性のある子どもにエピペンを携帯させる保護者が増えると考えられる。
海老沢さんは「保育園や学校などで発症した時に備えて、保育士や教職員に対し、エピペンの安全な使い方の講習会を開くなど、対応を進めるべきだ」としている。

出典 読売新聞 2012.3.3
版権 読売新聞社

<私的コメント>
エピネフリンは救急外来でしばしば使用されている緊急薬品です。
本来はタダみたいに安い薬品です。
日本の薬価制度は、実に不思議です。