ポリオ不活化ワクチン、9月切り替え

変わる接種パターン ポリオ不活化ワクチン、9月切り替え 11月から4種混合も

ポリオの予防接種が9月から、より安全な不活化ワクチンに一斉に切り替わる。
これまでの生ワクチンは、ごくまれに起こる、まひなどの副作用が問題になっていた。
秋以降はどう変わるのか、どのように受けたらいいのか。


ポリオの予防接種は法にもとづく公的接種で、自治体が行う。
9月1日から、現在の生ワクチンから不活化ワクチンの単独型に切り替わる。
これまでは国内で未承認の不活化ワクチンは、一部の医療機関で接種することができた。

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11月ごろには、不活化ポリオと、3種混合(ジフテリア・百日ぜき・破傷風)を合わせた4種混合ワクチンの接種が始まる見通しだ。

生ワクチンはごくまれに、手足などにまひが出ることがあった。
01年度以降15人、100万人中約1・4人の割合だ。

また、生ワクチンの接種後約1カ月は便の中にウイルスが出る。
免疫のない人の体内に入るとまれに発症することがある。
これまで接種した子の家族ら6人への2次感染が報告されていた。

不活化は病原性をなくしており、接種によるまひが起きず、主な先進国が導入している。

日本でも不活化の早期導入を求める声が根強かった。
今年3月、第3子となる長男を出産した大分県の主婦(31)もそのひとり。
不活化を接種できるようになると知り、安心した。
「2歳の娘の時は生ワクチンを受けた。万一まひが起きたらと不安だった」と話す。

生ワクチンは2回、不活化は4回の接種が必要だ。
秋以降、単独型と4種混合のどちらのワクチンを何回受けるかは、それまでに、どんな予防接種を受けたかによって違ってくる=
すでに海外品の不活化ポリオを受けていても、9月以降に残りの必要回数を承認された単独型に切り替えることができる。

生ワクチンの接種は保健所などでの集団接種が大半だが、9月以降は多くの自治体が医療機関での個別接種に切り替える予定だ。
厚生労働省は「十分な量のワクチンを供給できる」と説明している。
自治体などに多くの問い合わせが寄せられることも予想され、一部の自治体では、問い合わせの専用回線の設置を検討している。

●見送り増、流行の危険
一方で、生ワクチンを使う、今春の公的接種の接種率は例年より低くなりそうだ。
不活化の導入を待っている人が多いからだ。

東京都杉並区のTさん(27)も昨秋と今春、生後11カ月の長女の生ワクチンの接種を見送った。
医師による個人輸入の不活化ワクチンを受けようと考えたこともあった。
だが、「承認された安全なワクチンを受けさせたい」と、あと半年待つことにした。

「今春の接種率は5割程度になるのではないか」

4月23日に開かれた不活化ポリオの導入に関する厚労省の検討会で、川崎市のS・医務監は市内の接種の途中経過をそう説明した。
同市では例年、9割以上の接種率があるが、昨秋は65・7%で全国平均より約10ポイント低かった。今春はさらに少ないという。

Sさんは「9月に切り替わると知って、待ちたいという保護者が多いようだ」と話す。

多くの専門家や行政の担当者が、接種率の低下を心配している。
国内では1980年を最後に自然感染によるポリオ患者は出ていない。
だが、全人口で8割以上の接種率がないと、流行の危険性がある。
免疫のない集団が大きくなると、一度、海外などからウイルスが持ち込まれれば、広がりかねないという。

ポリオワクチンに関する厚労省検討会の座長を務める岡部信彦・川崎市衛生研究所長は「秋まで待ちたいという保護者の気持ちはわかるが、接種率が下がると流行のリスクがある。対象の子は春に受けて欲しい」と話している。        (南宏美)


<私的コメント その1>
「対象の子は春に受けて欲しい」・・・待ちに待った不活化ワクチンが4か月後に実施される。
両親の心理としてはどうなんでしょうか。
小児科医の中には不活化ポリオワクチン(IPV)の導入を待たずに、経口生ポリオワクチン(OPV)を即刻中止すべきだと主張されている方もいるそうです。
OPVの問題点はワクチン関連ポリオ麻痺(VAPP)が起こる可能性があることです。
ポリオの自然感染よワクチン関連ポリオ麻痺にかかる確率が高いということならば、いくら「集団接種による流行の阻止」といわれても両親の納得は得られません。

行政がそこまでこだわるならば、(作戦として)公表の時期が少し早かったんではないでしょうか。
生ワクチンの接種率の低下は仕方ないのではないでしょうか。

岡部信彦氏は、つい最近まで国立感染症研究所感染症情報センター長だった方です。
恐らく定年に伴う異動と思われますが、国から市へとこういった異動もあるんですね。

結局は「原発は安全だ」という旗ふり役の人と変わらないコメントです。
誰でもが分かることですが、安全なワクチンなら変える必要がないわけですから。

日本ではこの20年以上ポリオの自然感染の報告がありません。
だからといって油断もできないのが難しいところです。

<私的コメント その2>
不活化ワクチンも10年以上効果が続くことが確かめられていますが、数十年単位で効果が続く”生”に比べると持続時間は短い、といわれています。