心不全

心不全 病名ではなく状態

心不全と診断された」とよく聞くが、心不全は病名ではない。
心臓のポンプ機能の悪化によって起きた体の状態のことで、いろんな症状がある。
 
心臓は収縮・拡張を1日に約10万回繰り返し、全身に血液を送り出す。
ポンプ機能が悪くなると臓器に血液を送れず、疲れやすくなり、運動できなくなる。
また、肺に血液が停滞して息切れしたり、静脈内の圧力が高くなって水分が血管外の組織にしみ出し、足がむくんだりする。
 
心不全の原因となる病気は、心臓の弁が正常に働かなくなる弁膜症、高血圧などいくつもある。
心不全を放置すれば、心臓がさらに弱くなり、日常生活に支障が出て、命にもかかわる。
 
慢性心不全の患者さんには、すぐに受診すべき症状を知っておいてほしい。

「軽い運動でも息切れする」
「横になっても息苦しい」 
「横になっていて息苦しいのが起き上がるとラクになる」 
「足がむくむ」
「疲れやすい」
「夜のトイレの回数が増えた」
「食べる量が変わらないのに体重が急に増えた」

出典
朝日新聞・朝刊 2015.6.16(一部改変、追加)


追加
心不全の代表的な自覚症状は、動悸や息切れ、呼吸困難、むくみです。
最初は坂道や階段を上る時に動悸や息切れが起こり、病状が進行すると平地を歩いても息苦しくなります。
さらに進むと、夜、床につくと咳が出たり、息苦しさで寝られなくなったりします。
また足にむくみが出ることもあります。
これらの症状は、
(1)ポンプ機能低下に伴い全身の臓器に十分な血液が流れないことから起こる症状
と、
(2)全身の血液が心臓に戻りにくく、うっ滞することによって起こる症状
に分けて説明することができます。

 
(1)ポンプ機能低下に伴う症状
疲労感、脱力感:心臓から送られてくる血液量が少なくなるため、筋力が低下し、疲れやすくなる。
■四肢の冷感・チアノーゼ:末梢に血液が行きにくいため、頬、耳たぶ、手足の指先が冷たく、青色を帯びてくる。
■その他:心不全の初期には夜間の頻尿が認められることがある。

(2)血液のうっ滞によって起こる症状
■息切れ:血液が心臓に戻りにくく、血液中の水分が血管から肺にしみ出すようになると軽い運動でも息切れするようになる。
■呼吸困難:夜間就寝中に起こる呼吸困難を発作性夜間呼吸困難という。
そうした場合、腰掛けたり座ったり心臓の位置が高くなる姿勢をとると呼吸が楽になる。
(起坐呼吸)
■むくみ(浮腫):うっ滞した静脈から水分がしみ出た状態をいう。
下肢によくみられ、むこうずねの下あたりを強く抑えると指のあとが残る。
また、むくみがあるとその分体重が増加するので、短期間で体重が増加する場合は要注意。
■その他:食欲不振や時に頸静脈の怒張。