コレステロール摂取制限なくす

コレステロール摂取制限なくす 国の基準「科学的根拠が不十分」

健康を保つために、食事で取る栄養素などの望ましい量を定めた厚生労働省の百本人の食事摂取基準」。
最新の2015年版では、コレステロールの上限値が削除された。
上限値を設ける科学的な根拠がないためという。
       
「日本人の食事摂取基準」は5年ごとに改訂される。
05年版と10年版では、食事で摂るコレステロールの上限値を18歳以上の男女別に示していた。
男性は1日750ミリグラム未満。

しかし、15年版では上限値が削られた。
「目標量を算定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため」と理由を記している。
米農務省も今年2月の報告書で、これまで推奨していたコレステロール摂取制限をなくすとした。
 
従来の上限値の設定に使ったのは、ハワイの日系中年男性の研究。
エネルギー摂取量1千キロカロリーあたりのコレステロール量が325ミリグラムを超えると、心臓の血管に病気を起こす危険が増えたという。
この値を日本の18歳以上の各年代で1日平均摂取量にあてはめて導き出した。
 
だが、15年版ではこの算定法を使わなかった。
厚労省栄養指導室の担当者は「コレステロールを摂取すれば体内のコレステロール値を上げると予想されるが、肥満であることや動物性脂肪の摂取のほうがより上昇させていると考えられる。コレステロールのみの影響を計算できなかった」と説明する。
 
日本以外の研究を集めて分析した13年の論文で、卵の摂取量と心臓などの病気との聞に関連がみられなかったことも、上限をなくす判断材料になったという。

これまでの研究で、体内にあるコレステロールのうち、食事から摂る分は2割程度で、残りの8割程度は肝臓などでつくられていることがわかっている。

コレステロールを摂取するとコレステロール値が上がるという調査結果はあるが、期間が1、2週間。
摂取が多い人と少ない人を数年間比べると差がない。
肝臓などがつくる量を調整しているからだ。

*「患者は別」の指摘も
上限値がないということは、コレステロールの多い食品も好きなだけ食べてよいのだろうか。
 
厚労省の担当者は「健康な人はコップ(体)に水(コレステロール)が半分以下しか入っていないような状態。少しぐらい水を入れても問題はない」と例える。
だが、コレステロール値が高い患者はぎりぎりまで水が入っていて、わずかでも入れるとあふれるような状態という。
 
日本動脈硬化学会は5月、健康な人にコレステロールの摂取制限を設けないことには賛同するが、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値の高い患者にはあてはまらないという声明を出した。

摂取制限をするとLDLコレステロール値が非常に下がる患者もいる。
個人差が大きいため、生活習慣や運動、食事など包括的な取り組みが必要だ。
(武城英明理事)
 
厚労省動脈硬化学会もLDLコレステロール値が高いのは好ましくないという立場だ。
LDLコレステロール動脈硬化の原因になり、心筋梗塞などの危険が高まるとされている。
 
一方、日本膳質栄養学会は、コレステロール値の低い人のほうが死亡率が高いとしている。
これに対し動脈硬化学会は、コレステロール値の低い人はもともと病気がある割合が高く、低いことが死亡率を上げる原因ではないと反論している。

出典
朝日新聞・朝刊 2015.6.16

<私的コメント>
記事中の図に「コレステロール多く摂るとつくられる量が減り、少なくなるとつくられる量が増え、食事からの量が変わっても全体の量はあまり変わらない」と書かれています。
ここに、今回の記事を理解するためのすべてがあります。
これを専門用語でフィードバックといいます。


たまごとコレステロールの関係に興味のある方は
「たまご博物館」
http://homepage3.nifty.com/takakis2/
というサイトが参考になります。
コレステロールについては
http://homepage3.nifty.com/takakis2/col.htm
で直接見ることが出来ます。
但し、
コレステロールが低い人の方がガンになる確率が高い」という項目については説明が不十分なきらいがあります。
それは、ガンにかかっていて結果的にコレステロールが低くなっている人が調査に入っている可能性があるからです。
それこそ「ニワトリかタマゴか」です。
書いている人は医学の専門家ではないことも考慮ください。
(それにしても随分詳しく書かれており感嘆に価します)
http://homepage3.nifty.com/takakis2/kantyou.htm

「 たまごを毎日食べてもコレステロール値に変化はない」の項目は特に興味深い内容です。