気胸

肺に穴、息苦しい 気胸はストレス・寝不足も原因  根治めざすなら手術

肺に開いた穴から空気が漏れ出し、息苦しさや胸の痛みを覚えるのが「気胸」。
15~25歳ぐらいのやせ形男性に多く、ストレスや睡眠不足との関連も指摘されている。治療後も再発しやすい病気だが、最近は患部に網目状の膜を貼り、再発を防ぐ手術法も普及している。

気胸は肺の表面が部分的に膨らんだ「ブラ」と呼ぶ袋が破れて起こる。
呼吸で吸い込んだ空気が穴から漏れ、肺が縮んで息苦しさを覚える。
肺が周囲にある胸壁から離れて縮む際に神経を刺激するため、胸の痛みも。
 
痛みが起こる場所は胸に限らない。
肩や胸、背中など人によってさまざまだ。多くの場合で息苦しさを伴う。
痛み自体は数分でおさまっても、その後に息苦しさが続くなら、気胸を疑う。
逆に本人が気胸だと思っても、実際には肋間神経痛や筋肉痛の場合もある。
医療機関を受診し、レントゲン検査などを受ければ通常、気胸かどうかわかる。

若い男性に多く
若い男性に発症が多い理由は、体と肺の発育のバランスが崩れブラが多くできるからだと考えられている。
特に身長が高いやせ形の人は、肺が収まるスペースが縦に細長く、肺の上部で肺の外側と内側の圧力差が大きくなってブラができやすい。
 
どんなときにブラが破れるのかなど未解明な点もあるが、精神的なストレスや睡眠不足が原因になっていることが多い傾向にある。
患者への聞き取り調査でも、それを裏付けるような結果が出ている。
 
ストレスが原因となって免疫機能が低下し、肺の表面で炎症が起こりやすくなることがブラの破裂につながるのではないか、と考える専門家もいる。

気胸は高齢者でも発症する。
たばこの吸い過ぎなどで起こる慢性閉塞性肺疾患COPD)や間質性肺炎などの病気が影響する「続発性気胸」と呼ぶタイプだ。
高齢化社会になり、患者も増えている。

また女性では、毎月の月経に伴って症状が出る「月経随伴性気胸」がある。
肺や横隔膜に張り付いた子宮内膜の一部が、月経ではがれ落ちることで穴が開くと考えられている。

肺にあいた穴は、小さければ自然に塞がることも多い。
このため軽症で肺があまり縮んでいない患者では、気胸とわかっても安静に過ごすという治療を選ぶ例もある。
 
一方、大きく縮んでいる場合は「胸腔ドレナージ」と呼ぶ治療が選択肢となる。
胸部にチューブをさして肺と胸壁の間にたまった空気を抜き、数日かけて肺を元の大きさに戻す。
入院治療が基本だが、小型の器具を使い通院で治療することも可能になっている。

膜を貼って補強
根治を目指すなら手術だ。内視鏡の一種である胸腔鏡を使い、胸に小さな穴を複数開けて手術をする。
破れたブラを切り取って肺を縫い縮めるが、それだけでは縫った周辺の組織に力がかかり新しいブラができて気胸が再発する恐れがある。
 
このため「カバーリング」という手法が普及してきた。
ブラを切り取った部分に網目状の膜を貼る。この膜は体内で自然に溶けてコラーゲンに置き換わり、肺を補強して再発を防ぐ仕組みだ。
 
医師は患者の状態や年齢などをもとに、いずれかの治療法を選ぶ。
たとえば、20代で2回発症した人は9割近い確率で3回目の気胸を起こす。
手術をすれば、確率を1割以下にとどめることができる。
 
高齢者では一般的に手術が難しく、胸腔ドレナージで対処する例が多かった。
近年は破れた場所を特殊なのりで固めたり、肺全体をフィルムで覆って再発を防いだりする方法も登場している。

              
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出典
日経新聞・夕刊 2014.10.3(一部改変)





自然気胸
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000257.html
・最も一般的な肺からの空気漏れによる気胸自然気胸といいます。
自然気胸は健康な方に突然起こる原発自然気胸と何らかの肺の病気に関連して起こる続発性自然気胸に分類されます。
続発性自然気胸感染症や肺がんなどの病気によって肺に穴が空いてしまった状態なので、元々の病気に対する治療が優先されます。
自然気胸は20歳前後に多く、その次には60歳代によく起きます。
・若い患者さんの特徴は、男性・長身・やせ型です。
一方で高齢の患者さんの場合は喫煙者で栄養状態の悪い方に多く起きます。
高齢の方は肺の状態が元来良くないために、治療に時間がかかったり、治療後に気胸が再発することも少なくありません。
・続発性気胸の原因となる病気として、嚢胞性肺疾患というものがあります。
肺の微小構造が何らかの原因で壊れてしまい小さな風船のようなもの(ブラbulla)が多数できてしまう病気の総称です。
また別の原因による続発性気胸として、月経随伴性気胸があります。
これは30~40歳代の女性に多く、月経開始日前後に気胸を発症するものです。