慢性膵炎 膵石、衝撃波で破砕

膵石、衝撃波で破砕 慢性膵炎 石の完全消失は7割

腹や背中の痛みを繰り返し、膵臓の機能がゆっくりと落ちていく慢性膵炎は、完治が難しい病気だ。
患者の半分以上は膵臓内に膵石ができており、膵石を体の外から衝撃波を当てて砕く治療が広がっている。手術と比べて体への負担は少ない一方で、再発する確率は高い面もある。

再発率 手術より高め
膵臓は消化酵素を膵液として十二指腸に出し、血液の中には血糖を調整するインスリンを分泌する。
慢性膵炎は、何らかの原因で活性化された消化酵素などによって膵臓自身に炎症が起きている状態だ。
 
飲酒やストレスが原因の一つとされ、遺伝性の場合もある。女性は原因がわからないことが多い。
 
患者の6~7割が持つ膵石は、膵臓から消化酵素を十二指腸に送り出す膵管を詰まらせる。
痛みを招き、膵臓の炎症を悪化させる。
進行すると、膵がんになりやすい。
 
衝撃波で結石を砕く治療は、腎臓結石や尿管結石、胆石では普及している。
膵石は患者数が少ないためデータが集まるのに時間がかかり、膵石の一部で公的医療保険が使えるようになったのは2014年だった。
 
全国34施設で01~05年に臨床研究などで実施された膵石患者899人の治療結果を調べたデータでは、衝撃波治療のみで砕いた石が自然に排出された場合と、砕いた石を内視鏡で取り除いた場合を合わせると、石が完全になくなった割合は74・9%。
出血などの合併症は手術と比べ低かった。
一方、再発した率は22・2%と、手術の1・5%よりも高かった。
 
しかし、専門医は「膵石治療の最初の選択肢となりうるが、慢性膵炎の進行を止められるわけではない」と指摘する。

早期に生活改善・服薬
国内にいる慢性膵炎の患者は、厚生労働省研究班の推計によると約6万7千人。
実際にはもっと多いとみられている。
腹痛で受診しても胃腸の検査では見つからないためで、見つかったときには進行している場合が多い。
 
現在、より軽度な段階から生活改善や服薬を始める取り組みもある。
日本消化器病学会などは09年、慢性膵炎を早く見つけるために、それまでの要件を緩めた「早期慢性膵炎」の診断基準をつくった。
 
九州大学の研究
グループは、10年までに診断された早期慢性膵炎患者52人を2年間、追跡調査した。
服薬や生活習慣の見直しで5割の患者で症状が改善した。反対に飲酒を続けていた患者は悪化していた。
 
アルコールは完全にやめないと改善しないことが明確になった。
慢性膵炎は治らない病気だと思われてきたが、早く見つければ治すことができる。

慢性膵炎は新しい薬が加わるなど治療の選択肢は増えている。
腹部の違和感は膵臓が原因の可能性もある。
超音波内視鏡検査ができる医療機関で早めに相談することが大切だ。

 
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参考
朝日新聞 2016.11.9