血や胃液1滴でがん発見

がん発見、血や胃液1滴で

1滴の血液や胃液などから、進行していない早期がんを見つける技術の成果が相次いでいる。
公益財団法人がん研究会は血液から早期の肺がんと胃がんを、聖マリアンナ医科大学は胃液から早期の胃がんを比較的高い精度で見分けられた。
1回の検査にかかるコストは数百円で済むという。
がんの早期発見・治療に役立つとみており、3年以内の実用化を目指す。
がん細胞が出す特有のたんぱく質である腫瘍マーカーを使ったがんの診断は今も実施されている。
腫瘍マーカーは進行して病巣がある程度大きくならなければ検出できず、早期発見は難しい。
新技術はがん細胞が血液中に出す「エクソソーム」と呼ぶ微小なカプセルを目印にする。早期がんの細胞からも放出され、遺伝情報物質のRNA(リボ核酸)の小さな断片であるマイクロRNAや様々なたんぱく質を含む。
エクソソームの量や構成するたんぱく質、含まれる物質ががんの種類や進行の度合いによって違う。
がん研は肺がんについて、約160人の患者と約50人の健康な人の血液を採取し、エクソソームを調べた。
進行度がステージ1の早期がんの患者のうち55%を見つけられた。
腫瘍マーカーの2.5倍という。
がん細胞が固まらずに散らばって治療が難しいスキルス胃がんでも、早期がん患者の6割を特定できた。
検査から結果が出るまで数時間で済む。
様々ながんを検査する技術について共同研究を進めており、3年後をメドに実用化する。
聖マリ大は胃液に含まれるエクソソームを使いがん研とは別の方法で胃がんの有無を調べた。
患者と健康な人それぞれ20人で調べたところ、ステージ1の患者の8割を判別できた。
健康な人をがんと間違えることはなかった。
関連する特許を出願中で、医師主導の臨床試験(治験)を経て早期の実用化を目指す。 
血液などにある大量の微粒子の中からエクソソームを見つけ出して調べるのは大変だったが、数時間でがん細胞が出したエクソソームを検出する技術などの研究が進んだ。
エクソソームを使うがん診断は国内外で研究が活発になっている。

 

エクソソーム 
様々な細胞が分泌する直径数十ナノ(ナノは10億分の1)メートルのカプセル状の微粒
子。
血液や唾液、尿などの体液に存在する。
マイクロRNAと呼ぶRNAの断片やたんぱく質を含み、それらを脂質の二重膜で覆う構造になっている。
細胞の間を行き来することで遺伝や免疫に関する情報を伝達する役目を果たしている。
1980年代から存在は知られていたが、細胞内で不要になった物質を細胞の外に運び出すだけだと考えられていた。
2000年代後半に、病気に関係する様々な情報を含んでいることがわかった。
がんの進行や転移、再発、アルツハイマー病の発症などにも関係していることから、治療面でも研究が進んでいる。
出典
日経新聞・朝刊 2015.12.28(一部改変)