口の渇き

口の渇きの悩み リラックスした食事、最良の薬

年を取るにつれ、唾液が出にくくなり、口の中の渇きに悩んでいる人は少なくない。
口の環境悪化は、歯周病や虫歯のリスクを高めるだけでなく糖尿病など全身の病気にも関係していることが分かってきた。
専門家は唾液減少の原因は加齢より生活習慣にあるという。

服薬で唾液減も 舌などストレッチを
「最近、『食べ物の味を感じられない』『舌ががさついて痛い』と訴える人が増えている。唾液が少なくなっていることの表れだ。
ほかに「ビスケットやパンが飲み込みにくい」「口臭がする」「ネバネバする」「ニッコリ笑った時に口が戻りにくい」「乾燥する感じが1カ月続く」のも唾液減少のサインだという。

ストレスは禁物
加齢によるものと決めつけ、あきらめがちだが、健康ならば、年を取っても唾液は出る。減少の主な原因はストレスや服薬、生活習慣の乱れにある。
口が渇いた状態のことを口腔乾燥症(ドライマウス)ともいうが、多くは病気ではなく、生活習慣で改善が可能だ。
 
唾液は耳下腺、顎下腺、舌下腺と呼ぶ3つの唾液腺から出る。
口の中に食物が入ると機械的刺激や味覚による刺激で出る。
また、食べ物を見たり、においを嗅いだり、連想したりするだけでも出る。
唾液分泌を左右するのは交感神経と副交感神経の自律神経の働きだ。

交感神経は体の臓器や筋肉などを興奮させる方向に、副交感神経はリラックスさせる方向に働く。
副交感神経が活発になれば、サラサラした唾液が出て消化作用も助ける。
例えば、家族や友人と会話しながら好きな物を食べている時サラサラな唾液分泌が多く、緊張感のある食事は唾液が抑制されていてネバネバしてくる。
 
これはストレスを感じて交感神経が強く働いているからだ。
ストレスから歯を食いしばると、唾液がネバネバになって口が渇くので注意が必要だ。
 
次に、唾液を減らす原因で多いのは薬による影響だ。
胃酸を減らす薬、花粉症の薬、血圧の薬、睡眠剤抗うつ剤、糖尿病の薬などは口が渇く。アレルギーの薬は口の渇きはすぐ起きるが、飲んだからといってすぐ渇かず、数年たって出る薬も多いので気がつきづらい。
眠くなる薬にも気をつけたい。
寝ているとリラックスして唾液が出やすいように感じるが、眠っている時は唾液は出ない。
薬が原因とみられる場合、医師や薬剤師と相談して減薬し、運動や食生活の見直しで生活習慣病を改善するのが先決だ。
10種類以上の薬を飲んでいる人でも、減薬で唾液が増えた事例が多い。

歌も効果的
一人暮らしの人や夫婦で会話が少ないと唾液は出にくいことが多い。
歌を歌う、週に1回でも友人とおしゃべりをして食事をするなどしたい。

<私的コメント>
「会話が少ない夫婦」というお話は、着眼点として面白いですね。
夫婦間に限らず、無口な人もよくないということになります。
「お前はどうか?」ですか。
「安心してください。家族に嫌われるほどのおしゃべりで、夫婦の間でもほぼ一方的にしゃべっています。口を開けただけでアサリの潮吹きみたいに唾液が飛び出して来ます」

唾液が減ってきたと感じたら、「笑顔で食事をしているか」「姿勢が前かがみで舌が歯に当たって緊張していないか」「良くかんでいるか」「運動をしているか」などをチェックするとよい。
 
水をたくさん飲んでも唾液は出ない。
逆に舌がはれぼったく、水ぶくれになり、唾液のまわりが悪くなる人が多い。

簡単な口のストレッチもよい。
体や口に麻痺が残っていても意識して笑顔をつくり、感情を込めた運動で副交感神経が刺激され唾液が出る。
ポイントは「ほほ笑み」の顔をつくってから始めることだ。
 
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唾液の役割は様々。
消化酵素で食べ物を胃や腸で消化しやすくなるようにするほか、口から入るウイルスや細菌の増殖を防ぐ。
酸性になりがちな口の中を中性に戻して、虫歯や歯周病になりにくい環境に保ち、唾液に含まれる成分は歯の表面のエナメル質を修復する。
唾液は健康のバロメーターと考え、潤滑に出るようケアを心がけたい。

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更年期の女性、免疫病のことも
女性の場合、月経の直前や月経時に普段よりも強く喉の渇きを感じる人が多いといわれる。この時期は卵巣から出る女性ホルモンの一つ、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増える。
ホルモンのバランスが変わることが、唾液を出すために働く自律神経にも影響し、唾液が減るという。
 
一方、40代後半の更年期にさしかかった女性が気をつけたいのが、口の渇きとともに、目も乾く「シェーグレン症候群」。
自分の体を免疫細胞が攻撃して起きる自己免疫疾患だ。
原因は遺伝やウイルスのほかホルモンの影響もあると考えられている。

<口のうるおい保つ生活習慣・まとめ>
⬜︎ 口の中を清潔に。 柔らかめの歯ブラシで歯と舌をきれいに洗う

⬜︎ 食事は良くかんで。 暴飲暴食はしない

⬜︎ 食事は楽しい仲間とリラックスして

⬜︎ 口呼吸はせずに、鼻で呼吸するよう心がけて

⬜︎ 姿勢よく。 前かがみにならない      

⬜︎ 適度な運動でスにムス発散。 1 日20分ほど歩く  

出典
日経新聞・朝刊 2015.5.9(一部改変)


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