認知症予備軍 進行防ごう

認知症予備軍 進行防ごう

思い出・運動・音楽 療法広がる
認知症は高齢者の7人に1人が患い、今後も急増が見込まれている。
それを抑えるには、50代半ばから増え始め、現在約400万人いるとされる予備軍の「軽度認知障害(MCI)」の人が認知症に移行するのをいかに防ぐかがカギを握る。
知的活動に運動、人との交流などが効果的とされ、様々な療法や医学的な根拠を探る研究が続いている。

認知症予防は以前から、薬物に頼らない「非薬物療法」が試みられてきた。
 
その一つが1964年に米国の精神科医バトラーが提唱した「回想法」。
古い生活用具や写真などを手掛かりに、記憶をよみがえらせて思い出を語る。
脳の活性化や、自己肯定感を高めるのが狙いだ。
近年は地域の民具などを使った「地域回想法」を行う博物館や民俗資料館が目立ってきた。
 
2011年から取り組む氷見市立博物館(富山県)は幼い頃や仕事などをテーマに設定、高齢者が民具を囲んで思い出を語り合う。
この博物館の学芸員は「多くは80歳以上で婚礼行事や子育て、農作業など共通体験が多い。他人の話に『そう、そう』と相づちを打って場が盛り上がる」と話す。
 
15年5~7月には高齢者施設の入所者7人(平均年齢92歳)に週1回、1時間のグループ回想法を行った。ある介護職員は99歳の女性に付き添って参加。
この女性は初めは無関心だったが、参加するごとに表情が豊かになり、5回目には「懐かしい」と民具を手に取った。
介護職員は「最後の8回目には古い歌を上手に歌ってくれるまでになった」と驚く。
 
ゴヤダンスアカデミー(名古屋市)では週1回の「コグニダンス」教室が開かれている。
軽快な音楽に合わせ20人の男女がペアになってタンゴやワルツなどを踊る。
約1時間でどの顔にも汗がにじむ。
 
生徒の多くは、13年に国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)がMCIの70歳以上の男女約200人を対象にした臨床試験への参加者。
この試験ではコグニダンスをしたグループは楽器演奏や講座受講のグループに比べ、知的機能の低下を抑えられたことが分かった。
 
「腰痛が治ったうえ記憶力テストの成績が2倍にアップした」と言う高齢者もいる。
 
同センターは「コグニサイズ」を提唱している。
「コグニッション」(認知)と「エクササイズ」(運動)を合わせた造語で、コグニダンスはその一種だ。足のステップなど次の動作を考えながらの有酸素運動となり、体を動かす、頭を使う、人と触れ合うという認知症予防の3要素も兼ね備えている。
 
三重大学病院(津市)は12年に専用室を開設し、週1回、認知症患者への音楽療法に取り組む。
各回10人が音楽療法士の伴奏に合わせてスクリーンの歌詞を見て合唱し、最後にクラシック曲などを鑑賞する。
 
歌唱は多くの筋肉を使う有酸素運動で、曲のテンポ、リズムを分析しながら伴奏や周囲の声と自分の声とのズレを修正する作業を同時並行で行う高度な知的活動でもある。
 
11~12年には三重県御浜町紀宝町の健康な高齢者を
▽音楽と運動を組み合わせたエクササイズをする音楽体操群
▽運動だけをする体操群
▽音楽、運動はしない群
に分けて認知機能の変化を調査した。
 
その結果、音楽体操群は他の群に比べ、物の状態などを素早く正確に認識する「視空間認知」や頭の回転の速さを示す「精神運動速度」で大きな改善があった。
運動に適切な音楽伴奏を加えることで、認知症予防の効果が高まることが期待されている。

■糖尿病・中年期の高血圧 リスク
厚生労働省は2025年に高齢者の5人に1人、約700万人が認知症を患うと推計している。12年の推計は7人に1人、約462万人で、約1.5倍に増える計算だ。
 
このため同省は軽度認知障害(MCI)の人を早期に見つける「認知症初期集中支援チーム」の配置を進める。
放置すれば数年で認知症になるが、適切な対応で症状の進行を防げると分かってきたからだ。
 
生活習慣の改善で予防する手掛かりも見えてきた。
1961年から福岡県久山町で町民を対象に疫学研究を続ける九州大学は、60歳以上の約1000人を15年間追跡調査した。
その結果、糖尿病患者はそうでない人に比べ認知症になるリスクが約1.7倍高かった。
 
アルツハイマー認知症は食後2時間の血糖値が高い人、血管性認知症は中年期に高血圧だった人のリスクが高い。
研究で
(1)野菜や大豆、海藻類を多くとる日本食に乳製品を加えた食事パターンにする
(2)たばこを吸わず酒は控えめにする
(3)運動などで体を動かす
ことでリスクを減らせると分かったという。


 
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参考
日経新聞・朝刊 2016.10.30



<私的コメント>
軽度認知障害(MCI)が認知症の前段階であるという考え方には異論もあるようです。

<関連サイト>
軽度の認知症?軽度認知障害(MCI)を解明せよ
https://athome-kaigo.jp/keidoninchisyougai


 
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・軽度認知障害(MCI=Mild Cognitive Impairment)とは、認知症の前段階のことを指します。つまり、物忘れなどの認知障害があっても、日常生活に支障をきたさないレベルの状態のことを軽度認知障害と言います。

・実は、アルツハイマー病に代表される記憶障害型の軽度認知障害が、認知症に移行する確率はそう高くはありません。
しかし、だからといって安心してはいけません。
健康な高齢者の移行率が年間に1%~2%という数と比較するとかなり高い数字であり、5年後には、約50%の方が軽度認知障害から認知症へと移行するのです。

MCI(軽度認知障害)を早期発見し、認知症を予防する方法
https://athome-kaigo.jp/mci
(軽度認知障害(MCI)から認知症への移行を防ぐ予防法について解説)

<MCIの人に見られる7つの変化>
①外出するのが面倒
②外出時の服装に気をつけない
③同じことを何度も話す回数が増えたと言われる
④小銭の計算が面倒、お札で払うことが多くなった
⑤手の込んだ料理を作らなくなった
⑥味付けが変わったと言われる
⑦車をこすることが増えた