高齢者の脱水症

高齢者の脱水症 異変察知が肝心、塩分も十分に

気温が急上昇する梅雨明けの後は脱水症が元になって熱中症を起こす人が増える。
湿度が高く、汗をかいても体温が下がらず、脱水症になり、異常な体温上昇から熱中症に進む。
特に危険なのは高齢者だ。
 
高齢者は『かくれ脱水』に気をつける必要がある。
ふだんから水分の余裕がないので、脱水症になりやすい。

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体重の10%の水分を失うと命の危機に陥る。
3%以上を失うと脱水症だ。
「かくれ脱水」は1、2%を失った予備軍の状態を言う。
 
高齢者には、体の異変に気づきにくいという問題もある。
室温が高くても冷房を使うのを嫌ったり、寝る前に水分を避けたりしがちで、のどの渇きなどを感じる感覚や体温調節機能も衰えている。
立ちくらみやめまいが出たら熱中症の初期で、救急車を呼ばなければならない。
かくれ脱水のうちに見つけ、適切に水分補給するのが肝心だ。
 
水だけ飲むのは逆効果だ。
脱水症は本当は『脱塩水症』だからだ。
 
汗をかくと、体内から水とともに塩分も失われていく。
水だけ補うと、体内の塩分が薄くなる。
塩分濃度を正常に保つため、尿量が増え、余計に水分を失う。
さらに汗をかく。
この繰り返しで「脱水スパイラル」にはまり込む。
そこから抜け出すには、水だけでなく、塩分を適量取らなければならない。

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服部さんは、水とともに梅干しや塩昆布を食べるよう勧める。
みそ汁もいい。
ただ、一般のスポーツ飲料は塩分が足りない。
脱水症予防用に塩や吸収を早めるブドウ糖などの成分を調整した「経口補水液」も市販されている。
スポーツ飲料より塩分が濃く、糖分が少ないので、普通はやや塩辛く感じる。
人間は体内に不足している物を欲するので、補水液をおいしく感じたらかくれ脱水の疑いがある。
 
利尿作用のある酒類はよくない。
野球観戦中にビールを飲んでいて脱水症になる人もいる。
家庭でできる経口補水液の簡単な作り方がある。
水500ミリリットルに、砂糖20グラム、塩1・5グラムを溶かすだけ。

人間の体液に濃度が近いので、寝る前に飲んでも夜間の多尿症にならない。
 
ただし、つくり置きは勧められない。
家庭では無菌でつくって清潔に保存するのが難しいからだ。
脱水症予防で飲んだのに胃腸炎になって下痢や嘔吐に苦しむようなことになっては大変だ。


高齢者の脱水症、予備軍の症状は?
① ⬜︎ 皮膚がかさつくようになった
② ⬜︎ 口の中がねばつくようになった
③ ⬜︎ 便秘になった、あるいは以前よりひどくなった
④ ⬜︎ 以前よりも皮膚に張りがなくなった
⑤ ⬜︎ 足のすねにむくみがでるようになった

①は皮膚につやがなく、乾燥したり、ポロポロと皮膚が落ちたりします。もともとあるしわとは違います。常に皮膚の様子を見ましょう。

②は食べ物がパサついたり、つばが少なくて、ゴクンと飲めなくなったりします。
体内の水分(体液)が減っている証拠ですが、お年寄りはのどの渇きに気づきにくいのです。

③排便の間隔には個人差がありますが、毎日だったのが2日おきになったり、下剤(便秘薬)を使う頻度が増えたりなど変化は要注意です。

④手の甲をつまみあげ、山に見立ててチェックします。
放した後に、戻りの時間が長くなっているなと感じたら注意です。
靴下のゴムの跡が、脱いだ後に10分以上残ったら該当します。

①~⑤の一つでも当てはまれば、「かくれ脱水」の疑いがあります 


関連サイト
熱中症予防情報サイト
 http://www.wbgt.env.go.jp/
 (環境省が「暑さ指数」を公表)

「教えて!『かくれ脱水』委員会」のサイト
 http://www.kakuredassui.jp/
 (脱水症や熱中症の見分け方や対策などの情報を掲載)


参考・引用
朝日新聞・夕刊 2014.8.4