AEDで救命

AED、正しく使って救命

心臓マッサージ、手の付け根使い垂直に/電極パッド、心臓を挟むように貼る従来の抗がん剤に比べると、副作用が少なく効果も高くなっている。
 
たとえば、グリベックという薬によって、慢性骨髄性白血病の10年生存率は8割を超えるようになった。
以前は2年生存率が50%程度と厳しい数字だった。
ただ、まれだが、間性肺炎など命に関わる副作用や高血圧や皮膚障害など、従来の抗がん剤では見られないような症状が、分子標的薬の使用によって出ることもある。

「電気ショックを行います。体から離れてください」。
1月中旬、東京マラソンに参加するランナーやボランティア向け講習会が都内で開かれた。
約1000人がAEDや胸骨圧迫(心臓マッサージ)を体験した。
参加した女性(32)は「手順がイメージできるようになった」と話す。
 
28日で10回目となる東京マラソンでは、これまで7人が心肺停止となったが、全員が社会復帰した。
すぐにAEDを使ったからだという。
適切に行動すれば効果は大きい。
 
目の前で人が倒れたらどうすればいいのか。
30秒たっても反応がない場合は、目まいや失神とは違うと判断していい。
「すぐに救命措置を」と促す。
 
まずは周囲に助けを求める。
人を集めて「あなたは119番通報を」「あなたはAEDを持ってきて」と具体的に頼む。
「誰か」では誰も動かないことがあるので必ず指名する。
通報すれば、救急のプロがすべきことを教えてくれるので、落ち着いて呼びかけへの反応の有無など状況を伝えよう。

救急車の到着まで時間がかかる。
2014年は全国平均で8.6分だった。
倒れた原因が、心臓が細かく震えて血液を全身に送ることができない「心室細動」だった場合、1分ごとに10%ずつ救命率が下がってしまう。
すぐ胸骨圧迫を始め、AEDの到着を待とう。
 
胸骨圧迫とはいわゆる心臓マッサージのこと。姿勢とリズムが重要で、ひじを伸ばし、手の付け根を胸の真ん中の硬い部分に当てる。
胸が5センチほど沈むくらい真上から垂直に強く押す。
1分間に100~120回のテンポで絶え間なく押し続ける。
童謡の「うさぎとかめ』や『あんたがたどこさ」を少し速めにしたリズムを思い浮かべるといい。
 
AEDは蓋を開け電源を入れる。
倒れた人の服を上げ、2枚の電極パッドを右の鎖骨の下と左脇腹に貼る。
AEDは電極間を電気が通る仕組み。2つのパッドで心臓を挟むようにする。
パッドが重なりそうな子どもには、胸の真ん中と背中に貼ってもいい。

パッドには大人用と未就学児の小児用がある。
小児に大人用を貼っても構わないが、逆は十分な効果が期待できないので避ける。
 
パッドを貼ると、AEDが心電図を解析する。
電気ショックが必要と判断すれば音声で教えてくれる。
後はボタンを押すだけ。
次に何をすべきかはAEDが音声で指示するので、それをよく聞く必要がある。
 
注意点はいくつかある。
解析中とボタンを押すときは、倒れている人の体に触らない。
体がぬれている場合は、タオルなどで拭く。
アクセサリーや下着ははずし、その上からパッドを貼らないよう気をつける。
ショック後も胸骨圧迫を続け、意識が戻ってもパッドはつけたままにしておく。
 
AEDを使って助からなかったとしても、法的責任は問われない。
電気ショックが必要かどうかは機器が教えてくれる。
救命は一刻を争う。
恐れず使うことが肝心だ。

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市民が心肺蘇生54% 設置場所に課題も'
総務省によれば2014年に心肺停止の状態で発見されたのは約2万5000人。
そのうち市民が心肺蘇生したのは54%、AEDを使ったのは約4%だった。
 
「設置場所が分からないことが利用率の低さの一因」と指摘する専門家がいる。
駅や学校、交番や役所など公共施設、商業施設などにある。
日本救急医療財団のサイト上の「AEDマップ」が参考になる。
ただ自治体によって普及の取り組みには温度差がある。
 
公共施設が使えない夜間の対応も課題だ。
解決策として注目されているのがコンビニエンスストアだ。
 
使い方を伝える工夫も広がる。
日本循環器学会ではAEDの使い方をドラマ仕立てにした動画「心止村湯けむり事件簿」を公開中だ。

参考・引用
日経新聞・夕刊 2016.2.4