応急処置(救急蘇生)

応急処置、ためらわない 素早く胸押し、救命率アップ

もしも目の前で人が倒れたら・・・。
救急隊の到着までに応急処置ができるかどうかで、救命率は格段に上がる。
最新の応急処置とは・・・。

講習会などで「気道確保」「人工呼吸」「胸を押す(心臓マッサージ)」を習った人も多いかもしれない。
だが、一般社団法人日本蘇生協議会が昨年、ガイドラインを改訂。
「自信がなかったら、まず胸を押す」ことを強調した。
人工呼吸は「講習を受けて技術があり、やる意思がある人」の場合に薦める。
 
病院外で心停止した全国の症例を分析すると、胸を押しただけの場合と、人工呼吸を組み合わせた場合とでは救命率はあまり変わらなかった。
人工呼吸でもたついたり、躊躇したりするより、1秒でも早く胸を押す方が良い。
    
   *  *
 
もし心停止していない状況で胸を押しても重大なことにはならない。
しかし、心停止していたら救命率はどんどん落ちる。迷わず胸を押そう。
 
押すのは「胸の真ん中」の胸骨がある硬い部分。
一点に力がかかるように手のひらを重ねて押す。
5センチぐらい胸がへこむ強さが目安。
心臓を押して、ポンプのように血液を脳に送るイメージで。
押し過ぎを心配する人がいるが、骨にひびが入っても致命的ではない。
子どもも処置は同じだが、体の小さい子どもや乳児の場合は胸の厚さの3分の1沈む程度に片手や指で押す。
    
   *  *

外出先などで近くに自動体外式除細動器(AED)があるなら、119番通報している間に他の人に持ってきてもらう。
ただし、AEDは心臓がけいれんする心室細動を電気ショックで正しい動きに戻すものなので、完全に心臓が止まっている場合は「電気ショックは必要ありません」と音声ガイドが流れる。
その場合も、ガイドに従い救急隊の到着まで胸を押し続けることが大事だ。
 
総務省消防庁の2014年のデータでは、救急隊が到着するまでにかかる時間は全国平均8・6分。
この間、一般市民が心肺蘇生をしたケースは5割超にのぼり、1カ月後の生存率は15・4%だった。
一方、何もしなかった場合は8・4%だった。

 
<ネットで学ぶ蘇生法> 
日本循環器学会がインターネット上で公開している「心止村(しんどむら)湯けむり事件簿」(http://aed-project.jp/suspence-drama/)では、温泉旅館を舞台にしたサスペンスドラマ風の動画で、クイズに答えながら心肺蘇生の手順を確認できる。
スマートフォン向けのアプリもある。
救命・救急補助アプリ「MySOS」は、GPS機能を使って最寄りのAEDの位置を地図上で教えてくれる。
「PocketCPR」は胸を押す練習をする時、強さやリズムが合っているかを確かめられる。

<助けられなかったら> 
もし人を助けようとして心臓マッサージなどをしても、うまくいかなかったり、助からなかったりしたらどうなるのか。
通りがかりの人を救命するのは、民法698条の「緊急事務管理」にあたる。
他人を助けるためにやった行為で、たとえ損害が生じても賠償責任は負わない。
「失敗したら法的な責任に問われる」とためらう人もいるが、法的責任はない。
市民の場合、助ける義務はないものの、人道的にやらなきゃいけないという機運を盛り上げていく必要がある。

 
イメージ 1


参考
朝日新聞・腸管 2016.7.10