機能性ディスペプシア

つらい胃もたれ  実は「機能性ディスペプシア」

検査で異常は見つからないのに、つらい胃もたれや異痛が続く。
その状態を「機能性ディスペプシア」と呼び、病気としてとらえるようになった。

2013年に治療薬が公的医療保険の適用になり、2014年には学会が診療指針を公表した。
薬や生活習慣を見直すことで改善できるという。

60歳台のある女性は2012年5月、胃の痛みや満腹感、食欲不振などに悩まされ、近くの病院に行った。
内視鏡検査を受けたが異常は無く、医師からは「ストレスではないか」と言われた。

1か月後、別の病院を受診すると「胃腸炎」と診断された。
胃の働きを活発にする薬など5種類ほどを処方された。
一時症状は和らいだものの、2013年7月に再び悪化。
ご飯一口だけでおなかがいっぱいになり、苦しくなった。
食後はしばらく動けなかった。
体重は約5キロ減った。

2014年3月、ある大学病院にかかり、「機能性ディスペプシア」と診断された。
癌や潰瘍などの異常が無いのに、胃痛や胃もたれが続く病気だ。

国際的な診断基準では 
① 「食後のつらい胃もたれ」 
② 「すぐに満腹になる」 
③ 「みぞおちの痛み」 
④ 「みそおちが焼けるような感じがする」 
の4つの症状のうち、1つ以上が6か月以上前に始まり、3か月間続く状態を指す。

こうした症状は、   
食べ物が入っても胃が十分に膨らまない
長く胃に食べ物が残っている状態が続く
胃酸に対して敏感に反応する        
などで起こる。

原因は、ストレスや生活習慣の乱れから胃の働きを調節する自律神経のバランスが崩れて起こるほか、感染症がきっかけになることもある。

国内では健康診断を受けた人のうち10~20%が該当するという調査結果がある。
中には仕事に支障が出たり、外で会食出来なくなったりする人もいる。
病気と認識せずに我慢を続けてしまうケースや、病院でも「気のせい」といわれたり、「慢性胃炎」と診断されたりすることが多かった。
この10年ほどで国内でも研究が進んできている。

機能性ディスペプシアと診断されたこの女性は、これまでの薬をやめ、胃酸の分泌を抑える薬を飲むことになった。
初めての薬だった。
 
数週間続けると、食後の満腹感が少しずつ軽くなっていった。
食欲が回復し体重も元に戻った。
女性は「気持ちがずいぶん楽になった。薬も減ってよかった」と話す。

治療には個人差 「粘り強く」
日本消化器病学会などでは、2014年4月、診断や治療法をまとめた診療指針を作った。
指針によると、治療は生活習慣の改善と薬が中心になる。
 
まず規則正しい生活を心がけ、睡眠不足にならないようにする。
1日3回決まった時間に食事をし、夜食は避ける。
油っこい料理を食べ過ぎていないかなどメニューに気を配り、問題があれば改善する。
 
薬物治療では、胃酸の分泌を抑える薬や胃の働きを活発にする薬が使われる。
 
2013年5月には、胃の働きを活発にする、新しいタイプのアコチアミド ( アコファイド?? )というくすりが公的医療保険の適用となった。
症状に合わせて、抗うつ薬抗不安薬が選ばれることもある。

ピロリ菌に感染している人は、除菌することで症状の改善が期待できる。

ただ、治療の効果には個人差がある。

どの治療も効果が出るまで少なくとも1か月ほどかかる。
粘り強く続ける必要があり、自分の判断でくすりをやめないようにしたい。

これらの治療で改善しなければ、心療内科を受診する方法もある。
専門医のもとで、自身の行動を振り返り、どんな行動を取ればよいのか考える認知行動療法や、言葉をイメージして緊張する場面でもリラックスできるようにする自律訓練法を受ける。

症状を気にしすぎるとさらに悪化しかねない。
医師との対話を通じて不安を解消することで治療効果も上がる。       


機能性ディスペプシアの国際的な診新基準
⬜︎ つらいと感じる食後のもたれ
⬜︎ すぐに満腹になる
⬜︎ みぞおち部分の痛み
⬜︎ みぞおち部分が焼けるように感じる
以上のうち一つ以上の症状がある
6ヵ月以上前から始まり、最近3ヵ月間続いている
  ⇩
機能性ディスペプシアの可能性 


機能性ディスペプシアの起きる仕組み
◉ 腸にうまく送り出せない
症状
胃もたれ
・胃が重い
・おなかの張り

◉ 胃酸などに過剰に反応する
症状
・みぞおちの痛み
・みぞおちの焼けるような感じ

◉ 食べ物が入っても胃が広がらない
症状
・すぐに満朧になる
・食欲不振
参考・引用
朝日新聞・朝刊 2014.8.26


<参考>
機能性ディスペプシアとは
機能性ディスペプシアは、以前は「慢性胃炎」などと呼ばれていたが、2013年に機能性ディスペプシアという病名で治療薬が公的医療保険の対象になった。
14年に公表された日本消化器病学会の診療ガイドラインによると、健診を受けた人のうち11~17%が機能性ディスペプシアだとの調査結果がある。
 
機能性ディスペプシアの症状の一部には、胃がんの原因となるピロリ菌が関連するとの見方もある。
ピロリ菌に感染すると、胃の壁が薄くなって、胃を動かすホルモンの分泌が落ち、症状が出るのではないか、と考えられている。
ピロリ菌の除菌によって13人に1人は症状が改善するというデータもあり、ガイドラインでは除菌を推奨している。
除菌から半年から1年で症状が改善すると「ピロリ関連ディスペプシア」と診断される。
 
検査では病歴や症状の聞き取り、血液検査や内視鏡検査で他の要因がないことを確認するのが一般的だ。
最近は、胃の排出機能を測る方法も研究されている。
一部の医療機関では、特殊な加工をした炭素を含む液体を飲んで、消化後の炭素が二酸化炭素として肺から排出されるまでの時間を測定する方法を実施している。
べての患者を評価できるわけではないけが、機能が数字で示されるため、患者の納得につながることが多い。


アコファイド錠100mg
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se23/se2399015.html
・機能性ディスペプシアは、従来の慢性胃炎にふくまれる病気です。
胃粘膜に荒れやキズがないのに、胃もたれや胃痛、胸やけといったつらい症状があらわれます。
機能性ディスペプシアはさらに2つのタイプに分かれます。
第1のタイプは、食後のもたれを主とする食後愁訴症候群。
もう1つは心窩部痛(みぞおち付近の痛み)や心窩部灼熱感(胸やけ)を主とする心窩部痛症候群です。
・この薬は機能性ディスペプシアのうちの第1のタイプ、つまり食後膨満感(胃もたれ)や早期満腹感(少
量の食事ですぐに満腹)などに適応します。
・機能性ディスペプシアのうちの第1のタイプ、つまり食後膨満感(胃もたれ)や早期満腹感(少量の食事
ですぐに満腹)などに適応します。