急病が原因の交通事故

その交通事故 急病が原因

車を運転中に急死したり、急病を発症したりして交通事故に至る例が相次いでいる。
意識が遠のきながらもブレー牛をかけたり、ハンドルを切ったりして事故を回避するのは難しい。
専門家は「体調の異変に気づいたら、すぐに運転をやめて」と呼びかけている。

運転中に発症 意識失う
立っているだけで汗が噴き出すような暑い日だった。
 
2012年7月。
名古屋市の化学品メーカーの社員だった0さん(67)は、トラックで取引先に商品を納めた帰り道で突然、体に変調をきたした。
意識がスーッと遠のいていく。
とっさに車を路肩に止め、エンジンを切った。
記憶はそこで途切れた。
 
目が覚めたのは2週間後。
ベッドの上で、「心筋梗塞で生死をさまよった」と妻から教えられた。
 
それまで大病の経験はなく、会社の健康診断でも特に異常はなかった。
ただ、Iカ月前から少し歩いただけで息切れすることがたびたびあった。
「今思うと、あれが前兆だったかも」。
半年間のリハビリを経て、趣味のゴルフを再開するまでに回復した。
 
0さんは路肩に止まり、まもなく病院に運ばれたため、事故には至らなかった。
だが、運転中の体調急変が引き金になったとみられる事故は各地で起きている。
 
最近では、2012年3月に富山県の高速道路のサービスエリア駐車場で、夜行バスがトラ
ックと衝突、運転手と乗客が死亡した。
運転手は衝突前に意識を失っていたといい、富山県警は何らかの病気を発症した疑いがあるとみて調べている。
 
その約1週間後には、津市の高速道路で、レスリング女子五輪金メダリストの吉田沙保里さんの父が、路肩に止まった車の中で見つかり、搬送先で死亡が確認された。
死因はくも膜下出血
三重県警は運転中に発症し、中央分離帯接触しながらも自らの力で停車させたとみている。
 
警察庁によると、13年に全国で起きた交通事故約62万件のうち、急病が原因と特定し
た事故は全体の0.04%にあたる243件だった。
  
「実際はもっと多いのでは」。
東海大学付属病院高度救命救急センターの某ドクターはこう話す。
センターーが12年に救急搬送を受け入れた580例を分析したところ、事故前に脳卒中や心疾患などの病気で意識を失っていたケースは5%たった。
 
このドクターは「運転中の病死や体調急変が引き金になった事故が、脇見運転などのヒュ
ーマンエラーとして処理され、埋もれている可能性がある」と指摘。
「交通事故の原因を幅広く調べる体制が整ったフィンランドやカナダでは、急病が原因となった事故が死亡事故の1割というデータもある」と話す。

90分に一度は休憩・水分補給を
運転中の急死や、急病による事故はどのような状況で起こっているのか。
 
滋賀医科大(法医学)が車やバイク、自転車の事故で運転者が死亡し、解剖で直接の死因が突然死と診断された46例を調べたところ、半数が血圧が上がる午前6~9時、午後3~6時に発生していた。
車の場合は7割がブレーキをかけたり、ハンドルを切ったりするといった回避行動をとれないまま事故に至っていた。
意識を失ったり体が動かなくなったりして、車を止める余裕は思ったほどないと考えたほうがいい。
事故になれば、同乗者や周りの車、歩行者を巻き込む恐れもある。
 
急病はどんなものが多いのか。
バス会社やタクシー会社などは運転手が乗務を続けられなくなったケースを国土交通省
に報告している。
04 ~ 06年の211件の分析では、脳卒中と心疾患だけで半数を超えたという。  
ただ、運転に支障をきたす病状は一様ではなく、比較的軽い疾患でも正常な運転を妨げる原因になる。
高齢化が進む中、何らかの持病を抱えながら運転することは日常的と考えられ、運転中の体調急変は誰にでも起こりうる問題だ。
 
急病を防ぐ予防策としては、こまめな休憩と水分補給がすすめられる。
長時間運転すると、足に血栓ができやすくなり、また脳梗塞心筋梗塞を発症するリスクも高まる。

1時間半に一度は休憩し、水分をとることが大切だ。
  
運転中は瞬時にたくさんの判断をしなくてはならず、ストレスで血圧が上がる。
脳や体への負担は大きい。
疲れたと感じる前に休みたい。

*警察も防止の取り組み
道路交通法は、運転に支障が出る病気の場合は、免許の取得・更新ができないと定め
ている。
警察庁のまとめでは病気が原因で免許取り消し・停止の行政処分を受けたのは13年に2723人。
10年の1306人から倍増している。
 
また、警察は病気による事故を減らす取り組みを進めてきた。
事故捜査担当の警察官が現場で病気が疑われると感じたら本部に連絡し、情報を集約している。
さらに、過去に起きた物損事故をデータベース化。
見通しの良い直線道路で電柱にぶつかるなど状況が不自然な事故を洗い出せるような仕組みを整えた。
病気が疑われる場合、本人や医師から事情を聴いている。
警察庁によると、データベース化は44都道府県で行っているという。 

職業運転手の急病の内訳(211件)
脳卒中   60件  28.4 %
心疾患   55件  26.1 %
失神    18件   8.5 %
消化器疾患 17件  8.1 %
その他   61件  28.9 %


運転中に心配なのは・・・
脳卒中 (頭痛・しびれ・ものが二重に見える)
心筋梗塞 (呼吸困難・息切れ・胸の痛み)
不整脈、けいれん、睡眠時無呼吸症候群てんかん認知症、糖尿病による低血糖、薬の服用や誤飲など
(カッコ内は主な前兆。前兆がなく突然発症することもある)

事故を防ぐには ・・・      
・体調が悪いときは運転を控える
・こまめに休憩し、水分をとる
・異変を感じたら、車を止める    

参考・引用
朝日新聞・朝刊 2014.5.22


<関連サイト>
運転中の突然死は防げるか?梅田事故の衝撃
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20160226-00054779/

暴走事故の運転手は「大動脈解離」の症状!日常的にある運転手の健康起因事故
http://healthpress.jp/2016/02/post-2272.html

運転中に脳梗塞、そのとき タレント・シェリーさん体験
https://friends.excite.co.jp/channel/article/16462/