禁煙・節酒し検診を

禁煙・節酒し検診を

40年後は70歳あるいはそれ以上まで働くのが常識になっているかもしれない。
「人生100歳時代」となり、日本老年学会も高齢者の定義を75歳以上に引き上げるよう提言しているくらいだ。
若い移民によって経済や社会保障を維持している欧米諸国と違い、日本では、高齢者が国を支えるほかない。
 
がんは「遺伝子の老化」と言ってよい病気だから、年齢とともにリスクは高まる。
男性の場合、55歳までにがんにかかる確率は5%程度だが、65歳までで15%、75歳まででは30%以上に上昇する。
 
会社員の死因の半数ががんによるもので、病死に限ればがんが原因の9割を占めるというデータもある。
がんは社会人にとって非常に大きな壁といえる。
 
一方で、がんはわずかな知識と行動でコントロールできる病気でもある。
遺伝や家系はがんの原因の5%にすぎないが、禁煙(これが一番大事)、節酒(百薬の長は1合まで)、運動、食事、体型の維持を心がければ、男性の発がんリスクは半分以下になる。
 
しかし、どんな聖人君子でもがんのリスクは残るから、「運悪く」がんになった場合に備えておく必要がある。
これが早期発見で、がん全体の5年生存率は65%程度だが、早期がんに限れば9割以上が治る。
 
がんはかなり進行しないかぎり、症状を出しにくい病気のため、体調が万全であっても定期的にがん検診を受ける必要がある。
つまり、「生活習慣+がん検診」が、がんから身を守るための特効薬といえる。
 
新しい学習指導要領では、中学校、高校で「がん教育」を行うことが定められており、教科書の内容も数年で変わる。
 その点、皆さんはがんを習わずに社会人となった世代です。この連載を通して、「大人のがん教育」を受けていただきたいと願っています。
(執筆 東京大学病院・中川恵一 准教授)

参考・引用
日経新聞・夕刊 2018.4.18