がん 行動次第で「運命」変えられる

行動次第で「運命」変えられる

「がんには放置してよいものと、最初から転移があって治らないものがあり、どちらかは運命的に決まっている」という考えの人がいる。
こうした「がん運命論」は、がんになることも、がんで死ぬことも自分の努力では変えることはできないといった一種の諦観と言えるだろう。

しかし、がんの原因のうち遺伝は5%にすぎないから、がんは「運命」ではない。
生活習慣の改善で発症リスクを半分程度まで下げられるし、がん検診によって早期に発見できれば95%が治る。
がんは自らの行動でリスクをコントロールできる病気といえる。
 
日常の問題に対する対処の仕方と、がん発症やがん死亡との関連を調べた大規模調査の結果でも、このことが実証された。
研究では、がんに罹患したことがない全国の50~79歳の日本人約5万5千人に自記式のアンケートを行い、「日常の問題や出来事に対する対処の仕方」を尋ねた。
約10年の追跡期間中に5241人にがんが発症し、1632人のがん死亡が確認された。
 
対処の仕方を「計画を立てて実行する」「誰かに相談する」といった「対処型」と、「自分を責める」「避けてほかのことをする」といった「逃避型」に大別して、回答とがん発症、がん死亡との関連が検討された。
 
その結果、対処型の行動をとる人は有意にがん死亡が少なかったことが分かった。
対処型行動をとる人では、早期のがんが有意に多く、検診でがんが発見されたケースが多かったことも確認された。
対処型の行動をとる人は、逃避型の人に比べて、検診を積極的に受けることでがんを早期に発見でき、結果的にはがん死亡のリスクを減らすことができたと考えられる。
 
がんは、少しの知識とそれによる行動の変容で運命を変えることができる病気だ。
まずはがんを知ることが非常に大切だが、積極的に行動することも必要だ。
 
2007年に閣議決定された国の「がん対策推進基本計画」では「がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会」を目指すとしている。

執筆 東京大学病院・中川恵一 准教授
参考・一部引用
日経新聞・夕刊 2018.7.11