がん 知っておくべき7カ条

知っておくべき7カ条

多くのがん患者が「まさか自分が」と言うが、ぼうこうがんに罹患した私もその1人だ。
34年間もがん医療に携わってきた専門医の私ですらそうなのだから、私たちは自分ががんになるといった意識は持たないように「プログラム」されているのかもしれない。
今回、自身の経験を踏まえて、最低知っておくべき点を7カ条にまとめてみた。

(1) 症状を出しにくい病気
がんは少々進行しても症状を出さない。
樹木希林さんが乳がんの全身転移を抱えながら5年も映画などで活躍できたことからも分かる。
ましてや早期がんではまず症状は出ないと言える。
私のぼうこうがんもそうだった。

(2) リスクを減らせる病気
男性の場合、がんの原因の半分以上が生活習慣で、遺伝は5%程度にすぎない。
がんのリスクは自身で大幅にコントロールできるのだ。

(3) 運の要素もある病気
ヘビースモーカーで大酒飲みでもがんにならない「運のよい人」もいる。
逆に、完璧な生活習慣でもがんになる人もいる。
検診もすべてのがんを見つけることは不可能だ。
がんには運の要素もあることは確かなのだ。

(4) 早期なら95%が治る病気
がん全体の5年生存率は65%程度だが、早期がんに限るとほとんどが治癒する。
治療に要する時間やお金など、コストも進行がんよりはるかに少なくてすむ。

(5 ) 生活習慣+早期発見が大事
禁煙や節酒でがんのリスクを下げることは大切だが、運悪くがんになった場合にも備えておく必要がある。それが早期発見。生活習慣の改善と早期発見の2段構えがなんといっても大切だ。

(6) 早期発見のカギはがん検診
早期がんは症状を出すことはまれだから、絶好調であっても定期的に「がん検診」を受けることが必要だ。まずは、五大がん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸がん)の検診をきちんと受ける必要がある。

(7) 治療法も選べる病気
手術以外にも放射線治療という選択肢もある。
薬物療法も進歩しており、がん治療は選べる時代だ。
がんにならないと思う「本能」に逆らうのは難しいとしても、最低限この7カ条だけは知っておきたい。
(執筆 東京大学病院・中川恵一准教授)

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2019.4.24