乾癬に25年ぶり、のみ薬

乾癬に25年ぶり、のみ薬 副作用を軽減 / 増える治療薬

皮膚が赤みを帯びて、はがれ落ちる皮膚の病気「乾癬」は、かゆみなどの症状に加え、患者が見た目を気にして精神的にも苦しむことが多い。
昨年(2017年)、国内で約25年ぶりに新たなのみ薬が登場した。
重い副作用が少なく、治療の新たな選択肢として期待されている。

ある男性(77)が約40年前、足に丸いできものが出来た。
皮膚科で乾癖と診断され、「一生付き合うことになるかもしれない」と告げられた。
当時は仕事が忙しく、徹夜もよくあったという。
 
両ひざ下の肌が荒れて、かゆかった。
かくと、布団や床にはがれた白色のかさぶたがたまった。
家族に迷惑をかけている気がした。
塗り薬やのみ薬などを試したが、「良くなったと思ったら悪くなる。その繰り返しだった」という。
 
乾癖は、細菌やウイルスなどの外敵から体を守る免疫が誤って自分を攻撃しやすい体質の人に起こりやすい。
はっきりした原因は不明だが、他の病気やストレスなどが引き金となって発症すると考えられている。
 
男性は今年7月に突然症状が悪化。
ある皮膚科外来を訪ねた。
提案されたのが「オテズラ」。
昨年、国内で約25年ぶりに発売されたのみ薬だ。
炎症の原因物質の放出を抑えて症状を改善する。
朝夕とのむと、約2週間でかゆみは消え、腫れも治まった。
「肌がすべすべになった。いい薬に出合えた」と男性は語る。
 
オテズラは、吐き気や軟便などの副作用があるが、従来ののみ薬に比べると重い副作用が少ないとされる。
例えば、あるタイプの内服薬は子どもの奇形のリスクがあり、のむのをやめた後も一定期間の避妊が必要だ。
その点、オテズラは患者さんにとって費用や利便性、効果などの面でバランスがいい。
 
乾癖の治療は大別して4種類、症状に合わせて選ばれる。
具体的には
①炎症を抑えるステロイドなどを患部に塗る外用療法
②紫外線を当てる光線療法
③のみ薬を使う内服療法
④抗体を注射する生物学的製剤
がある。

乾癖は完全に洽るのは難しいとされてきたが、薬が充実し、症状がでなくなる人も現れている。
 
塗り薬が基本だが、症状が重いとこれだけでは効果が弱い。
2010年以降に登場してきた生物学的製剤は最も効果が高い。
ただ、薬によっては重い副作用の恐れがあり、初回は日本皮膚科学会に承認された医療機関を受診する必要があるほか、定期的に専門医に診てもらうものもある。
費用も高くなりがちという。

他人にはうつらない
国内の乾癖患者は、推計によって異なるが、多いものだと50万~60万人とされる。
男女比は2対1で、発症は20~50代が多いが、女性は若い世代も多い。
 
かゆみのほか、関節に痛みを伴うタイプもある。
また肥満気味だと、乾癖による全身の炎症で血管の機能が低下し、心筋梗塞のリスク要因にもなっている。
 
患者の精神的な負担も大きい。
「温泉でじろじろ肌を見られる」「はがれた白色のかさぶたが目立つから、黒い服を着られない」。
患者からそんな声も聞かれる。
塗り薬が服についてしまうことや、患部が広いと塗るのに何十分とかかるのも手間となる。
 
また、感染しないにもかかわらず、かんせんという読み方から「感染」を連想し、うつるという誤解も根強い。
病気への理解がなかなか浸透していないのが現状だ。

朝日新聞・朝刊 2018.10.17

<コメント>
オテズラは当院で1例処方し、著効を得ています。
最初、患者さんには近くの皮膚科で処方してもらうようにお勧めしたのですが、すべての皮膚科で断られたようです。
どうやら、新薬で「危ない内服薬」という印象を専門医が持たれたようです。
皮膚科医の保守的な姿勢を垣間見た思いがしました。
現在、この患者さんには喜んでいただいています。


<関連サイト>
乾癬の症状と治療法
https://aobazuku.wordpress.com/2019/08/07/乾癬の症状と治療法/

乾癬
https://medicalnote.jp/diseases/乾癬
・乾癬とは、後天性の角化症のなかでも、角化した皮膚に炎症が生じる病気だ。
角化症では、皮膚に炎症が生じて角質が厚く硬くなり、皮膚からのふけが増えて、かゆみや痛み、ときには発熱が生じる。

・日本人の発症率は人口の0.1%程度といわれているが、近年増加傾向にあるといわれている。
銀白色の分厚い角化した皮疹が現れるのが特徴。

・乾癬は病態によって大きく5つに分類され、90%を占めるのが尋常性乾癬。他には滴状乾癬、膿疱性感染、乾癬性紅皮症、乾癬性関節炎がある。

・乾癬は、皮膚が生まれ変わるまでのターンオーバーの時間が著しく短縮し、次々と新しい皮膚の細胞が産生されて一番表層にある角質が積み重なった状態となり発症する。
このようなターンオーバーの短縮がどのようなメカニズムで生じるのかは、正確には解明されていない。

・要因
遺伝的要因(発症しやすいいくつかの遺伝子異常が考えられている)
環境的要因(外傷や紫外線、感染症、薬剤などの刺激によって誘発されると考えられている)
自己免疫的要因(免疫細胞の中の樹状細胞
やT細胞に異常が生じ、増殖した角質に慢性的な炎症を引き起こすことがわかっている)

・診察上での特徴的な所見は、皮疹の鱗屑をはがすと点状出血が生じるアウスピッツ現象と、皮疹のない部位に刺激を加えると皮疹が誘発されるケブネル現象。

・皮疹の一部を切り取って病理検査を行うことがある。

・滴状乾癬では溶連菌感染の有無を検査したり、膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症では全身状態を評価するために血液検査を行ったりすることがある。

・一般的には、活性型ビタミンD3やステロイドの塗り薬が使用されます。重症な場合には、ビタミンA誘導体や免疫抑制剤の内服治療が行われることがある。
ステロイドは塗り薬では広く使用されるが、内服薬は膿疱性乾癬を誘発することがあるので推奨されていない。

乾癬の治療方法 ピラミッド型で進めていく
https://medicalnote.jp/contents/180329-013-RR

乾癬の原因は免疫の異常
https://medicalnote.jp/contents/180329-010-OS