感冒薬は2歳未満の小児には危険?

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お子さんが咳や鼻水などの風邪症状が出ると、たいていのお母さんは医療機関を受診します。
赤ちゃんであればあるほどお母さんの心配も強くなります。
そして処方する医療提供側も何の問題意識もなく風邪薬を処方したり、場合によってはお母さんの要求そのままに、いろいろな薬を出すことになります。
きょうのテーマは小児と風邪薬についてです。
医師向きのサイトからの紹介ですので、少しむつかしい内容になってしまいました。
要旨はタイトルそのものです。
小さいお子さんを持つ親の立場の方はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃんも知識だけでも身につけていただいておくといいと思います。

感冒薬は2歳未満の小児には危険


2歳未満の小児に鎮咳薬や感冒薬を投与するのは危険な場合があり、死に至る可能性すらあるという米疾病管理センター(CDC)が実施した新規調査が発表された。

CDCの『Morbidity and Mortality Weekly Report』1月12日号で発表された報告書によると、米国では2005年に乳児3名(全員生後6カ月以下)が、咳止めおよび感冒の薬の投与を受けた後に死亡したという。

3名に共通していたのは、鼻づまりの薬の血中濃度が高かったことであった。

さらに、2004-2005年に2歳以下の小児1,519名が、過量投与を含む、咳および感冒の薬に関連した副作用のため、米国の救急外来を受診している。

「両親は、鎮咳薬や感冒薬を与える前に医師に相談するべきである」と、CDCの疫学調査部門の職員であり報告書の共著者の一人である小児科医のAdam Cohen, MDは述べている。

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死亡した乳児は生後1- 6カ月であった。いずれも、鼻づまりの薬であるシュードエフェドリンが血液検体中に高濃度で含まれていた。
「それらは普通の用量を投与した2歳以上の小児において認められる濃度の9-14倍であった」と、Cohen博士は述べている。

この薬剤の成分は心拍数および血圧を上昇させ、場合によっては危険になることがあると、Cohen博士は述べている。

小児に薬剤を投与する前に医師に相談するようにというCDCの勧告は、薬剤のラベル表示の情報をそのまま繰り返したものだと、Cohen博士は述べている。「実際のラベルを見ると2歳未満の小児については医師に相談するよう記載されている。米食品医薬品局は、2歳未満の小児に対する[これらの薬剤の]推奨投与量を承認していない。」

2歳以上の小児の両親が咳止めおよび感冒の薬を投与する場合は、包装に記載された推奨用量を守らなければならないと、Cohen博士は述べている。その場合でも、薬剤を投与する前に小児の主治医に相談するのが賢明であると、博士は付け加えた。

小児科医の見解

薬剤が幼児に問題を引き起こす可能性があることを明らかにしたのは、CDC報告書が最初ではないと、ペンシルバニア州立大学医学部(ペンシルバニア州ハーシー)小児科の助教授である小児科医のIan Paul, MDは述べている。他の研究でも同じ結論に達している。

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副作用に関わる問題の一部は「これらの薬剤の多くが、複数の成分を含んでいることである」と、博士は述べている。「2種類の薬剤に同じ成分が含まれていることもあることを両親が理解するのは困難である。鎮咳薬と感冒薬を小児に与えると、1つの成分の量が2倍になる可能性があるということである」。

乳幼児の両親は薬剤によって症状がそれほど緩和されない可能性があることも知っておかなければならないと、Paul博士は述べている。
「この2歳未満の集団における感冒薬および鎮咳薬の安全性および有効性を実証する研究はない」と同博士は言う。

1997年以来、米小児科学会は、乳幼児の両親に対して、咳止め薬のデキストロメトルファンおよびコデインは乳幼児における有効性が証明されておらず、副作用の可能性があることを忠告していると、同学会の臨床薬理学および治療学部門の評議会メンバーであるPaul博士は述べている。

薬剤に代わる手段

Paul博士は、小児が咳をしたり風邪をひいたりした場合には、脱水状態にならないよう十分な水分を与えることといった、「症状が楽になるような対策」をとるよう、乳幼児の両親に教えている。

「小児が生後3カ月を過ぎていれば、不快感を和らげるためにアセトアミノフェンを投与することが可能である」とPaul博士は述べている。
イブプロフェンは生後6カ月を過ぎると投与できる」。

食塩水の点鼻も役に立つことがある、とPaul博士は述べている。
「これらのアドバイスがよいことは、小児科医がしだいに認めつつある」と同博士は述べている。


<コメント>
乳幼児に咳止めのテープ(シール)がよく使われています。
風邪で来院されるお子さんを診察すると、もうすでにお母さんが貼ってみえることもしばしばです。
多分どこかで前に処方された余りを貼っているのでしょう。
多くの方は知らないようですが、あれは実は気管支拡張剤なのです。
文中に出てくる「エフェドリン」と同系統の喘息治療薬です。
したがって喘息様気管支炎などの咳にはよく効くのですが、効かない咳もあるのです。
なによりも医師が同系統の薬剤を内服で処方すると、血中濃度が高くなってしまう事態も想定されますので注意が必要です。

このシールはもともと夜間や明け方の喘鳴や咳に対して効くように開発されたおくすりです。
夜8時に貼ると大体翌日の朝8時頃まで効くように作られています。
したがって日中に貼ると
内服薬と効果が重なる可能性があります。

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