再生医療・脳梗塞

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皆さんもご存知のように、脳卒中の内訳も脳出血は年々減って脳梗塞が増加しています。
これは高血圧の治療の普及と食生活の欧米化が原因といわれています。
この脳梗塞も脳血栓と脳塞栓とに分けられます。
この違いもご存知のことと思います。

昨年の京大でのiPS細胞開発で再生医療が一気に現実のものとなり私達にも身近なものと
なってきました。
きょうは新聞の健康記事から、脳梗塞での再生医療といった最新医療をとりあげて
みました。


発症1週間後、骨髄の単核球を静脈に 重症患者の復帰に期待

生活習慣病の増加に伴って脳梗塞(こうそく)の患者も増えている。
重症になると一命を取り留めたとしても、軽たきりや車いすの生活を強いられることが
少なくない。
心原性脳塞栓(そくせん)症という脳梗塞の患者に対して近く再生医療を実施する
国立循環器病センター内科脳血管部門の成冨博章部長は「治療の手段がなくなった重症
患者が、社会復帰できるようになれば」と期待する。

心原性脳塞栓症とは
「心臓にできた血栓が脳の血管をふさぐことで発症します。
脳梗塞全体の約5分の1を占め、重症のケースが多いのが特徴です。
40歳代、50歳代でも起きますが、ほとんどは60歳
以上で、亡くなることも少なくありません」

治療法は
「救急車で運ばれてきたらまずコンピューター断層撮影装置(CT)で脳の画像を
撮ります。
発症後3時間以内で脳の組織が一部死にかかっていてもその範囲が小さければ、血栓
溶かすヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)という薬で治療します。
脳の 組織が広い範囲で死にかかっているときは、t-PAを使わない方がいいという
ことになっています。
死にかけている組織の周辺にある血管はもろくなっているので、いったん詰まった
血流を再開すると出血が起きるからです」

「発症後6時間以内であれば脳を冷やして保護する低体温療法を行うこともあります
が、最近では発症後24時間以内であれば、エダラボンという薬で脳を保護する治療
を行うのが普通です」

再生医療の対象は
脳梗塞は一般的に発症後一週間くらいたつと、むくみが軽くなり、脳が自分自身の
力で再生するプロセスが始まります。そういう時期に合わせて、再生医療をやれば
かなり効果が上がと考えられます」
「今回、治療の対象になるのは1週間か10日くらいあらゆる手を尽くしても寝た
きりか、車いす生活しかできないような人です。あまり高齢だと体に負担がかかるので、
年齢は75歳までとしています」

具体的にはどのように治療するのですか
「局所麻酔で腰の骨から骨髄を採取し、血管を作るもとになる細胞などを含む単核球
を精製、患者の静脈内に注射で戻します。最初の6例には50cc打つことにして
います」

よくなる仕組みは
脳梗塞になると脳の神経細胞が死滅します。1週間から10日で神経細胞 のもと
になる神経幹細胞が損傷部に集まり自力で神経細胞を再生する試みが始まります。
しかし、損傷部の周りの血管が詰まったり傷んだりして、十分な血液を送ることが
できず、神経幹細胞は酸素や栄養不足に陥り、神経細胞を再生できません。そこで
単核球を静脈内に送り込んで血管を再生させ、神経細胞をよみがえらせようという
ものです」

動物実験ではネズミの中大脳動脈を縛って脳梗塞を起こしてから48時間たった時点
再生医療を始めました。約1カ月後に脳を調べて見ると梗塞を起こした領域が半分
くらいに減り、他の半分くらいの領域には新しい細胞ができて機能も回復していました。
サルを使った実験でも安全性を確認しています」

細胞精製を短縮  素早い移植可能
国内では昨年1月、札幌医科大学脳梗塞を発症して2カ月たった50歳代の女性に
骨髄細胞を移植する再生医療を初めて実施した。
国立循環器病センターも骨髄の細胞を使うが、細胞の種類が異なる。
札幌医大では細胞を約2週間かけて培養しなければならないが、国循の場合は細胞を
3時間ほどかけて精製するだけでよくその曰のうちに移植できる。

治療対象の患者も札幌医大が3週間以内であるのに対し、1週間から10日前後と
異なる。
どんな時期にどの細胞をどれくらい移植すればよいのか、今後の臨床試験の結果が
注目される。

日経新聞・夕刊 2008.1.22
版権 日経新聞


眠れる再生力を呼びさませ~脳梗塞(こうそく)・心筋梗塞(こうそく)治療への挑戦

両生類のイモリは、足を失っても再生できる驚異の力を持っている。
一方、人は、進化の過程でこうした再生力を失ったと考えられてきた。
しかし今世紀に入って急速に研究が進み、人にも秘められた再生力があることが
わかってきた。

今年1月、札幌医科大学附属病院脳神経外科で、日本で初めての治療法の臨床試験
が始まった。
それは、脳梗塞で傷ついた脳の神経を、自らの細胞で再生させようという試みである。
その再生治療に使われるのは、患者本人の骨の中にある骨髄の細胞である。
骨髄の幹細胞と呼ばれる細胞を体内から取り出し培養、患者の血管に注入すると、
傷ついた脳の神経が再生するというのである。
番組では、この臨床試験に挑んだ脳梗塞患者を8ヶ月に渡って取材。左半身に運動
マヒを抱えた患者が、今までの治療では考えられない回復を続けている様子を描く。

また、自らの骨髄の細胞を使った再生治療は、脳だけでなく心臓でも始まっている。
ドイツでは心筋梗塞患者が骨髄の細胞で治療を行い、傷ついた心筋細胞が復活し、
スポーツが出来るまでに回復している。
医療を根本的に変えると言われる再生医療
札幌医科大学では、脳梗塞治療に挑む臨床試験を密着取材、ドイツでは心筋梗塞
治療に挑む臨床試験を追い、人体に秘められている再生力の可能性に迫る。

NHKオンライン
2007年11月5日(月) 午後10時~10時49分
総合テレビhttp://www.nhk.or.jp/special/onair/071105.html