脊髄損傷、再生医療に期待

脊髄損傷、再生医療に期待 患者「手足、少しでも動かせれば」

リハビリ以外に有効な治療法がない脊髄損傷。
iPS細胞などを使った再生医療への期待は高い。
 
脊髄損傷は首や背中など起きた場所によって手や足がまひする。
損傷部を修復する治療法は確立されておらず、リハビリでわずかに残る機能の回復を目指すより手立てがない。
 
体に装着したロボットで筋肉を動かそうとする際に皮膚に生じる電気信号を読み取り、動きを補助するものなどもあるが、損傷が一部で運動や感覚の機能が残っているのが前提だ。
完全まひを根本的に治すものではない。
 
それだけに脊髄損傷者は、「手や足が少しでも動かせるようになるだけで生活は大きく変わる」と再生医療に期待する。
 
2010年に米国でES細胞(胚性幹細胞)を使った世界初の治験が行われたほか、国内では、間葉系幹細胞を使った札幌医科大などの研究も進む。
 
iPS細胞を使う今回の臨床研究は、損傷から2~4週間の運動や感覚が失われた完全まひの患者が対象。
この時期が神経細胞のもとになる細胞を移植しやすく、神経細胞も伸びやすく、治療効果を期待できるためだ。
 
京都大iPS細胞研究所で備蓄された他人由来のiPS細胞を使う。
移植した細胞が腫瘍化する恐れがあり、リスクを下げるため、移植前に特殊な薬を使って調整しておくという。
 
また脊髄損傷の治療で重要なのがリハビリだ。
脳からの命令を神経細胞を通って手足に伝えたり、手足の情報を脳に伝えたりするようになるには、修復した部分を機能させる必要がある。
今回は通常と同じ内容のリハビリを半年間行う。
計1年かけて、移植に伴う安全性とあわせて運動や知覚機能の回復の様子を確かめる。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2018.11.14