高齢者担当医 その1(1/2)

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「高齢者担当医」に懸念  新医療制度 診療の連携阻害・検査抑制

75歳以上を対象に4月から始まった後期高齢者医療制度
名称や年金から天引きされる保険料などが不評だが、受けられる医療の中身に
変化はないのか。
通院治療を受ける慢性疾患のお年寄りを対象に導入された「高齢者担当医」の役割
と問題点を探った。

「主病一つと限らぬ」

東京都中野区が今月下旬、住民向けに開いた後期高齢者医療制度などの説明会。
区内の女性(80)は、新制度について知りたいと参加した。
 
女性は持病の糖尿病で月1度、小平市の内科医院に通う。
そこで3月、不整脈の疑いを指摘された。
4月に新宿区の循環器専門クリニックを受診。
いま確定診断待ちだ。
 
「高齢者担当医」は、一人の医師が患者の心身を総合的に診ながら、他院の受診状況
も把握して薬の重複がないかなどをチェックしてくれる。
だが女性は今のところ、担当医を選ぶつもりはない。
「糖尿病と循環器、それぞれの専門医に相談したい」という。
 
後期高齢者医療制度の開始にともなって始まった担当医の仕組みだが、女性のように
選ばないのも自由。
一方、担当医がいても他の病院や医院を受診するのは自由だ。
 
担当医が持てる人は限られる。
13の慢性疾患の人たち。
再診料などと別に月6千円(自己負担600円)の「後期高齢者診療料」が要る。
これまで診療費明細に「特定疾患療養管理料」があった人らが主な対象だ。

担当医を選ばない患者はこれまでと同様、この管理料が適用される。
この管理料なしに別の診療費の組み合わせの場合もある。
 
患者が担当医を選んだ場合、他の病院や医院では後期高齢者診療料や特定疾患療養
管理料が算定されない。
厚生労働省が、担当医を「主な病気を診る医師1人(1医療機関)」と定めている
ためだ。
 
このため、地域の医師会や保険医協会の中には、担当医制に反対の声が上がる。
複数の病気を持つ患者を、複数の医師が連携して診ることもあるのに、担当医以外
はこの診療料などが請求できないというのが理由の一つだ。
 
厚労省は「特定疾患療養管理料」も主病は一つという考えで、1医療機関しか請求できな
かった」と反論する。
とはいえ、医療機関の医療費請求がまだ完全電子化(11年度予定)されていない
ため、複数の医師が重複して管理料を算定していないかチェックは難しい。
このため、管理料は複数機関で請求できると誤解している医師も多いという。
兵庫県医師会常任理事の松本卓医師は「そもそも、主病は一つという厚労省の考え
方に全く医学的根拠がない」と批判する。
「糖尿病と認知症があれば、どちらが主病と決められない。医療機関の連携を破壊
するような規則は患者さんのためにならない」

出典 朝日新聞・朝刊 2008.4.27
版権 朝日新聞社

<コメント>
あきれました。
年金から保険料が天引きされる、ということで大騒ぎになっていたころに、私は
「高齢者担当医」制度の問題点を指摘してきました。
なりふりかまわない医療費削減政策。
厚労省も医療側や国民に対して、空気が読めていないのか、わかっていてこれだけ
神経を逆なでするのか。
こういったことが医療側に相談のないまま決まることかどうかも私にはわかりま
せん。
政策決定過程がよくわからないからです。

次の番外編の報道もひどい話です。
さすがに、すぐに撤回したようですが。
厚労省の決めることはこの程度のものなのです。


番外編
ジェネリック使わないと生活保護ダメ 厚労省通知
2008年04月29日06時21分
生活保護を受けている人に価格の安い後発医薬品ジェネリック)を使わせるため、
先発品を使い続ける場合は保護の停止を検討するよう、厚生労働省が各都道府県への
通知で求めていたことが明らかになった。
しかし、批判を受けて厚労省は28日、通知を撤回する方向で検討に入った。

中略

舛添厚労相は28日の参院決算委で「とにかく生活保護の方、後発品にしなさい、
ととれる文章使いがあった。書き換えさせている」と表明。
厚労省は通知を撤回し、受給者にも先発品の使用を認める通知を出し直す方向だ。
http://www.asahi.com/life/update/0429/TKY200804280368.html?ref=goo


厚労省生活保護受給者に「原則ジェネリック薬使用」を撤回
厚生労働省は30日付で全国の自治体に対し、生活保護受給者に原則として後発
ジェネリック)薬を使うよう求めた通知を撤回する通知を出した。
同通知については「生活保護受給者の患者から選択の権利を奪う」として批判の声
が上がったため方針を転換した。
今後は患者に後発薬について丁寧に説明することなどで利用促進を図る。

厚労省は価格の安い後発薬の普及を進めている。ただ医療サービスに自己負担が
ない生活保護受給者は安い医薬品を使う誘因が低いと判断。
4月から原則後発品を使うよう通知していた。(20:15)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080430AT3S3001430042008.html

ジェネリック医薬品生活保護者に安価薬 「違反者」割り出し徹底
2008年4月27日(日)13:00
自治体「どう説明を…」
生活保護受給者に対してジェネリック(後発)医薬品の使用を事実上強制する通知
厚生労働省自治体に出していることが明らかになった。
背景に医療費抑制を迫られる“国の懐事情”があり、通知書でも「後発医薬品
安く」「医療保険財政の改善の観点から」など、お金にかかわる文言が並ぶ。
一方、指導に従わない生活保護者を割り出すため、薬局に1枚100円の手数料を
払ってまで処方せんを入手するとしており、なりふり構わぬ様子がうかがえる。

中略

通知によると、都道府県や政令市などが所管する福祉事務所は、診療報酬明細書
(レセプト)の抽出を行ってまで、生活保護者が後発薬を使っているか確認しな
ければならない。
そのために、調剤薬局に1枚100円の手数料を支払い、先発薬を使っている生活
保護者の処方せんの写しを提出させることまで規定していた。
先発薬の使用を指示した医師に対しては「特段の理由なく(受給者が)後発薬を
忌避したことが理由でないかについて確認」することも盛り込んだ。

国は後発薬の使用を生活保護者だけでなく国民全体に呼びかけているが、窓口で
3割負担をする患者は調剤薬局などと相談して先発薬を選ぶこともできる。
しかし生活保護者は「医学的理由がない」と判断されれば、保護の停止や打ち切り
につながりかねず事実上、選択権が奪われた形だ。
ある自治体の担当者は「停止や打ち切りにつながることを、どういう形で受給者に
説明するか慎重に検討したい」と戸惑った様子で話す。
http://news.goo.ne.jp/topstories/life/20080429/648df031d1a06c7094864ad50f8f3ca0.html?fr=RSS


ジェネリック医薬品生活保護には安価薬 不使用、手当打ち切りも--厚労省通知
2008年4月27日(日)13:00
◇専門家「患者の選択権奪う」
全額公費負担で医療を受けている生活保護受給者への投薬には、価格の安いジェネ
リック(後発)医薬品を使うよう本人に指導することを厚生労働省都道府県や
政令市などに通知していることが分かった。
指導に従わなかった場合、生活保護手当などの一時停止や打ち切りを検討すべきだ
としている。
後発薬は価格が安い半面、有効性などについての情報不足から使用に抵抗感を持つ
医師や患者もおり、専門家から「患者が選択できないのは問題だ」と批判が上が
っている。
 
中略

一方、主成分以外の溶剤やコーティング剤などが先発薬と違うことなどから、
「先発薬と(効能が)まったく同じではない」として、後発薬の使用に抵抗や不安
を感じる医師や患者もいる。

通知は4月1日付。
医学的理由で医師から指示され先発薬を使う場合を除き、生活保護受給者が医療
機関で薬を処方される際、都道府県や政令市などの所管する福祉事務所が後発薬を
使うよう本人に周知徹底する、としている。

これを受け受給者は、医療機関で受診する際、後発薬を処方するよう医師に
求めることになる。

先発薬を使い続けている受給者については福祉事務所が診療報酬明細書をチェック
し、正当な理由がない場合は口頭や文書で指導する。
それでも従わない場合は保護の一時停止や打ち切りを検討するとしている。

厚労省保護課は「生活保護の医療扶助は最低限の医療を受けてもらうのが目的。
安全性や効用が同じなので安い後発薬の使用に問題はない。窓口で3割負担する人
と比べ、負担のない受給者は(自ら)後発薬を選ぶ動機が働きにくく、制度に
強制力を持たせないといけない」と説明している。

◇強制はおかしい--医事評論家の水野肇さんの話
後発薬は先発薬と完全に同じものではなく、薬を変えられれば不安を感じる患者も
いるだろう。
国が安全性や有効性を十分証明した上で患者が選べることが重要。
生活保護受給者だからといって後発薬を事実上強制するのはおかしい。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20080427ddm001040098000c.html

<コメント>
あきれました。
朝令暮改とはまさにこのことです。
ついに出ました。
社会的弱者には最低限の医療
この無神経さにはあきれるばかりです。
血の通った人間のやることではありません。
○○役人といわれても仕方ないですね。
どうやらこの国の政治は人の命や暮らしよりも道路が大切ということが見えて
来ました。

国破れて道路あり。


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