脳内神経細胞の移動解明

タンパク質で通路確保 脳疾患の治療へ道
脳内で作られた神経細胞が移動する仕組みを、名古屋市立大大学院医学研究科の澤本和延教授や金子奈穂子助教らのグループが解明した。
脳梗塞など脳疾患を治療する再生医療の発展につながる可能性がある。
科学誌ニューロンに29日発表した。

神経細胞は、脳内の特定の場所で作られた後、脳の中を移動。
それぞれの場所で、役割に応じて働く。
しかし細胞が密集している脳内を神経細胞がどのように移動するのかは分かっていなかった。

澤本教授によると、グループはまず、マウスの脳を観察し、神経細胞が星の形に似た細胞「アストロサイト」の間を通過する際、特別なタンパク質を出すと、アストロサイトが突起を引っ込め、トンネル状の通路ができることを確認した。

その上で、このタンパク質が出にくいようにしたマウスの脳を分析。
その結果、神経細胞の移動速度が遅くなり、アストロサイトもうまくトンネルをつくれなくなっていたことから、このタンパク質が移動を円滑にさせていることが裏付けられた。

澤本教授は「アストロサイトのトンネルを制御できれば、脳の必要な場所に神経細胞を移動させることができる」と話している。




出典 中日新聞・朝刊 2010.7.29
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