ドイツ文学者・エッセイイストの池内紀氏が、ある日の日経新聞・夕刊の「あすへの話題」に素晴らしい投稿をしていました。
以下、引用。
無知、怠慢、欺瞞、罪
福島第1原発の事故から3ヵ月が過ぎた。
冷静をとりもどした頭で、整理のためにメモをとってみよう。
第1に私達の無知である。原子力発電の恩恵を受けながら、それがいかなるものかを知らなかった。たとえば原子炉の寿命が40年とされ、その後の廃炉、また使用済核燃料の処理に莫大な費用と長い歳月を要するということを知らなかった。
第2に私達の怠慢である。原発の危険、また建設と廃棄に要する巨大な経費を考えれば、決して安い電力でないことは、少数の学者たちがくり返し警告していた。それに耳をかそうとせず、きちんと受け止めて考えるのを怠った。
第 3に私達の欺瞞である。必ずしも無知だったわけではなく、チェルノブイリやスリーマイル島のことも知っていた。絶対安全といわれても、世の中に絶対といえるものなど何ひとつないことをよく承知している。知っていながら知らないふりをし、感じながら自分とは関係ないようにみなしてきた。
第4に利益のこと。私達を無知にとどめ、怠慢にさせ、利己主義と自己欺瞞に導いたものがある。無知にとどめておくほうが自分たちに都合がよく、知らないと思い込ませることが利益になる。それについても私達はうすうす感じていたのだが、大勢に従って安楽を享受してきた。
日本人が大きな罪を犯した。とてつもなく地球を汚し、とり返しのつかない荒廃をひき起した。しかもこの罪は孫子の代まで私たちにつきまとう。罪に目をつぶるのは、とても卑しいことなのだ。
<私的コメント>
最後の部分は私自身もあの原発事故以来考えていたことです。
同じことを考え、このことを表明してくれた池内紀氏がますます好きになりました。