「炭酸パワー」

「炭酸パワー」で夏に勝つ 飲料・入浴剤で元気回復

暑い夏は炭酸飲料が飲みたくなる。シュワシュワと爽快なだけでなく、欧州では昔から医療現場でも使われている。
飲んだり、炭酸入りのお風呂に入ると血液の巡りが活発になり、疲労回復やアンチエイジング、胃腸の働きを整えるなどの効果を期待できるという。

 炭酸水は二酸化炭素(CO2)が溶け込んだ液体のこと。ガスが気化するときに泡となり、シュワシュワとした感覚をもたらす。


毛細血管を拡張
小さな泡だが、欧州では古くから浴用として疲労回復や、やけどや床ずれなどの外傷の改善、また飲めば胃腸の働きを整え、便秘にも効果的として医療現場や生活のいろいろな場面で取り入れている。

炭酸に最も期待されている効果とは、血管の拡張を促すこと。
炭酸ガスは皮膚や胃の粘膜を通じて血管に進入する。血管は炭酸ガスを異物と見なし洗い流そうとするほか、血中の酸素量を増やそうと毛細血管まで拡張するため、管内の血流が増加。血の巡りが良くなり、新陳代謝が活発になり、老廃物の排出も促されるという仕組みだ。

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日本の炭酸泉では、大分県久住山系のふもとにある長湯温泉が有名だ。
湯に入ると、天然の泡がラムネのように体中に付着する。人肌程度のぬるま湯だが、浴後は手足の先までぽかぽか。炭酸泉は「ぬるめでも、老廃物をサラサラと排出できる、まさに美人の湯」。

とはいえ、欧州と異なり日本には天然の炭酸泉は多くない。
遠方まで行かなくても、炭酸ガスを発生する入浴剤を使えば家庭で炭酸泉を再現できる。
入浴剤はドラッグストアやコンビニエンスストアで「炭酸ガス」と表示されているものを選ぶ。

効果的な入浴法は「夏はセ氏39度±1度、冬は40度±1度の湯で、20~30分くらいくつろぎながら入浴を楽しむこと」。
のぼせにくく、心臓に負担が少ない。ぬるめでも皮膚から血管内に炭酸ガスが浸透し、毛細血管まで拡張するため、手足の先までしっかり血が行き渡る。
利尿効果もあるため、肩こりやストレスの原因成分が体外に排出されやすい。
暑い夏にもぴったりの入浴法だ。

入浴剤の効果は2時間が限度。
シュワシュワと発泡する固形分が溶けても効果は十分持続するが、2時間以上たった場合や、疲れがたまっている日は入浴剤を足して使うこともおすすめだ。
湯をかき混ぜたり、追いだきやジャグジー機能を使ったりすると炭酸の抜けが早くなる。

また入浴剤には、スキンケア効果のある保湿成分が配合されている場合が多いため、シャワーなどで洗い流さなくてもよい。
浴後は体を軽くふき、クリームなどで手入れをするとお肌をしっとりさせる。

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飲用で満腹感も
炭酸飲料は、飲むと気分がリフレッシュするだけでなく、胃腸の働きを整える。
夏バテや食欲のない時、食前にビールやスパークリングワインを適量飲むと、胃腸の粘膜が刺激され血行が活発になり、食欲増進や消化を助ける働きがある。
糖分やアルコールの取りすぎには注意が必要だ。

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また、ダイエット中の人は無糖の炭酸水を食中に飲用すると満腹感を得やすい。
最近は様々な炭酸水が店頭に並ぶようになった。泡の量や大きさが違うほか、カルシウムやマグネシウムなど天然ミネラルを含んだものもある。
刺激の苦手な人は微炭酸を、栄養を効率的に摂取したい人は硬度が高めのものを選ぶなど、飲み比べて自分に合うものを選びたい。

炭酸水を上手にのみ続けると、胃腸を整え便秘改善にもつながる。
毎日200ミリリットル程を、2週間以上継続して飲む。
特に就寝の1~2時間前に飲むと、眠っている間に胃腸に炭酸ガスが吸収されやすい。

身近な炭酸を上手に使って、暑い夏を乗り越えたい。


◇ ◇

泡の摂取、便利なシャンパ
泡立つお酒、シャンパンにはどのくらいの泡が含まれているのだろうか。
仏物理化学者、ジェラール・リジェ=ベレール氏の著書「シャンパン 泡の科学」(白水社)によると、シャンパンにはビールの約3倍の二酸化炭素(CO2)が溶け込んでいる。

シャンパンを飲まずに置いておき、泡が出なくなるまで待ったとすると、グラス一杯100ミリリットルから1100万個、東京都の人口(約1300万人)に匹敵する泡の量のCO2が立ち上ったことになる。

炭酸を摂取するのには便利なお酒だが、瓶内には多量のCO2が密封されているため、開栓時には飛び出したコルク栓が時速50キロメートルに達することもある。
目を直撃しないように注意が必要だ。

出典 日経新聞・朝刊 2011.6.18(一部改変)
版権 日経新聞


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