新型コロナ 流行拡大  一人ひとりの力で防げ

新型コロナ 流行拡大  一人ひとりの力で防げ

密集空間しばらく避けよう かぜの症状出たら外出控えて

新型コロナウイルスは、感染者の多くが重い肺炎になった重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスに比べ、感染しても症状の軽い人や症状の出ない人が多い。

しかも、ジムや卓球教室で集団感染が起きており、スポーツができるほど元気な人からも感染が広がると考えられる。

 

無症状や軽症ですんだ人には朗報だが、一方で、感染対策は難しい。

どこで流行しているのかが見えにくいし、本人に感染した自覚がほとんどないまま知ら

ずに他の人にうつしてしまっている可能性がある。

 

詳しいことはまだわからないが、このウイルスには次のような特微かある。

 

感染して、「下気道」と呼ばれる肺でウイルスが増殖する人と、のどや鼻といった「上気道」で増殖する人がいる。

 

下気道でウイルスが増えると、肺炎が起きるなどして重症化するが、ウイルスは比較的、体外に出にくい。

上気道で増殖する場合は、軽症か無症状でものどに大量にウイルスがいて、せきやくしゃみをしなくても、話すだけでウイルスが体外に出て、感染を広める恐れがある。

 

こうした特徴を考慮すると、新型コロナウイルスの感染は今後、世界中でさらに拡大し、確実に世界的大流行(パンデミック)になるだろう。

流行が数カ月で収まるとは考えにくい。

多くの人が感染すれば、大半が軽症者でも、一部は重症化し、亡くなる。

 

 

最悪の事態を避けるにはどうしたらいいか。

一つの方法は中国方式だ。

流行地を閉鎖したり市民に外出を禁じたり、社会機能に大きな制約を加える。

中国では明確な効果が出ており、感染者数が減少傾向にある。

 

日本で中国方式をとるのは難しく、ふさわしくないだろう。

政治や経済などの社会体制や文化が異なるからだ。

コメント

この記事が書かれた後、欧米では中国方式がとられています。

日本でも厳しくない方法で一定の制約を行うようになって来ました。

首都をロックダウンするという噂も流れ出しました。

 

上から課す対策だけでなく、市民の自主的な取り組みにも大きな役割を担ってもらう、 「日本方式」で何とか、流行の拡大スピードを抑えたい。

 

そのために、一人ひとりに自分の行動が他の人や社会にどのような影響を与えるか、想像力を働かせて、行動してもらいたい。

自分に端を発して感染が広がったその先には、必ず重症化する人が出てくる。

コメント

東京国際フォーラムと埼玉スーパーアリーナの2つの会場で大きなイベントが強行されました。

その後、感染者が出るかどうか、しっかり追跡調査を続ける必要があります。

もし、感染者が発生しないようなら、こういったイベントが今後も行われる可能性があります。

いわば、壮大な実験が行われたことになります。

感染が広がった際の罰則規定もなさそうですし、広がらなかった場合にも大きな影響が出そうです。

 

幸い、新型ウイルス感染者の8割はだれにもうつしていない。

集団感染の連鎖が起きないようにすれば、流行は抑えられる。

 

すべての人に、手洗いやせきエチケットといった基本動作をとってもらうとともに、しばらくは集団感染が起きやすい場所を避けるようにお願いしたい。

 

これまでに集団感染が起きたのは、風通しの悪い、人口密度の高い空間で、人と人が至近距離で会話をするような場所だ。

屋形船やライブハウス、プレハブの仮設施設、スポーツジムといった屋内スポーツ施設、大勢の人が狭い空間に集う懇親会などがあげられる。

 

一方、1人でする散歩やランニングのリスクは高くなく、オンラインで音楽や映画を楽しむスタイルなら感染の危険性はない。

 

 

自分では大したことがないと感じていても、少しでもかぜの症状が出たら、外出は控えたい。

 

熱が出た場合、原則として自宅で水分を十分に補給しながら安静にし、様子をみよう。

4日以上熱が続いたら、帰国者・接触者相談センターに連絡をとる。

小さな子どもの場合、心配になるのはわかるが、まずはかかりつけの小児科医や「こども医療電話相談」の#8000などに電話して相談しよう。

 

病院を受診すると、新型ウイルスやほかの感染症に感染するリスクも高くなる。

 

しかも一度に大勢が受診すると、患者を受け入れられなくなり、ふだんなら救命できる患者が命を落とすような悲劇が起きかねない。

 

もちろん呼吸困難がある、免疫抑制剤をのんでいるなど、重症化リスクの高い人は例外なので、4日を待たずに相談センターに連絡する必要がある。

 

一人ひとりの創意工夫で、日々の生活や社会機能への影響を最小限にしたうえで、感染をできるかぎり抑えたい。

(押谷仁・東北大学教授への3月上旬でのインタビュー記事)

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.3.12 別刷り