新型インフルに切り札か

治療薬T-705実用化に期待

インフルエンザ治療薬として富山化学(本社・東京)が臨床試験を進める「T-705」は、
既存の治療薬のタミフルなどとは違った仕組みでウイルスの増殖を抑えることがわかってきた。
動物実験ではタミフルより高い効果を示し、日本発の新型インフルエンザ対策の切り札として
期待が高まる。

ウイルス増殖抑える新作用

T-705は窒素やフッ素、炭素、水素などからなる分子量157の低分子化合物。
富山化学が、インフルエンザウイルスの増殖を抑える物質を各種化合物で探し、見つけたものを
人工合成した。
 
富山大の白木公康教授(ウイルス学)は、冬に流行する
H1N1型ウイルスをマウスに感染させ、タミフルとT-705の効果を比べた。
マウス14匹に各300個ほどのウイルスを感染させた場合、治療薬なしだと20日目までに
12匹が死に、生存率は14%。

それが、感染1時間後から1日に体重1キロあたり200ミリグラムのT-705を飲ませると、
生存率100%。
感染の25時間後から服用を始めても生存率7割を超えた。

同量のタミフルでは、感染1時間後から服用させると生存率は9割を超えたが、25時間後から
だと5割に落ちた。
 
感染させるウイルスを3万個に増やすと、感染1時間後から服用してもタミフルの生存率は
1割以下だったが、T-705は100%だった。
 
東南アジアを中心に200人以上が死亡し、新型インフルエンザへの変異が心配されている
H5N1型に対しても同様の結果が出ている。
 
ユタ州立大のチームはマウスにH5N1型を感染させて、治療効果を比べた。
感染1時間後から1日に体重1キロあたり20ミリグラムのタミフルを飲ませた場合の生存率
は1~2割だったが、同33ミリグラムのT-705の生存率は9割以上だった。

T-705の量を300ミリグラムに増やすと、感染96時間後からの服用でも生存率は9割
を超えた。
タミフルが効かない耐性ウイルスや、H3N2型を使った実験でも、同様の効果が報告されて
いる。
     
    ◇

薬が効く仕組みも、わかりつつある。

インフルエンザウイルスは表面のたんぱく質「ヘマグルチニン」を使って細胞に入り=図①
自らの遺伝子(RNAを複製して増える。
その際、酵素「ポリメラーゼ」を使う=図③
富山化学の古田要介・事業開発部担当部長(ウイルス学)よると、T-705はこの酵素の働き
を抑えることが実験で確認できた。
 
また、RNAを複製する際に細胞内のヌクレオチドの一種が材料となる。
T-705が効く理由について、古田さんは「RNA複製の際、ポリメラーゼが誤って、
T-705をヌクレオチドだと認識してしまうようだ」という。
 
既存薬のタミフルリレンザは、細胞内で増えたウイルスが外に出る際に必要なたんぱく質
「ノイラミニダーゼ」の働きを抑える=図④
ウイルスの増殖は防げず、ウイルスが大量に増えた後では効果があまり期待できない。

別の既存薬シンメトレルは、ウイルスが細胞に入った直後に必要なたんぱく質「M2」を
抑える=図②
ただ、薬の効かない耐性ウイルスができやすい欠点がある。
 
これに対して、T-705はウイルスの複製そのものを押えるうえ、これまでの実験では
耐性ウイルスもほとんどできていないという。
 
富山大の白木教授は「重症で、しかも感染から時間が経過した後でもタミフルより効果を
発揮するという特徴は、こうした作用の仕組みの違いで説明できる」と話す。

臨床試験の最終段階へ

T-705が治療薬として承認を受けるには、薬事法に基づく臨床試験が必要だ。
国内では昨年1月から安全性を確かめる「フェーズ1」の試験が始まり、今年1月から実際
の患者で有効性を見極める「フェーズ2」に進んだ。
 
順調なら、次の冬のインフルエンザのシーズンに数百人規模の患者で最終段階の「フェーズ3」
の試験に入る。

ここで効果と安全性を確認できれば承認申請となる。
 
同様の臨床試験は米国でも計画されている。
同社では現在も、副作用や安全性について、さらに慎重に検討を続けている。


インフルエンザ治療薬

現在はタミフル(一般名オセルタミビル)、リレンザ(同ザナミビル)、シンメトレル
(同アマンタジン)。
発症から48時間以内の服用でウイルス増殖を抑えて高熱を下げ、回復が早まる効果がある。
タミフルリレンザ新型インフルエンザにも効くと期待され、国や都道府県が備蓄を進める。

出典 朝日新聞・朝刊 2008.8.22
版権 朝日新聞社
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<自遊時間>
■ 雨がしょっぱい!=女子20キロ競歩〔五輪・陸上〕
激しい雨の中で行われた女子20キロ競歩
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事前に雨を降らせて雲を消し、後に「晴れ」を手に入れるという。
男子マラソンと閉会式が控える24日のための作戦があったとしたら、小西らは割を食った。
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(北京時事)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080821-00000115-jij-spo
8月21日13時12分配信 時事通信
<関連サイト>
なぜ人工雨を降らすのにヨウ化銀を用いるのですか?
http://www.gifu-net.ed.jp/kishou/bbs/ans/a0437.htm

■ 帰ってきた?金メダルガエル
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