悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、リンパ系の組織から発生する腫瘍(いわゆる“がん”)です。
リンパ腫はすべて悪性なのですが慣習で「悪性」という名前が頭につきます。
これは「悪性黒色腫」と同じで病名としては、患者さんにとっては余計なお世話の
病名です。

このリンパ系組織とは、ヒトの免疫システムを構成する組織で、リンパ節、胸腺
(きょうせん)、脾臓(ひぞう)、扁桃腺(へんとうせん)等の組織・臓器と、
リンパ節をつなぐリンパ管、そしてその中を流れるリンパ液からなりたっています。
リンパ液の中には液体成分とリンパ球(リンパ系組織を構成する主な細胞)が流れ
ていて、やがて血液と合流します。
リンパ系組織は全身に分布しているため、全身で発生する可能性があります。
そのために診断がつきにくい病気ということができます。

最初は首、腋(わき)の下、足のつけ根などのリンパ節の多い部位に、痛みを伴わ
ないしこりが触れるなどの症状がしばしばみられます。
これは局所症状といいますが、全身的な症状として、発熱、体重の減少、盗汗
(顕著な寝汗)を伴うことがあり、これらの3つの症状を「B症状」といい、
特に重要視されています。
リンパ節が腫れずに、この全身症状だけではなかなか診断がつきません。
場合によっては体のかゆみを伴うこともあります。その他、皮膚の発疹(ほっしん)、
しこり、いろいろな場所の痛みで気づくこともあります。
診断の多くは「生検」といって、組織を採取して病理学的な検査をすることに
よってつけられます。

以下は新聞記事です。

赤い発疹 実はリンパ腫

全身に紫外線を照射する装置と菅谷さん(東大病院で) 東京都内のC子さん(66)の
手や足に、赤い発疹(ほっしん)ができ始めたのは7年前のこと。
「はれもかゆみもなかった」と話す。

2年後、心配になって近くの病院の皮膚科を受診した。
炎症を抑える錠剤を服用すると一時的に症状が消えたが、再び悪化し、以前よりもひどく
なった。
そのうち、左足のふくらはぎに、うずらの卵程度の大きさの赤いふくらみができた。

ふくらみの一部を取り、組織を調べてもらった。その結果、医師から入院を勧められ、
入院手続き用の書類に「悪性リンパ腫の疑い」とあることに目に留めた。
「亡くなった芸能人もいたと思って、足がガタガタふるえた」

悪性リンパ腫は、血液に含まれる白血球の一種であるリンパ球のがん。
リンパ節が腫れるのが普通だが、皮膚組織に入り込んで増殖することがある。
「皮膚悪性リンパ腫」という。

新規患者数が年間約400人とまれな病気で、半数近くは、発疹ができるだけで、がんとは
言っても寿命に影響はしない。
だが、患者の十数%は数年で亡くなる。
がん細胞の増殖を抑える作用がある紫外線照射を主体とした治療を行う。

C子さんは、東大病院皮膚科で詳しく検査を受け、発疹だけではなく、腫瘍(しゅよう)が
できやすいタイプとわかった。
定期的な紫外線照射に加え、腫瘍ができた場合は、より強い効果がある放射線治療を行う。

C子さんは、顔や尻、かかと、ひじなどに計6回、入院や通院で放射線治療を受け、2週間
に1回、紫外線照射を続けている。
紫外線や放射線は、がん細胞を殺すと同時に、皮膚組織の中で、がん細胞を誘引したり、
増やす原因となる物質を減らす効果があると考えられている。

担当医の菅谷誠さんは「原因のリンパ球は体内に潜むため、完治は難しい。良好な状態を
維持するのが治療の狙い」と言う。

C子さんは、「完治しないと聞き、落ち込んだこともあるが、今は大丈夫」と語り、幸い
治療が良く効いており、症状は抑えられている。

皮膚悪性リンパ腫は、見た目がアトピー性皮膚炎と似ており、組織を調べないと診断できない。
もし、アトピーと誤診して免疫抑制剤を使うと、がん細胞を殺す免疫機能を抑えるため、
リンパ腫は悪化してしまう。

菅谷さんは「検査目的で皮膚を切るのをいやがる人も多いが、疑わしい場合は積極的に検査を
受けてほしい」とアドバイスする。

出典 読売新聞2008.10.17   http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi
版権 読売新聞社



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