水痘ワクチン

きょうは「水痘ワクチン」のお話です。

接種時期 について
1歳を過ぎれば接種できます。
一年中いつでも可能です。

費用について
任意接種で費用が発生します。
比較的高価なワクチンで7~8000円します。

副反応について
生ワクチンのため副反応は遅れて出ます。
接種後、1~3週後にときに発熱、発疹が出ることがあります。
また、まれには接種直後から翌日に、発疹やじんましん、発熱などの過敏症状が現れる
ことがあります。

水痘ワクチンの緊急接種について
あまり知られてないことですが、水痘の患者に接触した場合、72時間以内にワクチン
を接種すれば、60~80%程度は発病を防止できます。
万が一、発病しても軽く済ませることが出来ると言われています。
しかし家族内で発生した場合には、発病の防止は難しくなります。(発疹出現前1日
から感染すると言われています)
72時間を過ぎてしまった場合には、ガンマグロブリンの筋肉注射(抗体を直接注射)
すること以外に有効な方法はありません。
この場合も出来るだけ早く、96時間以内が望ましいとされています。
ただし、ガンマグロブリン血液製剤ですので将来的に何かの問題が出てくる可能性も
あります。
麻疹と違って、普通の人では水痘が重症化することはまずないので、ガンマグロブリン
の投与は普通行いません。
(一般的には免疫不全の子供や、水痘の免疫のない妊婦、分娩前後に水痘を発症した
母親から出来た新生児などにかぎられます。)
さらにガンマグロブリンの効果は約1ヶ月程度しか持続しません。

予防接種の効果について
水痘ワクチンの予防効果は、約70~90%程度と考えられています。
逆に言えば、10~30%は、注射をしていても水ぼうそうにかかる可能性があります。
私の経験では多くの方はかかっても軽くすみます。
よく水痘ワクチンはあまり効かないということを聞きますが実際は、インフルエンザ
ワクチンなどよりはるかに有効との印象を持っています。
また現在では、たとえ発病しても、抗ウイルス剤を早くから服用すれば、症状が比較的
軽くすませることもできます。

以下は新聞記事からです。

効果高く副反応もなし 帯状庖疹予防も期待

「みずぼうそう」ともいわれる水痘。
5歳までの幼児の大半がかかるといわれ、多くは発熱や発疹(ほっしん)が
見られる。
皮層に細菌感染症が起き、脳炎など深刻な合併症ではまれに死亡することも
ある。
藤田保健衛生大学医学部の浅野喜造教授(小児科学)は「水痘を起こすウイ
ルスが潜伏し、50歳代、60歳代になって免疫が低下した
時に帯状疱疹(ほうしん)を起こすことがある」と警告を発する。

--- 水痘ワクチンは日本生まれと聞いています。
「水痘はウイルスが空気感染する小児に多い疾患です。秋から春にかけて多発し、
感染力が強いもののひとつです。38度を超える熱が2~3日続き、水庖(すい
ほう=発疹)がでます。かゆいのでかきむしったため瘢痕(はんこん)が残る
こともあります」
 
「これを防ぐために開発されたのが、1974年に阪大微生物病研究会の高橋
理明さんたちによる岡株というウイルスを弱毒化した生ワクチンです。生後
12カ月以上の小児の皮下に接種します。世界保健機関(WHO)が認める世界
で唯一の水痘ワクチンで、2006年には80カ国以上の1600万人に接種
されています」

--- 子供なら一度はみずうそうにかかった方がいいと親から言われたことが
あります。
「水痘の抗体は多く人がもっています。全国の医療機関から毎年約25万人の
患者が報告されていますが、私たちはその数倍の患者が出ていると予測されて
います」
 
「健康な小児であれば症状は比較的軽くてすみ、10日もすれば体や顔にできた
発疹もひいて治癒した状態になります。ただ、脳炎や肺炎、心膜炎、皮膚の
感染症などを合併して重症化し悪くすると死亡することもあります。感染症
併発し指や手足の切断にいたるケ-スもありますから、小児では注意すべき疾患
のひとつです」

--- ワクチンの予防効果は顕著なのですか。
「日本では任意接種のワクチンとして1987年以来使われていますが、抗体
陽転率、いわばワクチンが有効な割合は90%以上と効果は高いといえます。
副反応もありません。ワクチンを接種していても15~20%の人は水痘にかかる
ことがありますが症状は軽くすみます」

「水痘ウイルスは人間にしか感染しません。理論的にはこれを駆逐することが
できます。米国などでは接種率は90%を超え、水痘が過去の病気になりつつ
ありますが、日本では30%ほどです。医療経済面でもワクチン接種はよいこと
が証明されています」

--- 水痘ワクチンは帯状疱疹を予防する効果もあるといわれます。
「小児の時に水痘にかかると、ウイルスが知覚神経節に潜伏することがあります。
それが精神的なストレスを含めて体の免疫力が衰えてくると再活性化し、知覚神経
に沿って体の表面に帯状に発疹を作る。これが帯状疱疹で帯状庖疹後疼痛は大変な
痛みを伴うことがあります。50歳代、60歳代の人に多く見られます」
「水痘ワクチンはこれを予防すると期待され、欧米では大規模な調査も行われて
います。例えば60歳以上の約3万8千人を対象にした米国の調査では、ワクチン
接種によって帯状疱疹の発症頻度を約半分にするこができ、帯状庖疹後疼痛が
66%減少しました。すでに米国では帯状庖疹の予防のために、このワクチンが
使われています。日本でも50歳過ぎの人に接種したら免疫が増強されたとする
報告があります」


抗ウイルス薬使う治療進む

水痘の原因になるのはヒトヘルペスウイルス(HHV)だ。
現在8種類が知られており、そのうちのHHV-3が水痘ウイルス。
人にがんを起こすことが知られているEBウイルス(HHV-4)やエイズの時によく
見られるカポシ肉腫を作るのはHHV-8だ。

水痘の予防にはワクチン接種が一番だが、近年はアシクロビル(一般名)をはじめと
するよい抗ウイルス薬が登場しており、水痘になってもこれらによる治療が進んでいる。
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出典 日経新聞・夕刊 2008.11.25
版権 日経新聞

<水痘および水痘ワクチン 関連サイト>
水痘ワクチンとQ&A
http://www.harenet.ne.jp/senohpc/vaccin/variceQA.html
乾燥弱毒生水痘ワクチン
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/630144_631340ED1022_1_09.pdf
(添付文書のPDFです)
IDWR: 感染症の話 水痘
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g2/k01_24.html

イメージ 2


2008.11 撮影 赤坂プリンスホテル ロビー


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