糖尿病と向き合う・ブドウ糖負荷試験

糖尿病の診断の際に行われる「ブドウ糖負荷試験」についての新聞記事からです。

糖尿病の診断・治療の目安となる血糖値にはいくつか種類がある。
慢性的な高血糖状態だけでなく、食後の急上昇も血管や膵臓に大きな負担となる。
専門家はブドウ糖負荷試験と呼ぶ血糖値検査を推奨する。

血糖値「食後急上昇」 空腹時検査だけでは見逃しも

健康診断で最も一般的な血糖値は「空腹時血糖」。
普通、前日夜から何も食べない状態で午前中の血液検査に臨む。

神奈川県の高木洋子さん(仮名、48)も、2~3日前から食事を節制し
て健診に臨んできた。
空腹時血糖は毎回、血液1デシリットルあたり105ミリグラム前後と、やや高めだが
正常範囲で推移していた。
しかし、お酒を飲んだり食べ過ぎたりすると、のどがひどく渇き、尿が泡立つ。
心配になって糖尿病専門外来を受診した。
 
そこで受けたのが「ブドウ糖負荷試験」。
ブドウ糖を溶かした水を飲み、30分後、1時間後、2時間後と血糖値を測る。
1時間後、2時間後と時間がたつにつれ急上昇、 220ミリグラムを越えた。
「糖尿病です 」との診断に、高木さんは「健診で異常はないと信じていた。とても
ショックだった」と話す。
 
「空腹時血糖だけをみていては、隠れ糖尿病を見逃すことが多い」。
東京大学の門脇孝教授はこう指摘する。
空腹時血糖はインスリンが比較的分泌されている糖尿病初期では、前日の食事内容など
によって大きく左右されるからだ。

過去1-2カ月の血糖値の平均を示す「グリコヘモグロビン(HbA1c、平均血糖)」
を実施する健診もあるが、これでも不十分と専門医らは指摘する。
肥満が原因で糖尿病になる場合、初めはインスリンの作用能力が落ち(インスリン抵抗性、
食後の血糖値だけが高くなることがあるからだ。
急激な変化で血管に負担がかかっていても平均血糖では分かりにくい。
見過ごしてしまうことも少なくない。
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最近の研究で、平均血糖がそれほど高くない人でも、食後2時間血糖が200ミリグラム
に達すれば網膜症が出始めることも判明した。
「糖尿病の診断がついた時点で、膵臓インスリン分泌機能は5~8割減との報告もある」
(門脇教授)

日本糖尿病学会では、「早期発見が重要」との立場から、治療指針などでブドウ糖負荷
試験の実施を呼び掛けている。

糖尿病一歩手前の「境界型(空腹時血糖が110~125ミリグラム、または、平均
血糖5.5~6.0%)」の人には「知らない問に糖尿病に移行していることも多い。
できるだけ受けてもらいたい」(門脇教授)。
「正常高値(空腹時血糖100~109ミリグラム、または平均血糖5.2~5.4%)」
の人でも家族に糖尿病患者がいる人や高血圧の人にすすめている。
 
これまで糖尿病の合併症は、高血糖状態が慢性化することで網膜症など末梢神経の障害
が起きると指摘されてきた。
食後高血糖の変化の差が、動脈硬化心筋梗塞などの新たな合併症のリスク要因にも
なるとわかってきた。

順天堂大学の河盛隆造授らは高血糖によって血管の細胞に血球が接着し、動脈硬化
引き起こすという仕組みを研究で明らかにした。
さらに「食後に血糖値が異常に高くなるのが、糖尿病の最初のサイン。
高血糖膵臓細胞の酸化ストレスが上昇し、インスリン分泌も下がる。
さらに血糖値を上げるという悪循環になる」という。

「血糖値が高め」「境界型」などと指摘を受けたら、専門医のいる病院を早めに受診し、
正確な血糖値を知ろう。
ブドウ糖負荷試験によって、隠れ糖尿病の早期発見につながるかもしれない。

出典 日経新聞・夕刊 2008.11.25
版権 日経新聞

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<関連ブログ>
糖尿病患者向け、自分の血糖値を監視可能なコンタクトレンズ
http://blogs.yahoo.co.jp/nietzsche_rimbaud/42073672.html
血糖値抑制に肝臓が関与 糖尿病の新治療法に道
http://blogs.yahoo.co.jp/dokutorukachian/20522136.html

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