麻疹(はしか)、「排除」したはずがなぜ流行?

はしか、「排除」したはずがなぜ流行?

沖縄で流行しているはしかが、愛知や神奈川、東京にも飛び火し、4都県で患者数が100人を超えた。
日本は2015年にはしかの国内流行を抑え込む「排除」を達成したが、なぜ感染が広がっているのか。その予防法は?

すでに感染100人超
沖縄で最初に感染者が確認されたのは3月20日。
台湾からやって来た30代男性で、発症した状態で商業施設や飲食店を観光で巡り、従業員やその家族らへと感染が広がっていった。
 
愛知では、沖縄に旅行した10代男性の感染が4月11日に判明した。
男性は診断までに、名古屋市内の病院など県内の三つの医療機関を受診。
医療機関の職員や患者を中心に感染が拡大した。
 
川崎市や東京都町田市でも5月8日までに、沖縄からやってきた20代女性などの感染を確認。
同日時点で、沖縄に端を発したはしかの患者数は、公表分だけで沖縄92人、愛知16人、神奈川・東京2人の計110人に上っている。
 
はしかはウイルス性の感染症で空気中のウイルスを吸い込むだけでもうつる。
約10日の潜伏期間後、熱や発疹が出る。特効薬はない。
肺炎や脳炎などとの合併症が起こることもあり、約1千人に1人は命を落とすと言われている。
 
かつては日本も年間約20万人の患者がいたとされる。
08年には、子どもを中心に患者が1万人を超え、休校が相次いだ。
しかし、予防接種の普及で、15年に患者が年35人まで減少。世界保健機関(WHO)は「地域性流行が1年以上ない状態」など、日本がはしかの「排除」を達成したと認定した。

帰国者らから拡大
ただし、その後も、毎年100人台の患者が出ている。
主な原因は、タイやインドネシアなどはしかが排除されていない国からの帰国者や訪日客が感染源となる「輸入はしか」だ。
 
昨年は、インドネシアから帰国した20代男性から、山形県を中心に7都県の約60人に感染が広がった。今回の流行の感染源となった台湾の男性も、沖縄への旅行前にタイに行っており、そこで感染したとみられる。
 
大流行を大火事とすると、今回はまだぼや程度。ワクチン接種が2回の世代が増えて大流行の可能性は低いが、食い止める努力が大切だ。
1年以上感染が続けば、WHOからはしか「排除」の認定を取り消される可能性もある。

まずワクチン接種
対策のポイントは二つだ。
まずはワクチン接種。
はしかのワクチンは1978年から定期接種が始まり、2006年から回数が2回に増えた。
2回接種していれば、多くは予防できるとされる。
 
今回の感染者も接種歴「無し」「1回」「不明」がほとんどだ。
子どもは定期接種を必ず受け、大人は母子手帳を確認し、はしかにかかっておらず接種歴が0回の人は任意接種を」と呼びかける。
ただし、妊婦などはワクチンを打てない。
その場合、家族など周囲の人がワクチンを打って、感染を防ぐことが大切だ。
 
二つ目は、医療機関の受診方法だ。
愛知や東京では、医療機関で感染が広がった。
発熱や発疹などはしかと似た症状が出たら医療機関に事前に連絡する。受診方法を確認し、ほかの来院者や医療従事者に感染を広げないようにすることが重要だ。

参考・引用
朝日新聞 2018.5.11