「風疹」が流行中

関西中心に「風疹」が流行中 20~40代男性はご用心

風疹が近畿地方を中心に流行している。
今年に入ってからの全国の患者数は、すべての患者数を調査し始めた2008年以降の同時期で最多となった。特に20~40代の男性患者が多い。
風疹は妊娠初期の女性が感染すると、生まれてくる子供に先天性の心臓病や難聴などを引き起こす可能性がある。
専門家は「家族間や職場での感染拡大を防ぐために予防接種を受けてほしい」と呼びかけている。

「どこでワクチン接種ができるのか」。
兵庫県疾病対策課には、このところ問い合わせの電話が相次いでいる。
同県は1月~5月27日までに68人が風疹にかかった。
都道府県別で最も多かった。
若い男性が発症するケースが多く、「ほとんどの人がワクチンを接種した経験があるか不明」(同課)だという。

■ワクチン接種、開始時は女子限定
国立感染症研究所によると、1月~5月27日に全国で風疹に感染したのは219人。
前年の同時期の1.5倍に上る。
兵庫県のほかに大阪府京都府など近畿が中心だが、東京都も患者が多い。
このため厚生労働省は全国に広がる恐れもあるとして、自治体に対し予防接種の呼びかけや、妊娠適齢期の人への情報提供を促す通知を出した。

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感染研の感染症情報センターの多屋馨子室長は「年間の患者数をみると、11年は10年の約4倍だった。風疹の流行は2~3年続き、特に2年目の流行が大きい傾向がある」と指摘する。
今年の流行では成人男性の発症が目立つ。
全体の約7割が男性で、このうちの7割が20~40代だ。

風疹はウイルス性の感染症で、かつては子供の病気とされていた。
1976年までは国内でワクチン接種は実施されず、子供の頃に感染することで免疫を獲得する例が多かった。
77年に公費負担の定期接種が始まったが、将来妊娠する可能性のある女子中学生に限定していた。

その後、男女とも対象になり、95~05年度までは生後12カ月から90カ月未満と中学生が接種することになった。
06年度からは1歳児と小学校入学前の2回接種となっている。
制度変更に伴う措置として、08~12年度までは中学1年や高校3年の年齢でも接種が受けられる。

今年の流行で発症が多い30代後半~40代の男性は、ワクチンの定期接種がなく、接種の機会が少なかった世代にあたる。
20代後半~30代前半は接種率が低い。
また、かつては数年ごとに大きな流行があったが、05年以降はなく、風疹に自然感染する機会も少なかった。
「免疫を持たない人が多く、感染につながっている」(多屋室長)。
11年の厚労省の調査でも、30~50代前半の男性の5人に1人は免疫を持っていなかった。

■妊娠初期の女性は特に注意
風疹にかかると発熱や発疹、リンパ節の腫れなどがみられるが、症状は比較的軽い。
まれに脳炎などを併発したり、ひどい関節痛に悩まされたりすることもある。

最も怖いのは、妊婦が感染することで胎児に先天異常が生じる「先天性風疹症候群」だ。
妊婦を通じて胎児がウイルスに感染すると、臓器を作るための遺伝子の働きなどを妨げられ、正常な臓器や器官ができなくなるという。
このため、生まれる子供に心臓病や難聴、白内障などが起こる。
発生頻度は妊娠1カ月以内だと50%以上、2カ月以内で20~30%で、妊娠初期の感染に特に注意する必要がある。

風疹ワクチンが開発されたのも、約50年前に米国で風疹の大流行があり、先天性風疹症候群の子供が多数生まれたのがきっかけだ。
風疹には特効薬がないため、川崎医科大学岡山県倉敷市)の寺田喜平教授は「次の世代を守るためにも、なるべく多くの人がワクチンを受けるのが望ましい」と話す。

特に子供を持とうと考えている夫婦やカップルなどは、まずはお互いに予防接種の有無を確認しよう。
確実なのは自身の母子手帳の記録だ。
また、医療機関で血液検査をすれば、感染やワクチン接種の形跡である「抗体」の有無を知ることができる。

現在の主流は麻疹・風疹混合(MR)ワクチンで、定期接種以外で打つ場合は費用は自己負担となる。
接種した場合は、2カ月ほどは避妊することも忘れないように。既に妊娠中の人にはワクチンを打てないので、「マスクをして、うがいや手洗いをするなど感染予防対策を徹底することが大切だ」(寺田教授)。

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■海外行く前に予防を
海外へ出かける人も注意したい。
予防接種の有無を調べ、必要ならワクチンを打つよう心がけよう。
東南アジアなどには風疹ワクチンを定期接種していない地域があり、感染する可能性もある。
実際に海外で感染した人が原因となり、帰国後に職場で集団感染した例も出ている。
接種可能な医療機関が分からない場合は、市町村の保健所などに問い合わせれば、教えてもらえる。

川崎市衛生研究所の岡部信彦所長は「20~40代の働き盛りの男性は自分を守ると同時に、妻や将来の子供、職場の同僚などを感染から守るという意識を持ち、予防接種をしてほしい」と訴えている。
(西村絵)

出典 日経新聞・Web刊 2012.6.8
版権 日経新聞

<私的コメント>
文中にはあまり書かれていませんが、大人が風疹にかかると結構症状が重いのが特徴です。
これは結構皆さんもご存知のことです。
当院でも開業当初(といっても20年近く前)、数人ですが大人の風疹を診察しました。
当時流行していたようですが、報道はされていなかったようです。
高熱、頭痛、関節痛、目の充血、倦怠感が主体でした。



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