更年期とホルモン補充療法

ホルモン補充療法 「更年期」改善に再評価

HRTで改善された症状
■平成14年7月、更年期症状の治療法のひとつ「ホルモン補充療法(HRT)」に関する臨床試験の結果が世界の医療界に衝撃を与えた。
米国の大規模臨床試験「WHI(ウィメンズ・ヘルス・イニシアチブ)」が約1万6000人の臨床データをもとに、HRTで「乳がんの発症や心血管障害のリスクが高まる」とする報告を発表したからだ。
 
■当時、不老長寿の「夢の治療」とまでいわれたHRT。
報告を境に、米国を中心に実施を控える医師が相次いだ。
 
■更年期症状は閉経前後の約10年間に表れることが多い。
老年期に向け体が変わる時期で、卵巣機能などが低下し、女性ホルモンのエストロゲンが急減する。
HRTはエストロゲンなどを薬で補い、のぼせや抑鬱(よくうつ)症状といった更年期症状を改善する療法だ。
骨粗鬆(こつそしょう)症や動脈硬化症、認知症などを予防する効果もあるとされる。
 
■「報告以降、日本でも敬遠する医師が増えた。その結果、本当に必要としている患者にまで使われなくなった」。
日本更年期医学会理事長で弘前大産科婦人科教授の水沼英樹医師は当時をこう振り返る。
 
■ただ、WHI報告をめぐっては、当初から疑問を投げかける医療関係者が多かった。
臨床試験の対象者の約7割が60歳以上と高齢で、太った人が7割を占めるなど、元来、健康リスクを抱えた人が多かったためだ。
WHIのその後の解析で、閉経直後からHRTを始めた女性では動脈硬化症のリスクが減少し、投与から5年未満の女性では乳がんのリスクがほとんど増えないなど新たな事実も判明した。
HRTの効果は現在、世界的に見直されつつある。
 
■国内でも、日本産科婦人科学会と日本更年期医学会が、2年間を費やし、さまざまなデータをもとにHRTの指針案をまとめた。
4月に公表される予定の指針案には、60歳以上の女性に初めて投与する場合には慎重に行うこと、投与期間が5年以上に及ぶ場合は乳がんのチェックを徹底すること
-などを盛り込んだ。
 
■水沼医師は「投与開始年齢や投与法、量を考慮すれば、リスクよりも治療効果の方が高い」と語る。
「閉経後の女性の寿命は長くなった。生活の質を高めるためにも、HRTは女性にとって重要な医療の選択肢です」

更年期症状に悩む女性の電話相談を実施し、調査やフォーラム開催などを行ってきたNPO法人特定非営利活動法人)「メノポーズを考える会」の三羽(みわ)良枝理事長はこう話す。
 
同会が16年に実施した調査(321人回答)によると、HRTを受け、改善された症状は、ホットフラッシュ(ほてり、多汗、のぼせ)が54・5%でトップ。うつ気分(21・5%)、頭痛など(17・8%)と続いた。HRTを受けて症状が改善し、「続けたい」とする女性は86%にのぼった。
http://sankei.jp.msn.com/life/body/090306/bdy0903062229004-n1.htm
出典 産経ニュース 2009.3.6
版権 産経新聞

<関連サイト>
ホルモン補充治療法とは
http://kounenki.csaff.com/05/ 
HRTって何でしょう?
http://www2u.biglobe.ne.jp/~drt/konenki_web_nm/hrt/hrt.htm
HRTについての最近のデータと私の考え方
http://www2u.biglobe.ne.jp/~drt/konenki_web_nm/hrt/hrt_nih.htm
HRT リスクと副作用
http://www.meno-sg.net/iryou/hrtqa3.html
米国の乳癌罹患率低下の一因はHRTの減少
WHI試験中止後の追跡調査などで裏付け
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/nejm/200902/509549.html

<番外編>
乳がん抑制するタンパク質特定
http://www.business-i.jp/news/venture-page/news/200902200066a.nwc

筑波大先端学際領域研究センターの柳沢純教授らのグループは「CHIP」と呼ばれるタンパク質が乳がんの増殖と転移を抑制していることを突き止め、英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー電子版(2009.2.8)に発表した。

■柳沢教授は「このタンパク質の量を増やしたり活性化させたりする技術を開発すれば、乳がんの転移を防ぐ治療薬の開発につながる」と期待している。

■CHIPはユビキチンリガーゼと呼ばれる酵素の仲間。
これまで特定のタンパク質の分解を促進する機能は知られていた。

■グループは、患者の乳がん組織の中でCHIPが少ないほど、がんが悪化していることを確認。

■研究グループは正常細胞と乳がん細胞を詳細に比較し、CHIP量ががん細胞では正常細胞の1割程度まで減少していることに着目した。

■さらに、ヒトの乳がん細胞内のCHIPの量を増減させてマウスに移植する実験では、CHIPの量を減少させた乳がん細胞は大きな腫瘍(しゅよう)を形成して盛んに肺など他の臓器に転移するが、CHIPの量を増やした乳がん細胞は腫瘍の形成も転移も大幅に抑制されることを突き止めた。

■このCHIPの働きを分子レベルで解析したところ、乳がんを悪化させるタンパク質を分解してその活動を抑制し、増殖や転移を防ぐことが分かった。

■CHIPは乳腺以外にも存在することから、ほかのがんでも増殖や転移を抑える働きがある可能性が考えられるという。

出典 Fuji Sankei Business i. 2009.2.20(一部改変)

<コメント>
乳がんは再発や転移の多いがんとして知られています。
また死因の多くは転移です。
さらに、転移は触診やマンモグラフィーで見つけられない時期、 がんが非常に小さな状態で殆んど始まっているという恐ろしい話もあります。

転移をなんとか食い止める。
これは「がん」一般に当てはまる命題でもあります。

<自遊時間>
昨夜のNHKダーウィンが来た!」は傑作でした。
題して「びっくり七変化 あなた本当にタコ?」。
ヒラメやウミヘビやミノカサゴにイソギンチャクなど10種以上の生きものに変身するタコ、その名もミミックオクトパス。
もし自分が変身している本物の相手に会ったらどうするのかというエピソードも出ていました。
http://www.nhk.or.jp/darwin/program/program139.html

ミミック・オクトパス
http://www.konesite.com/noise/2hospital/mimic.html
やたらと擬態しまくる忍者タコ ミミック・オクトパス
http://yasai0142.livedoor.biz/archives/50609964.html
(動画でみることが出来ます)
ミミックオクトパス
http://kawa3104.at.infoseek.co.jp/mimikkuokutopasu.html
ミミックオクトパス (擬態ダコ)
http://ameblo.jp/oldworld/entry-10004543263.html

<コメント>
たまたまなぜか昨夜はタコを食べて一杯やりながらこの番組を観ました。
(昨日の3時のおやつはその日に買ったイカくん。イカ・タコ三昧の一日でした)


<きょうの一曲>
Tom Jobim - One Note Samba
http://www.youtube.com/watch?v=VZegHk4qDaQ&feature=related

読んでいただいて有難うございます。
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