尿もれ

高齢になると、さまざまな尿トラブルに悩まされる人が多くなります。
年のせいとあきらめる人もいますが、症状の改善に体操や薬が役立つことがあります。



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(一部改変)

男女問わず多くの人が悩む「尿もれ」。
自分の意志とは関係なく、思いも寄らぬ場所で漏れてしまう辛い症状ですが、頼みの綱の医師にさえ辛さを理解してもらえないこともあるなど、悩む本人を囲む現実は明るくありません。
尿もれは単に加齢のせいではなく、れっきとした病気です。
しかも、尿もれを完治させる方法まで存在するのです。

「尿もれ患者の悲しき実態」

3人の尿もれ患者の方々に悩みを告白してもらいました。

Aさん: 60歳の時から尿もれが徐々に悪化。ある時、街中でザーッと漏れた。
以来、どこで漏れるか分からず、徐々に外出の機会を失うように。自分はもうダメなんじゃないかと思い、「自殺したい」と口にするほど悩む。

Bさん: 子どもの運動会で走っている時に急に漏れ、ズボンがびしょぬれに。受診した泌尿器科で「それならば、走らなきゃいい」と言われ、がくぜんとした。医師を含めた周囲の無理解を痛感。

Cさん: 友達と旅行する機会が激減、付き合いが悪い、と言われてしまう。家族にさえ相談できない、辛い心境を告白。誰にも相談できず、完全に行き場を失った。

この3人の場合、咳をする、階段を上り下りする、走る、重い物を持つ、笑う、歌うなど、腹圧がかかったときに漏れてしまいます。
また、漏れたときの「におい」も非常に気になると言います。

尿漏れにはおもに2タイプある
グラグラ尿道:
正式には「腹圧性(ふくあつせい)尿失禁」。女性がほとんど。
Aさん、Bさん、Cさんもこの症状
ぼうこうが暴走:
正式には「過活動ぼうこう=切迫性尿失禁」。
男女ほぼ同数

尿もれ患者の9割近くが上記のいずれかのタイプに当てはまります。
腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁の両者を一度に患う混合性尿失禁の患者さんも多く存在します。

「発見!これがグラグラの真犯人」

グラグラ尿道の権威である医師を訪ねました。
この医師が見せてくれたのは、ぼうこうと尿道を撮影したX線画像です。
正常な人は、咳をしたり、いきんだりして腹圧を加えても、尿道の位置は動きません。
これに対して、尿もれを抱えるAさんの場合は、腹圧がかかった際に尿道の位置が大きく動いてしまうことが、X線画像で明らかになりました。
尿道の位置が変化することこそが、尿もれの最大の原因なのです。

なぜ、尿道が動いてしまうの?
グラグラ尿道尿道が動くのは、ぼうこうの下の部分が下がってしまうためです。ぼうこうが下がってしまうことで、これに接している尿道もつられて動いてしまうのです。では、なぜ尿道が下がると尿が漏れるのでしょうか?
尿道が下がると、それと同時に尿道が開いてしまいます。
そのために尿が漏れてしまうのです。尿道が下がると開く、このこと自体は避けることはできません。

なぜ、ぼうこうが下がっちゃうの?
ぼうこうを下から支えている骨盤底筋という筋肉群があります。
出産、肥満、加齢などの理由で、この筋肉群が緩んでしまうと、重力の関係でぼうこうが下がってしまうのです。
骨盤底筋は元々、人間に尻尾がある時代、骨盤底筋は尻尾を動かす役割をしていたと考えられています。
人間に尻尾がなくなり、加えて直立二足歩行になったことで、骨盤底筋にそれまで以上の負荷がかかるようになったと言われています。


「大事な筋肉しまっていこう」

骨盤底筋を鍛えるという体操があります(骨盤底筋体操)。
東京都老人総合研究所が行った最新の実験によると、グラグラ尿道が原因の尿もれ患者である、70歳以上の被験者70人のうちの半分以上が、この体操を3ヶ月続けることで尿もれが完治したというのです。

※体操の詳しいやり方は実習コーナーで紹介します。
東京都に住む、Dさんも効果を実感している一人です。
成功の一番の秘訣は、続けることです。
Dさんは、お湯を沸かす時やテレビを見ている時といった、わずかな時間をうまく見つけては体操を繰り返しているのです。
グラグラ尿道に関して体操で良くなる人は、すべての年齢層でカウントすると全体の半分以下です。
以下は残りの半分以上の患者を救う最新の方法です。

「突如くるモーレツ尿意そのワケは?」

ここからは、“ぼうこうが暴走する”という、もうひとつのタイプの尿漏れについてお伝えします。
東京都のEさんは、10年前から突然やってくる猛烈な尿意と頻尿に悩んでいました。
それは、水に触れただけで尿意を感じたり、トイレに行った10分後に再び尿意に襲われる不思議な症状です。
研究者によると、これは「過活動ぼうこう」と呼ばれる新型の病気であると言います。
ぼうこうが勝手に縮む、いわば「ぼうこうの暴走」が原因の
症状なのです。
X線写真を見ると、通常のぼうこうは400ミリリットルをラクラクとためられるのに対し、過活動ぼうこうの場合は20ミリリットルしかたまっていないのに尿もれを起こしていました。

「過活動ぼうこう」とは?

「尿の回数が1日8回以上、かつ、ガマンしがたい尿意(=尿意切迫感)が週1回以上あること」が条件とされています。
日本での推定患者数は、およそ810万人です(日本排尿機能学会による)。
ぼうこうに尿がたまっていないのに、何の前触れもなく激しい尿意に見舞われ、尿もれを伴う場合もあります。およそ3分の2が原因不明です。
これは「水分の摂り過ぎ」とは関係なく起こる症状です。


「ぼうこう管理術は“オシッコのガマン”」

過活動ぼうこうに悩んでいたEさんは、「ある方法」によって症状を克服しました。
排尿した時間や量を記録する「排尿日誌」を見ると、その変化は一目瞭然。
2年前には1日10回も行っていたトイレの回数が、現在では半分になっているのです。
Eさんが過活動ぼうこうを克服した秘策は、“オシッコのガマン”だと言います。
すなわち、ぼうこうに「本来の容量」を覚え込ませるのです。
まず、排尿日誌をつけて1回あたりの尿量をチェックします。
ぼうこうの最大容量を把握し、しっかりと尿をためてからトイレに行くクセをつけるようにすると、次第に尿の回数は減っていき、尿もれも減ってくるのです。
※効果には個人差があります。

※ぼうこう炎など、ガマンが適さない場合もあります。

水の飲み過ぎに注意!
最近、脳こうそくや心筋こうそくの予防として、飲水量を極端に増やしている方が多くいます。
個人差はありますが、理想的な尿量は1日およそ1500ミリリットルです。
一般的に言って、2000ミリリットル以上は出過ぎです。
排尿日誌をつけることで、単なる水の飲み過ぎか否かが判断できます。
※尿量をはかるための容器は市販されている一般的な「計量カップ」で問題ありません。
計量カップや排尿日誌は、泌尿器科で準備してもらえる場合もあります。

「抗コリン薬」について
過活動ぼうこうの治療に効果が期待できます。
まずは抗コリン薬を服用し、ぼうこうをリラックスさせます。
その上でぼうこう訓練を行うと、「オシッコのガマン」に不安な方も安心して取り組めます。

※「オシッコのガマン」は、無理は禁物です。
休みの日に自宅で行うなど、安心して取り組める状況で始めるとよいでしょう。

実習コーナー「骨盤底筋体操」

骨盤底筋は年齢に関係なく鍛えることが可能です。
骨盤底筋以外の筋肉に力が入ると、効果が下がります。
お腹、お尻、太ももの筋肉に力が入っていないことを確認しながら行いましょう。

椅子に座って
膣と肛門の周りの筋肉を締め、お腹の中に引っ張り上げるように行います。
このとき、膣と肛門が椅子から浮くように実感できるとよいでしょう。
1. 速い動き(2秒締めて4秒休める)を5回繰り返す。
2. 遅い動き(5秒締めて10秒休める)を5回繰り返す。
以上が1セットです。

立つ姿勢で
基本的には、椅子に座って行う時と同様に膣と肛門の周りの筋肉を締め、お腹の中に引っ張り上げるように行います。
1.速い動き(2秒締めて4秒休める)を5回繰り返す。
2.遅い動き(5秒締めて10秒休める)を5回繰り返す。
以上が1セットです。

椅子の背もたれなどを支えにすると、効果が上がります。

寝る姿勢で
基本的には、椅子に座って行う時と同様に膣と肛門の周りの筋肉を締め、お腹の中に引っ張り上げるように行います。
1.速い動き(2秒締めて4秒休める)を5回繰り返す
2.遅い動き(5秒締めて10秒休める)を5回繰り返す。
以上が1セットです。

ひざを立てて行うと効果が上がります。

体操のポイント
以上のポーズを組み合わせながら、目標は1日10セット。
1セットごとに違うタイミングで行うと効果が大きくなります。

最も重要なことは、継続して行うことです。
トイレに行った後には必ず行うなど、毎日の生活の中で習慣化すると長続きしやすいでしょう。


<参考記事>
NHKテレビテキストきょうの健康 2009.5

■排尿障害には畜尿障害と排出障害の2つがあります。
畜尿障害・・・「トイレが近い(頻尿)」「尿が漏れる(尿失禁)」
排出障害・・・「尿が出にくい(排尿困難)」「排尿し終わっても尿がまだ残っている感じがある(残尿感)」「尿が出し切れないためにトイレが近い(頻尿)」