C型肝炎とインターフェロン治療

C型慢性肝炎の薬物治療は、その目的によって大きく2つに分けられます。
まずは、肝臓を保護して病気が進むのを抑える治療(対症療法)です。
そしてもうひとつは、肝臓病の原因の1つである肝炎ウィルスを体内から排除することを狙ったインターフェロン(IFN)療法(原因療法)です。
後者のインターフェロンは次のような目的で行われます。

①ウィルスを排除すること
②GOT、GPT値が改善する(肝障害が落ち着く)こと
③肝臓の線維化を改善する(肝がんへの進行を遅らせる)効果を期待すること

2010.2.16の新聞に、インターフェロンの治療を考えてみえる方に役立つ内容の載った記事がありました。


##C型肝炎インターフェロン治療 高い治療費・長い治療期間
全国で年間3万人余が亡くなる肝がん。その8割がC型肝炎ウイルス感染が原因とみられている。
肝がんを予防するには、肝炎ウイルス検診を受け、感染していたら適切な治療を受けることが重要だ。1月には肝炎対策基本法が施行され、対策は国の責務と明示された。しかし、治療などに課題も多い。
編集委員・浅井文和)

#入院せずに外来で対応も

「肝がんになるのが怖かったので治療を続けました」

C型肝炎患者で三重県に住む60代の主婦Aさんは1年前までペグインターフェロンの注射と抗ウイルス薬による治療を受けた。
治療後の検査で無事、C型肝炎ウイルスが消えたことが確かめられた。

ここまでの道のりは長かった。
肝炎ウイルス感染の原因と考えられるのが30年以上前に受けた輸血。
1990年代前半からインターフェロン治療を受けてきたが、ウイルスは消えなかった。
治療が改良されるたびに挑戦し、今回が8回目の治療だった。

昔のインターフェロン治療は副作用が苦しかった。
体がだるく、熱も出た。
「つわりとインフルエンザが同時にきたみたい」と感じた。
ただ、今回のペグインターフェロンは副作用はひどくなく、治療を終えることができた。

C型肝炎の治療薬としてインターフェロンが承認されたのは92年。
それまでは肝炎の症状を抑え肝臓をいたわる治療が主流だったが、インターフェロンが登場して、体からC型肝炎ウイルスを排除する「完治」が目標になった。

しかし、当初はウイルスが消える患者の割合(著効率)が低かった。
Aさんはウイルス遺伝子が治りにくいタイプでウイルス量も多い難治例。
この場合の著効率は5%程度だった。しかし、2004年に改良型のペグインターフェロンと抗ウイルス薬のリバビリンとの併用療法が承認され、治療成績が改善された。
Aさんのような難治例でも著効率は50%程度になった。

C型肝炎ウイルスは血液を通して感染する。
過去の輸血や血液製剤、注射器の使い回しなど不適切な医療行為などによって広がり、患者・感染者は全国に150万~200万人いるとみられる。
長い年月のうちに慢性肝炎から肝硬変、肝がんに進行する。

インターフェロン治療で進行を防ぐことができるが、医療費が高額になるのが壁になっていた。
08年度から公費助成が始まり、自己負担の限度額が所得に応じて月1万~5万円になった。
当初目標は年10万人がこの治療を受け、将来の肝がんを大幅に減らすはずだった。
ところが、厚生労働省によると、08年度にこの助成制度を使った人は約4万5千人と目標の半分だった。

治療の障害になるのは医療費だけではない。
治療期間が半年から1年半かかる。注射を受けるために入院や週1回の通院が必要だ。
国立病院機構長崎医療センターの八橋弘・治療研究部長らの調査で、インターフェロンを勧められて断った患者97人に理由を尋ねたところ、「忙しく入院や通院ができない」が35%、「副作用が心配」が28%だった。
特に40代、50代では「多忙」の理由が多かった。

滋賀県に住む40代の会社員Bさんは、勤務先近くの診療所で週1回、勤務時間後の午後6時にペグインターフェロンの注射を受けている。

肝機能検査値が悪くなってきて、いずれ治療しなければならないと思っていたが、決心がつかなかった。
病院から「最初の1~2週間は入院が必要」と言われていたが、仕事を休めなかった。
入院せずに外来で治療できる診療所を見つけ、説明にも納得して治療を始めることにした。

Bさんの治療に当たる「みえ消化器内科」(津市)の垣内雅彦院長は肝臓専門医。
入院せずに治療を受ける患者がほとんどだが、副作用には十分に気をつかう。
「何か起きたら携帯電話で連絡がつくようにして、必要ならば入院できるように病院とも連携している」と語る。

国立国際医療センター国府台病院(千葉県)の正木尚彦・肝炎情報センター長らは全国の病院・診療所14カ所の協力を得て、インターフェロン治療で最初に入院する場合と、外来だけで治療する場合を比べた。
954人の患者報告を分析したところ、どちらも効果は変わらなかった。
正木さんは「専門の医師が注意深く治療すれば外来だけで治療可能。患者にとっても治療が受けやすくなる」という。

●地域で対策に温度差
昨年、国会で成立した肝炎対策基本法が1月から施行された。
患者が適切な医療を受けられ、経済的な負担が軽減されるように国と地方公共団体が必要な施策を講ずると明記している。

現在、国会で審議中の新年度予算案では、厚労省関連の肝炎対策関連予算は236億円。
今年度(205億円)に比べて15%増だ。
(1)インターフェロン治療への医療費助成の自己負担限度額が所得に応じて月1~5万円だったのが月1~2万円に
(2)インターフェロン治療で効果が十分でなかった場合に2回目も助成を認める
(3)抗ウイルス薬を使ったB型肝炎治療も助成対象に追加、
などが案に含まれる。
B型肝炎治療では、抗ウイルス薬を飲み始めると一生飲み続けなければならず、医療費負担が重かっただけに、患者が助成を強く求めていた。

ただ、課題も多い。患者団体の「東京肝臓友の会」事務局長、赤塚堯さんは「肝炎ウイルス検診の促進や、患者実態調査が必要。医療の地域格差も深刻」という。
検診を受けていなくて感染に気づいていない人が相当いると考えられる。
また、治療が必要な患者がどれくらいいるのかも正確につかめていない。
大都市に比べて地方では専門医が少なくインターフェロン治療が受けにくい。都道府県によって肝炎対策の温度差もある。

広島県は肝炎対策に早くから取り組んできた。
検診で感染者と判明した人が医療機関を受診して治療に結びつくように、病気について詳しく説明したり、独自の説明パンフレットを渡したりしている。

それでも、06年度まで5年間の検診で、感染者と分かった人のうち医療機関を受診した人は6割。
現在、感染が分かった人がその後どう受診しているかの実態調査を進めており、課題を探り出す。


●肝疾患診療連携拠点病院
2009年11月現在、全国61病院、各病院に患者相談窓口がある
(大学名は大学病院、東京都・和歌山県・福岡県は未指定)
北海道大、旭川医大、札幌医大弘前大、岩手医大、東北大、秋田大、市立秋田総合病院、山形大、福島県医大日立総合病院茨城県日立市)、東京医大茨城医療センター、自治医大、獨協医大、群馬大、埼玉医大千葉大横浜市立大市民総合医療センター、聖マリアンナ医大、北里大東病院、東海大、新潟大、富山県立中央病院、市立砺波総合病院(富山県砺波市)、金沢大、福井県済生会病院、山梨大、信州大、岐阜大、順天堂大静岡病院、浜松医大名古屋市立大、三重大、滋賀医大、大津赤十字病院、京都大、京都府医大、関西医大滝井病院、近畿大、大阪大、大阪市立大、大阪医大、兵庫医大奈良県立医大鳥取大、島根大、岡山大、広島大、福山市民病院、山口大、徳島大、香川県立中央病院、愛媛大、高知大、佐賀大、国立病院機構長崎医療センター、熊本大、大分大、宮崎大、鹿児島大、琉球


肝炎についてもっと知るには
国立国際医療センター肝炎情報センター
(病気の説明や医療機関情報を掲載)
http://www.imcj.go.jp/center/index.html
●日本肝臓病患者団体協議会の電話相談
   電話03・5982・2150(平日10~16時)

出典 朝日新聞・朝刊 2010.2.16
版権 朝日新聞社






C型肝炎 関連サイト>
C型肝炎の正しい知識(c-kan.net)
http://www.c-kan.net/
C型慢性肝炎のインターフェロンによる治療
http://www.medi-navi.com/tes-tr/diges/016.php
虎ノ門病院消化器科部長 熊田 博光
http://www.geocities.co.jp/HeartLand/2989/c-hepatitis.html
(熊田先生はウイルス性肝炎治療の第一人者です)
C型肝炎インターフェロン療法を考えている人へ
http://www.fight-hepatitis.net/



読んでいただいて有難うございます。
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