スタチンの利点 リスクを上回る

世界で数億人が服用しているコレステロール値を降下させ心臓病を予防する薬が、白内障、腎不全、筋肉の痛み、肝臓障害など、副作用のリスクを増加させることが、200万人の英国人を対象とした研究で明らかになった。

医学雑誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に掲載された調査結果では、世界で最も多く販売されている米製薬最大手ファイザーのリピトールや、英医薬品2位アストラゼネカのクレストールに代表されるスタチン系コレステロール値治療薬の長期的なリスクが明らかにされた。

今回の研究では、これらの治療薬の効果ももちろん確認されている。

調査を行ったのは英ナッティンガム大学のジュリア・コックス教授が率いる研究グループ。
スタチンを服用する人と服用しない人を比較すると、服用した場合、心臓病は1万人当たりで約271件、食道がんは同8件少なかった。
しかし、白内障は同307件、急性腎不全は同23件、肝臓障害は同74件多くなるという結果が出た。

「調査結果を政策立案にいかしてほしい。スタチンはすでに最も広く処方されており、さらに使用が増えると見込まれる薬剤なので、意図した効果、意図していない効果の両方について明らかにする必要がある」

今回の調査では、スタチンがパーキンソン病、脚の血栓症、関節リウマチ、骨折、認知症の予防に効果があるとする従来の説は確認できなかった。
また、同薬とがんリスク軽減にはっきりとした関連がないとする過去の調査結果は追認された。

調査対象はイングランドウェールズにある368の医療機関の患者200万人で、2002年から08年の記録を分析した。
副作用のリスクは、スタチン系薬すべてで、服用した最初の年から現れ、服用中はずっと継続した。
白内障のリスクは患者が服用をやめてから1年以内に軽減され、他の症状のリスクも3年以内に通常の数値水準まで戻った。

報告書ではスタチンの目的は心臓発作や脳卒中を防ぐことだと改めて確認している。

「スタチンの使用とがんは関連がなく、筋肉に対する深刻な毒性もまれで、肝臓の異常も元に戻ると思われる。現在のガイドラインに従って使用すれば利点がリスクを上回る」

ただし、一般的に治療薬の効果を確認する調査では、長期的、あるいはまれなリスクに関する情報はほとんど提供されていない。また、調査対象には若く比較的軽症の人々が含まれることもあり、調査結果が必ずしも一般に適用されるわけではないと、報告書では付記されている。




<コメント>
「スタチン」という言葉は、コレステロールが高くておくすりを飲んでみえる方なら聞かれたことが多いはずです。
なぜなら、ほとんどの方は「スタチン」が処方されているからです。
しかし、商品名(薬剤名)としては、メバロチン、リピトール、リポバス、リバロ、クレストールなどの名前のため、これらが「スタチン」であることをご存知ない方もみえるのではないでしょうか。
一般名として○○スタチンと必ずついており、一般名をみて初めて自分が飲んでいることを知る場合もあります。
かくいう私も健康のためにと、「とある」スタチンを服用しています。
実は多くのドクターもこっそり飲んでいるのが現状です。
それだけ動脈硬化の予防が期待される薬剤なのです。
しかし、この記事の中の白内障については知りませんでした。



<番外編>
日本脳炎、予防接種中断で幼児の8割免疫なし (国立感染症研調査)
脳に重い障害などを起こす日本脳炎で、幼児の8割がウイルスに免疫を持っていないことが国立感染症研究所の調べで分かった。
副作用の問題で2005年から予防接種が事実上中断したため。
感染すると幼児では死亡する例もあり、予防接種の実施が必要としている。
20日高松市で開かれた日本臨床ウイルス学会で発表した。

出典 日経新聞・朝刊 2010.6.21
版権 日経新聞



<参考>
冠動脈アテローム動脈硬化の進行比較: DM vs Met S
http://blog.m3.com/reed/20100623/__DM_vs_Met_S
の<番外編>を読んでいただくとわかりますが、スタチンは白内障のリスクを減少させる、という報告もあるのです。


読んでいただいて有難うございます。
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