変形性頸椎症と頸髄症

変形性頸椎症

成人の頭は5~7kgと重く、これに加えて両側の上肢の重さも頸椎にかかり、頸椎は寝ている時以外はかなり大きな負担を強いられていることになります。
変形性頸椎症はこうした負担に耐えている頸椎が、徐々に傷んでくる状態です。
椎間板変性、椎体の骨硬化、骨棘形成(骨の出っ張り)、黄色靭帯の肥厚などがその本体で、それらをまとめて変形性変化と呼んでいます。
 
頸椎が変形性変化を起こすこと自体は、自然な加齢に伴う変化です。
しかし、これに伴い頸部の痛みや肩こりが起こることがあります。
こうした症状が続く時は、整形外科でX線検査をするとよいでしょう。
X線写真では、変形性変化の進み具合がわかります。
 
治療は、温熱療法や牽引療法などの理学療法、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などの薬物療法を主に行います。


頸椎症性脊髄症と頸椎症性神経根症

変形性頸椎症に伴い、はれあがったり飛び出したりした椎間板、骨棘や肥厚した黄色靭帯によって、神経圧迫の症状が出ることがあります。
脊髄が圧迫される場合を頸椎症性脊髄症、神経根(脊髄から出る神経の枝の付け根)が圧迫される場合を頸椎症性神経根症といいます。
 
頸椎のレベルで脊髄が圧迫されると、手がしびれる、字を書いたりはしを使ったりという手の細かい動作がうまくできない、歩く時にふらつく、足がしびれるといった症状がみられます。
進行すると手足の知覚が鈍くなったり、ふらついて歩けなくなったり、膀胱の障害が現れることもあります。
また、神経根の圧迫でも、肩から手にかけて痛む、手がしびれたり知覚が鈍くなる、手の力が入りにくくなるといったことがあります。
 
こうした症状が出た場合に整形外科では、症状や神経所見を確認し、X線MRI検査を行い、脊髄や神経根への圧迫の有無を調べます。

・神経根症の治療
脊髄症と神経根症とでは、治療法はやや違います。
神経根症は治療をしなくても治る傾向があります。
内服薬としてはビタミンB12剤などを使いますが、効果は高くありません。
頸椎の牽引は神経根の出口である椎間孔を広くする効果があり、症状の改善につながります。
また、頸椎カラーで頸部の安静を保つことも有効です。
症状が強い場合、手術を行うこともありますが、保存療法で改善することが多いため、とくに高齢者の場合は手術については慎重に検討します。

・脊髄症の治療
脊髄症の場合は、自然経過での改善はあまり期待できません。
また、脊髄は脳と同じで神経細胞と神経線維の両方があるため、一度傷んでしまうと改善しにくい性質があります。
ですから、脊髄症が原因で手が思うように動かない、ふらついて歩けないなどの症状が生じた場合は、できるだけ早期に治療を始める必要があります。
 
頸椎の牽引はあまり効果がありませんが、頸椎カラーは1カ月ほど装着すると症状が改善することが多くあります。
一方、薬剤はあまり効果がありません。
症状が6カ月以上続くと改善の見込みが低くなります。
したがって、歩行困難や膀胱障害などの強い症状が出る場合や、急激に症状が進んでいく場合などは、全身状態が許せば手術がすすめられます。
手術は、脊髄の通り道を広くする脊柱管拡大術がよく行われています。
 
ほかに頸椎で神経の圧迫を来す疾患には、頸椎椎間板(けいついかんばん)ヘルニア、後縦靭帯骨化症などがあります。

http://health.goo.ne.jp/medical/search/10290400.html
(執筆者 一心会伊奈病院整形外科 石橋 英明部長)



<関連サイト>
頸椎のレントゲン

正常の頸椎
イメージ 1


変形性頚椎症の頸椎
イメージ 2





東京西徳洲会 脊椎センター

頚部脊柱管狭窄症(MRI所見)
イメージ 3




首と肩の痛みについて
イメージ 4

http://www.yamauchi-seikei.jp/sicktalk_007.html




<きょうの一曲> Corcovado
Nara Leão - Corcovado
http://www.youtube.com/watch?v=VH_DCT5DsdU&feature=related
Stan Getz / Astrud Gilberto - Corcovado
http://www.youtube.com/watch?v=DMX6E68qJAg&NR=1&feature=fvwp




イメージ 5

中谷時男「アルプス眺望」
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