胃食道逆流症

ひどい胸焼け、胃食道逆流症の可能性

Uさん(58、女性)は胸やけに苦しんでいる。
特に、夜半に、胸の裏側が焼けつくような感覚で、ひどいときは目が覚めることもある。
横になっても強い刺激はおさまらず、なかなか再び眠りにつくことができない。
せきもでる。
それがまた、刺激になる。なぜ、そんなひどい胸やけが起こるようになったのか、不思議でしかたがない。

医師に相談してみると、この胸やけが実は生活の変化に関係していることに気がついた。
子供が独立して、暇になった。
それを契機にパートの仕事に出るようになった。
帰りがいつも遅い。
遅くまで食事を我慢しているので、とても空腹になる。
帰りには、スーパーマーケットで、たくさんの食材を買ってしまう。
値引き商品も多いので、これもあれもと買い物をする。
これらを、調理して食べるので、いつも食べすぎだ。満腹で横になるという生活である。

よくよく考えてみると、いつも、もりもり食べてくれた子供がいない。
にもかかわらず、以前と同じような量の食事を作っている。
このことが問題のようだ。

Uさんのような胸焼けは、胃食道逆流症と呼ぶ。
健康な人でも、胃から食道に向かってある程度の逆流は起こっているが、症状が出るほどではない。
逆流がひどくなる原因は様々だが、生活の習慣によるものが最も多い。
食事内容も関係するが、過食や就寝前の食事の習慣は特に問題だ。

Uさんは夜半に食べる量を減らして、早めに夕食をとるようにした。
胸やけの症状は、きれいに消えた。
不思議なことに、慢性のせきも出なくなった。
胃食道逆流症は慢性のせきの原因の一つでもある。
                 (近畿大学病院救急診療部教授 平出敦)
出典 日経新聞 Web刊 2010.12.7(一部改変)
版権 日経新聞




<コメント>
一般的に「胃食道逆流症」は「逆流性食道炎」といわれています。
私は、胃液が食道に逆流する現象、あるいはそれに伴う症状を「胃食道逆流症」、そして胃カメラなどで炎症所見が確認された場合を「逆流性食道炎」と理解しています。
最近では、症状があっても胃カメラの所見がない場合もあるということでこの場合は医学的にNERDといって区別します。
一方、発赤や”びらん”や潰瘍などの所見が食道末端にある場合はGERDといいます。

わかりやすくいえば、胃が痛い場合に急性胃炎胃潰瘍かは胃カメラをしなければ区別がつきません。
逆流性食道炎」は胃カメラで確定した場合の診断名、「胃食道逆流症」は症状から推定される病名ともいえます。

私は「胃食道逆流症」という病名を患者さんに伝える場合にも、バリウムを使った胃透視をお薦めしています。
逆流を直接証明するには胃カメラより胃透視の方が役立つからです。




<診察椅子>
先週の土曜日(2010.12.11)、インフルエンザ(A型)の方が来院されました。
今シーズン第一号です。
40代男性の会社員の方です。
感染経路は不明ですが、地下鉄通勤ということで通勤途中の感染も疑われます。




他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
があります。