血圧の評価には複数回の血圧測定を

血圧コントロールの評価には複数回の血圧測定が必要

降圧薬への反応を評価するには複数の血圧測定値が必要であることが、新しい研究で示された。
研究の筆頭著者である米デューク大学メディカルセンター(ノースカロライナ州助教授のBenjamin Powers博士によると、診療所などでの血圧測定では通常よりも血圧が高くなるいわゆる「白衣高血圧 white coat hypertension」が多く見られるため、家庭でも5~6回測定するのが有用であるという。

今回の研究では、米国退役軍人の高血圧患者444人(約90%が男性、平均64歳)を対象に評価した。
いずれも約10年前に高血圧の診断を受けており、多くが複数の降圧薬服用にもかかわらず血圧コントロールができていない患者であった。
試験開始時のほか、6、12、18カ月後に、家庭、診察室、臨床研究施設の3箇所で血圧を測定した。

測定値には大きなばらつきがみられ、3回の測定で一貫して血圧コントロールの成否を区分できたのはわずか3分の1であった。
「この結果は、異なる状況で複数の血圧測定値を取ることの重要性を示すものだ」とPowers氏は述べている。
単一の数値だけに基づいて降圧薬の処方や調整を行うと、「白衣高血圧」の患者を危険にさらす可能性がある。真の血圧を推定するには、6回の測定値を取り、医師が平均値を出す必要があるという。

Powers氏によると、家庭での血圧測定は近年重視されるようになっているという。
「高血圧患者の約43%が家庭での測定を行っているが、今回の結果は、家庭血圧モニタリングへの経費補償の要望を支持するものだ」と同氏らは述べている。
「患者が家庭血圧測定器を購入したら、医師に精度を確認してもらう必要があるほか、1日の異なる時間帯に血圧を測定すること、測定前に5分ほど座った姿勢でリラックスすることなどを患者に助言する必要がある」と同氏らは付け加えている。
この知見は医学誌「Annals of Internal Medicine(内科学)」6月21日号に掲載された。

別の専門家は「血圧値に基づいて薬物療法が変更されることが多いが、測定技術の不備や測定回数の不足のためうまくいかないこともよくある」と指摘している。
今回の研究から、正確な情報に基づいて薬剤の使用や変更を決定するためには、測定技術と測定数をともに改善する必要があることが示されたと述べている。
また、付随論説では、今回の知見は血圧スクリーニングに対する規定の必要性を示すものだとしている。

http://health.nikkei.co.jp/hsn/index.aspx?id=MMHEb1001030062011
出典 Health Day News 2011.6.20
版権 Health Day


<関連サイト>
家庭血圧
http://blogs.yahoo.co.jp/yamaclin/28936031.html
■診察室収縮期血圧(SBP)の最大値(外れ高値)が、同平均値とは別に、心血管イベントの強力な予測因子であることが最近報告されたが、自治医科大学循環器内科学部門の研究グループは、同様に家庭SBPの最大値が同平均値よりも標的臓器障害(TOD)の重症度を反映する可能性があるのではと仮定し、未治療の高血圧患者を対象に試験を行った。
結果、最大家庭SBPとTODには相関関係があることが認められ、平均値に加えて評価をすることで、心臓や動脈の高血圧性TODの予測値を上げられる可能性があることがわかった。
■被験者は、家庭血圧を連続14日間、朝と夕それぞれ3回ずつ座位にて測定し、測定値は血圧計に記録された。
最大家庭SBPとは、毎日の朝測定3回の平均値、夕測定3回の平均値のうち最も高い値のものと定義した。
TOD有無については、心エコーにて計測した左室心筋重量係数(LVMI)、超音波検査による頸動脈内膜中膜厚(IMT)と、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を評価し測定した。
■本研究は、家庭血圧の変動性の増大が、平均値とは独立して、新規の高血圧性臓器障害の指標となることを示した貴重な臨床研究である。
(ちょっと難しい専門的な話で申し訳ありません)



<家庭血圧測定のコツ>
・血圧測定前の少なくとも30分は、喫煙、カフェインの摂取および運動を避ける。
・正しい姿勢で座る。背中の支えがあり、背筋を伸ばした状態で、両足を平らに床に付ける。
前腕を平らな面に置き、上腕が心臓の高さにくるようにする。
・ベルト(マンシェット)の巻き方、使い方については説明書を読むか、医師にやり方を示してもらう。
・毎日同じ時間に2~3回測定し、測定の間隔は1分以上空ける。結果は必ずすべて記録する。


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