腰痛 あきらめない(1)

手術後も薬とリハビリ

神奈川県横須賀市のTさん(64)は、20代でぎっくり腰を患って以来、度々腰痛に悩まされてきた。
鍼灸やリハビリで痛みを抑えてきたが、2年前、急に左足の先が上がりにくくなり、やがて腰全体がしびれて力が入らなくなった。

MRI(磁気共鳴画像)検査で腰部脊柱管狭さく症と診断され、K大病院整形外科で2010年9月、初めての手術を受けた。

脊柱管は、背骨をつくる椎骨の穴がつながった、神経の通り道だ。
老化などで脊柱管が狭くなると、神経が圧迫されて、足腰にしびれや痛みが出る。

初期なら薬やリハビリで改善を図るが、歩行や排せつに支障がある場合は手術の対象となる。
しびれがひどく、少しの段差でも転びそうになるTさんは、狭さくがある部分の背骨を一部削り、神経の圧迫をとる手術を受けた。

ところが、一時はつえなしで歩けるようになったが、半年足らずで、それまで症状がほとんどなかった右足にまひが出た。
そこで、11年6月に2度目の手術を行い、別の狭さく部分を手術したが、直後は改善が見られなかった。
最初の手術前に比べればましだが、まひが左足から右足に移ったような状態だった。

主治医によると、手術の効果は患者の重症度で異なり、「休み休みでないと歩けない状態」は90%以上の患者で改善する。
だが、何らかのしびれは75%の患者で手術後も残る。
その一部には、Tさんのようにしびれが強く、薬が必要な場合もある。

主治医は「重い神経障害があると手術でも治りにくい。田渕さんは狭さくが広範囲で、長く神経が圧迫されていたため、神経まひが残った」という。

こういった場合に最近用いられるのは、リリカ(一般名プレガバリン)という飲み薬だ。
帯状疱疹後の神経痛に使われていたが、10年10月、他の末梢神経の障害性の痛みにも保険がきくようになった。

田渕さんは、11年4月から、この薬を飲んでいる。
また、週2回は地元のクリニックにリハビリに通い、足の筋力回復に努めている。
現在は、足先のまひはほぼなくなり、しびれは残っているものの、平らな所はつえなしで歩ける。

主治医は、「薬で痛みをとりながらリハビリを続けることで、手術後2年程度は少しずつ回復が見込める」と話す。

出典 読売新聞 2011.11.10
版権 読売新聞社

<私的コメント>
このリリカは添付文書(処方する医師にとってはバイブルなようなもの)には「成人は初期用量としてプレガバリン1日150mgを1日2回に分けて経口服用し、その後1週間以上かけて1日用量として300mgまで漸増する」と書かれています。
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se11/se1190017.html

しかし、この指示どおりに服用すると、ひどい眠気やめまい、ふらつきが起きることが数多くあります。
私は1日25mg~50mgを、副作用に注意しながら使用を開始します。
添付文書を守っていれば、医師は副作用が起こっても責められることはありません。
支払い基金もきちんと通過します。
この間違った(少なくとも私はそう思います)用量の記載は、厚労省もメーカー側も改訂するつもりはないようです。
世の中はもちろん、医療界も不条理で満ちあふれています。

話題はそれますが、今年からインフルエンザワクチンは3歳以上は大人と同じ0.5mlの接種量と増えました。
3歳から6歳未満の小児にとっては倍以上です。
これは諸外国に比較して摂取量が少ないから、ワクチンの効果が弱い、という厚労省の考えからのようです。
このことは、従来「小児へのインフルエンザワクチンの効果が弱かった」ということを暴露しているものであり、その原因が摂取量の問題にすり替えられているような気がしてなりません。         勿論「インフルエンザワクチンは有効である」という前提ですが、摂取量が少なかったから効果が弱かったという検証は今後きちんとされるのでしょうか。
私の知る限り、例年のインフルエンザワクチンについて流行株の予想が的中したかどうか、有効性はどうだったかははっきりとは公表されていません。

私達のような事前に何も知らされていない最前線の医師は、お母さん方の不安な視線に耐えながら、ただ粛々と日々ワクチンを接種しているのです。

これも不条理な話ではないでしょうか。