腰痛スパイラルから抜け出そう・その2(2/4)

腰部脊柱間狭窄症とは?

「腰部脊柱管狭窄症」とは病名というより、神経の通り道である脊柱管が何らかの原因で狭くなり、神経やその周辺の血管などが圧迫されてさまざまな障害が起こる状態を指します。

原因は生まれつき脊柱管が狭いことが深く関係しており、加齢に伴って起こる病気や骨の棘「骨棘(こつきょく)」や椎間板の膨張、関節部の靭帯である黄色靭帯の肥厚(厚くなること)といった変化など骨の変性ができたりがあると脊柱管が狭くなり「脊柱管狭窄症」が生じてくるのです。
50代以降の中高年の人に後発します。

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症状の特徴 ~症状がだんだん進む~
「間欠跛行」(かんけつはこう)という症状が代表的です。
「間欠跛行」とはしばらく歩くと脚が痛くなったり、しびれや脱力感が起こって歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになるという状態のことです。

歩ける持続時間は狭窄の程度によって違い、軽症の人は10分程度、重症の人は1~2分歩くのが精一杯で、すぐに痛みや痺れで歩けなくなってしまいます。

これは歩いて背骨が動くことによって、脊柱管が狭くなり神経への圧迫が強くなるからです。
しゃがんだり、座ったり休むなど前かがみの姿勢になると脊柱管が広がり、またしばらくは歩けるようになります。
また歩くと痛みが出ますが、自転車などに乗っていると痛みは出ません。

その他、腰を後ろに曲げると痛みが増す「後屈障害型腰痛」も共通した症状です。
どこの神経が圧迫されているかで様々な症状がでてきます。



神経の束の1本「神経根」が圧迫された場合
神経に沿って腰から脚にかけて痛みやしびれが起こります。
片方だけ圧迫されている時は片足に、両方の神経が圧迫されている時は両足に症状が現れます。

神経の束全体「馬尾(ばび)」が圧迫された場合
神経の束が圧迫されているので、両足のしびれや麻痺が広範囲に及びます。
下肢の脱力感も見られます。
馬尾は膀胱や直腸の働きにも関係しているため、排尿・排便障害が出たり、会陰部のほてり・異常感、男性では性的興奮がないのに勃起が起こることがあります。


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危険な病が潜む! 「間欠跛行(かんけつはこう)」の見分け方
「間欠跛行(かんけつはこう)」という症状は、脊柱管狭窄症に限ったものではありません。
実は「閉塞動脈硬化症」という足の血管の動脈硬化がすすみ、血管が細くなったり、つまったりして、充分な血流が保てなくなる病気でも「間欠跛行」は起こります。

この区別は慎重に判断することが大切です。
一つの目安になるものをご紹介しましょう。
「間欠跛行」が起こったとき、「どのような姿勢になれば楽になるか」に特徴が出ます。

どのような姿勢になれば楽になりますか?
【 脊柱管狭窄症の休み方 】
しゃがむか、前かがみに 座って休むと回復する

【 閉塞性動脈硬化症の休み方 】
立ったまま休んでも回復する(姿勢は関係ない)


「神経の圧迫のされ方で対処法が違ってきます」
神経の束全体「馬尾(ばび)」が圧迫されている時の解消法
多くの場合は手術療法が治療の第一選択となります。

馬尾の障害による、しびれや痛み、麻痺、排尿・排便障害は時間がたっても自然治癒することがほとんどありません。
しかも時間がたてばたつほど改善できるレベルが低くなってしまいます。

一定期間保存療法をしても良くならない場合は、早めに手術を受けましょう。
神経の束の1本「神経根」が圧迫されている時の解消法

まず保存療法を行います。

安静をはかり、痛みをとるための薬物療法(消炎鎮痛剤や血行を促すための血流改善薬など)、痛む箇所への神経ブロック、その上で理学療法を行ったり、さらにはコルセットが有効な場合は着けます。
前屈姿勢によって楽になるなど、痛みが出たら前かがみになって休んでもらうなど、病気への知識を持ってもらうことも重要です。

神経根型の場合はこれでほとんどが改善します。


家庭でできる解消法 ~痛みの出ない姿勢や動作の工夫~
脊柱管狭窄症のある人は、神経を圧迫するような動作や姿勢を避けることが大切です。
後ろに反ると狭くなり、前にかがむと広くなり、後ろに反るような動作は特に注意をしなければなりません。反対に痛みが出てきたら、前かがみの状態で休むと楽になります。
また痛みのない程度に動きましょう。
動かないでいると治りが遅くなってしまいます。

日常生活で気をつけたいこと
■ できるかぎり、体を後ろに反るような姿勢をとらない
■ 立ちっぱなしは避ける
■ 歩く時は前かがみになる。手押し車や杖を使うとなおよい
■ 長く歩く時は途中で、適度に休憩をいれる
■ 自転車に乗れる場合は自転車を利用する
■ 太っているときには適正な体重に落とし、腹筋をつけるように努力する


骨の変形や変性に伴う腰痛症

朝起きて動き始める時や、長時間たちっぱなしだった時に痛みが強くなります。
背骨の変形が起こると姿勢が悪くなる場合もあります。

骨の変形や変性に伴う腰椎症とは?
年をとると背骨、椎間関節、椎間板にも老化がおきます。
老化や負荷で、最も変化が起こりやすいのが椎間板です。
椎間板が加齢によって徐々に水分が失われてくると、クッションの役割をうまく果たせず力が加わることによってつぶれたり変形します。

この時つぶれた椎間板の中身、髄核が飛び出て神経を圧迫すると「椎間板ヘルニア」になります。
また椎間板がつぶれると、上下の骨同士がぶつかって、関節が磨り減ったり、とがってきたりします。
これを「骨棘(こつきょく)」と呼び、そのために神経の通り道である脊柱管が狭くなって「脊柱管狭窄症」を招くこともあります。
このように骨だけでなく、関節や椎間板など、あらゆる部分に異変が起こり、腰痛を招いている状態を言います。

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症状の特徴 ~動き出すと痛みが強くなる~
変形・変性に伴う腰椎症の主症状は腰痛です。
痛みは持続することが多いのですが、特に朝起きて動き始める時や、長時間同一姿勢後に体を動かした時、立ちっぱなしだったときに痛みが強くなるのが特徴です。

また動かせる範囲にも制限が現れます。
老化によって、多少動きが悪くなるという以上に、「痛くてこれ以上は動かせない」という状態になります。
背骨の変形が起こると、姿勢が悪くなる場合もあります。


解消法
加齢に伴う骨の変形はあっても当然。生活に支障をきたすなら治療を!
背骨の変形や変性は年をとれば多かれ少なかれ誰にでも起こるので、症状が起こっていなければ治療は必要ありません。
生活に支障をきたす場合は、まず保存療法を開始します。

治療の基本となるのは痛みを改善するための対症療法です。
消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、貼り薬などの薬物療法、特に痛みが強い場合は、痛みの出ている箇所に神経ブロック注射も有効です。
そのほか、コルセットを装着する装具療法、理学療法もあります。
また背骨が曲がってきた場合は、杖の使用もお勧めです。

家庭でできる解消法 ~腰をいたわることが大事~
普段の生活に注意して、腰痛を起こしたり悪化させないようにしましょう。

日常生活で気をつけたいこと
■ できるかぎり、体を後ろに反るような姿勢をとらない
■ 立ちっぱなしは避ける
■ 重いものを持つときは、きちんと意識して動作を始める
■ 動作の動き始めには、軽い準備運動をする
例)朝布団の中で体を動かしてから起きる

しかし、腰を気にしすぎて運動不足になるのはかえって良くないので、腰を支える腹筋や背筋を維持するために、適度に体を動かすことは必要です。

手術を考えるとき ~保存療法が効かない場合は手術~
治療の基本は保存療法ですが、以下の場合は手術も考えます。

骨の変形や変性に伴う腰椎症の手術を考える時
■ 痛みが著しい場合や、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症を起こして重症の神経障害がでているような場合
■ 下肢の症状に対して保存療法を行って3ヶ月以上症状が改善しない時