ペットの感染症にご用心

口移しや添い寝は禁物

犬や猫を室内で飼う人は多いが、気をつけたいのが感染症のリスクだ。
犬や猫にとって正常な菌も人間の体に入ると病気を引き起こすケースもある。
過度に恐れることはないが、一緒に楽しく生活するからこそ、寝室には入れず、食べ物の口移しをしないなどを心がけることが大切だ。

猫好きの中年女性Aさん。なんだか喉がいがらっぽいと悩み、日本大学医学部の荒島康友助教に相談した。調べたら「パスツレラ菌」が検出された。
この菌は犬や猫の口腔内に存在する菌で、猫だとほぼ100%、犬では75%が保有している。
人が犬や猫にかまれるなどして感染すると、化膿などの症状が出る。


寝ている間に感染
Aさんはなぜ感染したのか。
実は寝ている時に、猫がよってきて首もとや顔をなめていた。
荒島助教がAさんを追跡調査したところ、50回の検査の中で、この菌が25回検出された。
「検出された日はいずれも、前の晩に猫を寝室に入れていた。同じ部屋で寝るのはやめるべきだ」と荒島助教は指摘する。

猫は脚をなめる習性があるので、猫にひっかかれて感染するケースもある。
この「ネコひっかき病」は、ノミが「バルトネラ菌」を媒介する。
猫がノミをかみつぶした時に、口腔内にこの菌が侵入。
人間をかんだりひっかいたりすることで感染する。猫に症状が出ることはほとんどなく、人間が感染するとリンパ節が大きく腫れる。

猫の爪を短く切っておくことが大切。
爪切りをしっかりしておけば予防につながる。

ほかにも気を付けたい感染症がある。
皮膚糸状菌症だ。
これはある具体例。
小学生の女児がいる家庭が猫を飼い始めた。
猫の額に円形の脱毛があったが、ペットショップの店員は「人には感染しない」と伝えた。
ところが、しばらくして女児の頭部が赤く腫れ、髪が次々と抜けていった。
女児は髪の毛の成分「ケラチン」を食べる皮膚糸状菌に感染していた。

ただ、この女児のようなケースは極めてまれで、普通は免疫力で病気になるのを防いでくれる。
過度に心配しなくてもいいが、皮膚糸状菌症を防ぐためにも、動物を清潔に保つことが大切。
ただ、シャンプーをやり過ぎると動物の方に皮膚炎が起きる。
回数は獣医師と相談して決めてほしい)。

亀を飼っている家庭で気をつけたいのが「サルモネラ症」だ。
食中毒を引き起こすサルモネラ菌は、亀の保有率が高く、犬や猫は低い。亀を触った手を子供がなめて感染するケースが考えられ、手洗いをしっかりしなければならない。
水槽を台所で洗ってしまい食材を通じて感染するケースもある。


過度の接触は禁物
多くの動物由来の感染症は、死に至ることはほとんどなく、健康な人であれば自然に治ることも多い。
致死率の高い病気に狂犬病があるが、日本ではかかる心配はない。

唯一、致死率の高い病気として覚えておきたいのが「カプノサイトファーガ感染症」。
発病するケースはまれだが、敗血症を起こす場合がある。
起きてしまうと致死率は3割を超え、2002~08年の間に5人が死亡した。

病原菌は、犬や猫の口腔内に存在するので、除菌はほぼ不可能。
よく効く薬があるので、とにかくかまれたら、カプノサイトファーガ感染症を紹介した新聞や雑誌を持ってすぐに病院で診てもらうようにする。
この病気を知らない医師もたくさんいる。

動物からの感染症を防ぐためには、ペットをまるで我が子のように扱わないのが最も重要だ。
口移しでエサを与えるなどの行き過ぎた接触行為は控えるべきだ。
あまりにもかわいがりすぎた結果、病気をうつされて嫌いになってしまっては、元も子もない。
(辻征弥)
出典 日経新聞・朝刊 2012.2.5(一部改変)
版権 日経新聞


<私的コメント>
皆さんはペットを飼っておみえでしょうか。
ペットは家族の共通の話題にもなり、気付いてみればいつの間にやら家族の中心になっています。
そして何より安らぎと癒しを与えてくれます。
以前、何かで読んだ話ですが英国では犬を飼っていないと、ちゃんとした家庭と認識されないということdした。
米国でもホワイトハウスには犬が必要ということです。
オバマ氏も大統領就任後あわてて犬を飼い始めました。

さて、個人的にはネコとカメを飼っています。
今回の新聞記事はちょっと「怖い」内容でした。

出典 日経新聞・朝刊 2012.2.5
版権 日経新聞