屋外で長く過ごすと、乳がんリスク減少

山形さくら町病院精神科・早稲田大学大学院客員教授の坪野吉孝先生が「日照時間と乳がん」の関係についての論文を紹介しています。

屋外で長く過ごすと、乳がんリスク減少

ビタミンDによるがん予防効果の可能性が最近注目されている。
ビタミンDは日光紫外線を浴びて皮膚で合成される。
日光を浴びる屋外で過ごす時間が長いほど、乳がんのリスクが低いという論文が、米国疫学雑誌に昨年8月掲載された。

カナダのオンタリオ州の住民で乳がんにかかった女性3,101人と、同州の女性で乳がんではない比較群3,471人を対象に調査を行なった。

対象者の自宅に質問票を郵送し、人生の四つの時期(10代、20~30代、40~50代、60~75歳)のそれぞれで、週に何時間屋外で過ごしたかを思い出して回答してもらった。

その結果、四つの時期のいずれについても、屋外で過ごす時間が長いほど、乳がんのリスクが低かった。
例えば10代の場合には、屋外で過ごす時間が週6時間未満の場合と比べて、7~12時間では0.90倍、13~14時間では0.81倍、15~21時間では0.76倍、22時間以上では0.71倍だった。

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10代のころに屋外で過ごした時間による乳がんリスクの違い(週6時間未満の場合を1とする)


著者らによると、屋外で過ごす時間と乳がんとの関係を調べた先行研究は4件あり、このうち3件で、屋外での時間が長いと乳がんリスクが低いという結果になっている。

研究の限界として著者らは、屋外で過ごした時間を過去にさかのぼって思い出し回答してもらっているため、情報の正確さに限界がある点などをあげている。

とりわけ、「屋外で過ごす時間の長さ」が、体内のビタミンD濃度自体(原文は「じたい」)を表しているのか、乳がんリスクと関係する他の要因(メラトニン量、季節性うつ病の影響、乳がん予防の可能性が考えられている葉酸の紫外線による破壊など)を表しているのか、区別できない点も問題点としてあげている。

もっとも、屋外で過ごした時間についての記憶の正確さにはたしかに限界があるが、人生の四つの時期のすべてで、屋外で過ごす時間が長いほど乳がんリスクが低いという結果を認めたことは、記憶の正確さが時期によって異ならないことをうかがわせるもので、結果の信頼性を高めるデータといえる。

いっぽう、乳がん患者が健康だった時期の血中ビタミンD濃度を直接測定し、それを乳がんのない比較群と比べる研究もこれまでに行なわれているが、結論ははっきりしていない。
今後はこうした研究をさらに進めることが必要だろう。

坪野吉孝 《山形さくら町病院精神科・早稲田大学大学院客員教授



これに対して手厳しい投稿が・・・。

未熟な科学は発信すべきでない
こういう統計研究は、とりあえず研究者だけでやっていて欲しい。問題だらけだから、我々生活人にとってほとんど役に立たない。未熟な科学のゴミ情報を垂れ流してどうする?
情報の伝達を間違えると誤解・混乱をさえ招きかねない。

“今後はこうした研究をさらに進めることが必要だろう”というのは研究者の勝手、研究予算獲得の口実。
屋外で長く過ごすことの効用も、それを過ごし過ぎることのデメリットも、人々は生活の経験の智恵として持っている。
その方が浅はかな科学知識よりは余程優れていることも多いのだ。

未熟な科学知識を軽々しく発信すべきではない。



<私的コメント>
上のサイトで紹介されていた(この記事を執筆された)坪野吉孝先生の経歴

1962年、東京都生まれ。東北大学医学部卒。
国立がんセンター研究所、ハーバード大学公衆衛生大学院、東北大学大学院教授(法学研究科、医学系研究科)を経て、現在、山形さくら町病院精神科、早稲田大学大学院客員教授政治学研究科ジャーナリズムコース)

医師の私からみても特異な経歴です。
まあ世の中、いろんな人がいるから面白いわけですし、それが世の中ですから。

先生自ら「論文オタク」と言ってみえます。
乳がん」も室内に閉じこもる「閉じこもりオタク」がなりやすい(?)という論文の紹介でした。