吐いた息で病気わかる?

吐いた息で病気わかる?  がんや糖尿病診断に期待 ガスの種類や精度、課題に


病気を知るのに採血や大掛かりな検査装置があるが、もっと簡単に診断できないか。
そんな患者の気持ちに応える研究が、国立循環器病研究センターで進んでいる。
体が放つ生体ガスを分析し、糖尿病や肝硬変を見分けるのが目標だ。
病気に立ち向かうには「病は気から」と気持ちの大切さがよく言われるが、将来は、病気を気体(ガス)で診断する「病は気体で」の時代がくるかもしれない。

一風変わった診断技術は、透明な袋を口に当てて、ふくらませるところから始まる。
この際に呼吸で吐いた呼気が含むガスや、皮膚の細胞の隙間から出るガスを解析する。

2種類のガス対象
■体からは数千種類ものガスがにじみ出ているという。
このうち、水素やアセトンなど12種類のガスの量が分析対象となる。
これまでに貧血やぜんそく、高血圧など24種類の病気で、まずガスの種類や量がどう変わるのかが調べられた。

■呼気と皮膚から出るガスを各約200ミリリットルずつ樹脂の袋で集め、「ガスクロマトグラフィー」と呼ぶ装置で成分ごとに分離して量を測る。

以下は国立循環器病研究センターの研究結果。
■糖尿病の患者の呼気には有機化合物であるアセトンの量が多かった。
糖尿病の患者は体内での代謝がうまくいかず、その結果としてアセトンが増えているとみられている。

■慢性気管支炎では呼気の中の一酸化炭素(CO)が増える。
気道の炎症を抑えるために酵素がCOを作るためと考えられる。気管支ぜんそくでは一酸化窒素が増えるが、これは狭くなった気管支を広げる体の防衛反応によるという。

■肝硬変の患者はアンモニアエタノールが増えていた。
精神的なストレスがたまるとCOが増え、睡眠時無呼吸症候群の患者は一酸化窒素が増える。
ガスは症状が重くなる前から出るとみられる。

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■まったく違う病気でもガスの種類や量が同じ場合があり、完全に見分ける水準には至っていない。
だが、生体ガスで簡易な検診をした後に、病気の可能性がある人だけが採血や内視鏡検査で詳しく調べるような使い方は有望だ、という考え方がある。
健康な人は診断時の負担を軽くできる。
検査が簡単になれば受診者が増えて、病気の早期発見にもつながる。

採取法統一が必要
■広く普及するためには、生体ガスの採取法を統一する必要もある。
呼気の場合、息を吐くタイミングによってガスの成分が変わる。
どこまで簡単な検査にできるかは今後の研究にかかっている。

■生体ガス診断は検診のほか、病気の治療経過の観察にも使える。
COの量を調べれば、ニコチン依存症の患者がきちんと禁煙できているかどうかをチェックできる。
硫化水素を調べれば、歯槽のう漏の経過が分かる。

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出典 日経新聞・朝刊 2013.10.18
版権 日経新聞


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石垣定哉 「Chrysler Building with Light」 水彩 76.5×56.5cm



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