高齢者の熱中症

暑さ・渇き、感じにくい体 熱中症

高齢者は熱中症になりやすい。
炎天下で起きることが多い若い世代と違い、室内で人知れず熱中症になり、気付かれたときには重症化していることも多い。
専門家は、高齢者を「熱中症弱者」と指摘し、効果的な予防策をとっていくことが必要と訴えている。

◼︎死亡の9割屋内で
脳障害のため、リハビリや退院時に転院先を探すなどの支援が必要になる人もいる。
は60歳以上で、一人暮らしの人は特に注意が必要。

熱中症は最近、高齢者にとって脅威となっている。
ある調査では、2013年夏に熱中症で治療を受けた人は全国で約40万8千人。
死者550人のうち65歳以上が9割近くに上った。

熱中症で死亡した9割近くは屋内で起きていたという統計もある。高齢者の熱中症は日常生活の中で起きている、とも言える。
 
症状は、めまいや立ちくらみ、生あくび、大量発汗などで始まる。ただ、屋内では症状がゆっくり進むため、周りも本人も気付きにくい。
高齢になると体内の水分量が少なくなるが、のどの渇きを感じにくく水分補給も遅れがちとなる。
汗をかきにくく、熱が体内から逃げづらい。
暑さも感じにくく、エアコンをつけずに気付いたときには熱中症、というケースも少なくない。

エアコンがあるのに使っていなかったというケースも目立つ。
高齢、一人暮らし、精神疾患や心疾患などの持病があると、熱中症で死亡するリスクが上がる。

■上手に水分・エアコン
熱中症予防にはどんな対策を取ればいいのか。
まずは水分と塩分をこまめに補給する。
0.1 ~ 0.2%の薄い食塩水が推奨される。
スポーツドリンクもいいが、糖分が多い。
梅昆布茶やみそ汁なども塩分が含まれ、予防に有効という。
 
三度の食事をとっていれば塩分は結構とれている。
水分だけを意識すればいい、ともいえる。
起床時や夜寝る前にコップ1杯、食事やおやつのときなど一口でも二口でもいいので意識してとろう。
 
エアコンを使いたがらない人には「温度計が28度になったらスイッチを入れる」などとルール化するのも一案。
外出時は図書館など空調のきいた公共施設などでこまめに休むようにする。
 
熱中症は梅雨明けに急増する。
体が暑さに慣れていないためで、暑さに備えた早めの体づくりが効果的だ。
 
体づくりには「ややきついと感じる速さ」と「ゆっくり」と速度を定期的に変えながら歩く「インターバル速歩」がよい。
涼しい早朝や夕方を選ぶ。
運動後には糖とたんぱく質が豊富な牛乳などの乳製品をとると血液量が増え、汗もかきやすくなる。

おしっこの回数が減ったり、尿の色が濃くなったりするのは脱水のサイン。
手の甲をつまみ、富士山のような形に盛り上がった皮膚が戻らないときは、スポーツドリンクより塩分が多くて糖分が少なく、体への吸収が速い「経口補水液」をとる必要がある。
 
老夫婦の世帯では、介護をしていた側が熱中症で倒れ、気付かないうちに介護されていた人も命を落とすケースがある。

まとめ
熱中症の重症度と主な症状
1度 応急処置と見守り 改善しなければ医療機関
 めまい
 立ちくらみ
 生あくび
 大量発汗
 筋肉痛 など

2度 医療機関
 頭痛   
 嘔吐
 倦怠感
 虚脱感 など

3度 入院
 意識障害
 けいれん など


高齢者の注意点
⬜︎ のどが渇かなくても水分補給
⬜︎ 部屋の温度をこまめに測る
⬜︎ 1日1回汗をかく運動   

こんなときは要注意   
⬜︎ 急に暑くなった    
⬜︎ おしっこの回数が減っている                     
⬜︎ 尿の色が濃くなっている
⬜︎ 手の甲をつまんで「富士山」の形がもとに戻らない

出典
朝日新聞・朝刊 2015.6.2 (一部改変)