減らない熱中症どう防ぐ?

減らない熱中症どう防ぐ?  体調整え、こまめに水分補給

⬛︎ そもそも、どうして熱中症になるのですか。
熱中症は蒸し暑さなどのために体温が上がり、脳や心臓など重要な臓器がうまく機能しなくなって起こる不調の総称だ。
病気の時に細菌などを退治するために、あえて平熱より体温を上げる「発熱」とは違う。
エアコンに例えるなら、発熱はリモコンで設定温度を自ら高くしているのに対し、熱中症は設定を変えないのに温度が上がってしまう状態だ。
 
発症の条件で、見落としがちなのは湿度だ。
通常は体温が上がると汗をかき、蒸発する時に気化熱を奪う。
湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体温も下がりにくくなる。
風が弱いと、さらに熱がこもりやすい。
「雲が多く日差しも弱いから大丈夫」と判断するのは間違いだ。
 
その時の行動によっても、発症しやすさは異なる。
炎天下、「根性で乗り切れ」と激しい運動を強いるのは論外。
筋肉を動かすと発熱するので、ますます体温が上がる。
日よけのつもりで小さなテントに大勢詰め込むのも逆効果だ。
 
体の状態も重要だ。
病気で体力を消耗していたり、食事や水分を十分にとっていなかったり、寝不足や二日酔いだったりすると発症しやすくなる。
特に乳幼児は体温調整の機能が未熟だ。
また高齢者は環境や体の変化を感じる機能が鈍く、暑さやのどの渇きに気づきにくい。
 
⬛︎ 毎年、救急搬送される人が多いですね。
高齢化の進展が背景にある。
消防庁によると、毎年6~9月に5万人前後が熱中症とみられる症状で救急搬送されている。
世代別では65歳以上の高齢者が最も多い。
熱中症で受診する人は年35万人前後おり、死者が1千人を超える年もある。
エアコンを使いたがらないとか、夜にトイレに起きるのを嫌って水分を控えるといった頑固者も少なくない。
 
⬛︎ 今夏も暑そうですが、どう防げばいいですか。
気象庁の6~8月の3カ月予報では、全国的に「平年並み」か「高い」確率が80%(5月下旬時点)となっている。
真夏の猛暑の時はもちろんだが、梅雨入り直前や直後も熱中症になりやすいと言われている。
体が暑さに慣れていないからだ。
 
予防策としてはまず、エアコンや扇風機を上手に使うこと。
「室温28度」が推奨されているが、あまりこだわらない方がいい。
西日が当たる場所や調理場など暑くなる場所は冷えにくいので、エアコンの設定温度を低めにしたり扇風機で空気を循環させたりする。
こまめな水分補給も忘れてはならない。
 
外出時には気象条件をチェックし、暑さ対策をしっかりしたい。
風通しのいい服装で、冷たい飲み物や帽子、日傘なども用意しよう。
 
環境省がネット上で公表している「暑さ指数(WBGT)」も参考になる。
気温や湿度、物体が出す熱から算出した指標で、全国約840地点について、「厳重警戒」や「危険」など5段階で色分け表示している。
 
⬛︎ 東京五輪パラリンピックは大丈夫ですか。
選手だけでなく観客も対策が必要で、風通しが悪く湿度が高い屋内での競技も要注意。
水分補給や救護の拠点整備は不可欠だ。
気象予測がピンポイントでわかる技術や、熱中症による心拍数の上昇を検知できるウエアラブル端末も実用化している。
 
屋上や壁面緑化は涼しい風をもたらし効果的だ。
ミストと送風ファンの組み合わせでも、周囲の気温は下がる。
こうした技術を使いこなすことが大切だ。
 
そして一人ひとりが十分な睡眠や食事をとって体調管理し、暑さに負けない体づくりを心がけることが重要となる。

「平年並み」は昔の猛暑
平年並みの暑さの夏は「そこそこの暑さ」と思いがちだが、それは間違いだ。
現在、気温の平年値として使っているのは1981~2010年の30年間の平均値。
10年おきに更新するが、そのたびに高くなっている。
 
1つ前の平年値(51年~80年の平均)と比べると、東・西日本では0.3度高い。
日本の年平均気温は100年あたり約1.2度のペースで上昇している。
東京は1900年以降、約3度上がった。
 
背景には地球温暖化や、都市部に熱がたまりやすくなるヒートアイランド現象があるとみられる。
今の平年並みは、昔の猛暑に匹敵する。

参考・引用
日経新聞・夕刊 2018.6.25