がん治療の際の医師選び

がん治療、あなたの医師選びは間違っている
かつて国立がん研究センターに勤務されていた東京ミッドタウンクリニック常務理事・森山紀之先生へのインタビュー記事からです。
先生の経歴についてがは記事(サイト)からご覧下さい。

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その言葉は、ある日不意に言い渡される――「がん」。
次の瞬間、多くの人は「死」を初めて実感し、我が人生を改めて振り返る。
今は日本人のおよそ半分が、なんらかのがんにかかる時代。

■「ランキング本」を手にセカンドオピニオンを求める患者
「最初にかかった病院でがんと診断されたのですが、こちらの病院の方が有名なので」
 
そのほとんどがセカンドオピニオンを求めて来院しているのですが、面白いことに、必ずといっていいほど「病院ランキング」や「病院実力比較」といった類いの記事を手にしています。
なかには、「この記事の中からだと、どこがお薦めでしょうか?」といった意見を求められることすらありました。

自分の身の委ね先を選ぶ指標として、各メディアから発表されている「病院ランキング」などを頼りたくなるのは、無理からぬことでしょう。
どんな人でも、自分ががんだと分かれば、「最新の治療を受けたい」「有名な先生に執刀してもらいたい」という思いに駆られるもの。
最初にがんの診断を受けた病院が、たとえランキングで2位になっていたとしても、「1位の病院だったらもっと……」といった気持ちにもなるのもよくわかります。


■「今の病院で治療を受ければ大丈夫ですよ」
ランキングの基準については、特段おかしいと感じるものはなく、「歴史がある」「規模が大きい」「専門医の数が多い」「症例数が多い」「最新の医療設備が整っている」といった病院が上位を占めている傾向があります。
しかし、1位も5位も10位も、医療の設備や受けられる医療に大きな違いはありません。
特に「早期がん」についてであれば、極端な話、「どの病院を選んでも、専門を標ぼうしていれば、ほとんど変わらない」のです。
<私的コメント>
「早期がん」かどうかは術後の病理検査で最終的に確定します。
術前の診断は暫定的なものです。

セカンドオピニオンを目的に訪れた早期がんの患者に対しては、そのほとんどに「今かかっている病院で治療を受ければ大丈夫ですよ」とお伝えしていました。
 
もちろん、例外はあります。
発見されたがんが進行がんで「ステージ」が進んでいたり、膵がんや胆管がん、さらに肝臓の門脈周辺など、血管が複雑に張りめぐられさている部位に見つかったりした場合などは、その治療に高い実績を上げている病院や医師を選ぶことも想定して慎重に検討していきます。


■場合によっては、「腕」は特段重要ではない
病院の医療設備に違いがなく、そのうえ治療に関してもそれほど差が出ない。
「肩透かし」をくらったように感じるかもしれませんが、実はがんにかかったときにみなさんが本当に望んでいることは、「いい医師と巡り会えること」ではないでしょうか。

いい医師とひと口に言っても、その考え方は人それぞれでしょう。
執刀技術の高さ? 豊富な臨床経験? 知名度? 人柄の良さ?
もしかすると、出身大学や海外留学の経験を重視する人だっているかもしれません。

患者の立場からすれば、多くの人が第一の条件に挙げるのは「腕がいいかどうか」だと思います。意を決して手術を受けるのであれば、上手な医師に執刀してもらいたいと願うのは、とても当たり前のことです。

一般的には、その分野に強い「専門医」をはじめ、医療現場などで後進の指導に当たる「指導医」といった肩書を持つ医師にかかることをお勧めしています。

一方、「腕」を、医師探しの上での第一条件から外すという考え方もあり得ます。
例えば胃がんは、発見された時点では、統計的にその70%は「早期がん」です。
医師として消化器系の分野に携わる者であれば、早期がんを手術する程度の最低限の技量は、ほとんどの医師が有しています。
すべてのがん手術がどれも高い技術を求められるわけではありません。
治療成績が良好な部位の早期がんの場合、みなさんが心配するほどの「腕の悪い医師」はそうそういませんので、どうか安心して担当の先生に任せてください。


■別の医師にかかった方がいい場合とは
がんは、一度発症すると、検査から手術後の療養まで、治療期間が長くなることも少なくありません。
必然的に、主治医との付き合いも長くなりがちですし、場合によっては一生の付き合いになります。
<私的コメント>
「進行がん」の場合の多くは一生の付き合いとなります。

最初の段階で、医師と患者が良好な信頼関係を築けるかどうかが、がん治療を根気よく続けていくための大切な条件の一つになります。
これまで多くの患者と接してきて、医師に対して「不満」や「不信」を抱いたまま治療を続けていると、やがて“がん難民”になってしまうなど、良好な結果を生んでいないと感じるからです。
 
長く付き合うという前提に立つと、残念ながら、疑問符がつく医師が少なからずいるのも事実です。
例を挙げてみるならば、次のような4つのタイプです。

良好な信頼関係を築けない可能性がある医師の4つのタイプと言動
1.患者の疑問に丁寧に答えず、「自分の言うこと聞け」という雰囲気で威圧する
2.「自分は実績をたくさん積んできた」と、過去の実績をやたらと強調する
3.がんの状態を詳しく説明もしないで、「私に任せれば大丈夫」のひと言で片付ける
4.リスクの十分な説明もなく、「手術で治しましょう」と半ば強引に誘導する

長期にわたる可能性があるがん治療は、とりわけ、患者と医師との協働作業の側面が強いと言えます。
にもかかわらず、上記のような言動が目立つ医師は総じて、協働作業であるという意識が希薄で、つらい立場に置かれている患者への想像力に欠けています。

上に挙げた4項目にいくつも該当する医師ならば、思い切って病院も医師も変えることをお勧めします。
出典
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO88805940S5A700C1000000/


<私的コメント>
森山先生は「例の」近藤 誠先生と同じ放射線科医です。
私自身は専門が循環器なので今までの医師のキャリアの中で左程多くのがん患者さんを診察した経験は多くありません。
医師として思うのは放射線科の先生が、どれだけ深くがん患者さんに一医師として関わっているのかということです。
腫瘍外科医ならまた少し別の考え方もあるのかな、と思いました。