高齢者の肺炎予防

高齢者の肺炎予防

高齢化が進み、肺炎による死者数が急増している。
2011年には、がん、心臓病に次ぐ、日本人の死因の3位になり、年間約12万人が命を落としている。
65歳以上になると、肺炎による死亡リスクはぐんと高くなるためだ。

高齢者の肺炎は、命を奪う危険な病気だという認識を持つ必要がある。
 
肺炎は主に、肺炎球菌やマイコプラズマなど様々な細菌の感染が原因で起こる。
若いうちは、抗菌薬による治療ですぐに良くなり、命を落とすことはほとんどない。
一方、高齢者はいったん発症すると何度も再発を繰り返す人が多く、命にかかわる。
薬が効かない場合もあり、まずはかからないようにすることが大切だ。

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もっとも有効とされるのが、原因の3割を占める肺炎球菌のワクチン接種だ。65歳以上では5年に1度、接種することが望ましい。
特に、インフルエンザにかかった後は肺炎にかかりやすいので、肺炎球菌とインフルエンザのワクチンをあわせて接種しておくとさらに効果的という。
 
肺炎は抗菌薬で治る病気という認識が長くあり、欧米に比べて日本人の肺炎球菌ワクチンの接種率は低い。
高齢者は是非きちんと接種してほしい。
現在、年齢によっては公的な定期接種の対象となっており、自治体によっては接種費用の助成もある。

口の中を清潔に保ち、入れ歯の調子を整えるなどのケアも重要だ。
高齢になると、食事のときにむせたり、寝ている間に唾液が気管に入ってしまったりして、口のなかにいる細菌が肺に入って肺炎を起こすリスクが高まる。
 
とはいえ、口から食べることは、高齢者の健康にとても重要だ。
食べる力が弱っている場合でも、一口の量を減らす、食材にとろみをつける、気管に入らないようあごを引いて食べるなどの工夫をし、なるべく口から食べるようにしたい。
高齢者向けにのみ込みやすいゼリーなども販売されている。

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粗食を好み、肉や動物性脂肪をとらない人は要注意。
たんぱく質などの栄養が足りない状態になると体力が落ち、肺炎にかかりやすくなる。
メタボ対策が必要なのは中年。
高齢者はむしろ積極的に脂質、たんぱく質を取る必要がある。
喫煙者や糖尿病の人も、肺炎のリスクが高い。
 
高齢者の肺炎は、素人目には一見、ただの風邪と区別がつかないことが多い。あまり熱が高くなくても、ぼんやりしているなど、周囲の人が見て少しでも「おかしいな」と感じるところがあれば、積極的に医療機関を受診させるようにしたい。 


まとめ こんな人は肺炎に要注意
①せきやたんが出る
②発熱が続く
③食欲がない、元気がない
④息苦しさがある
⑤インフルエンザにかかった後である
⑥ぼんやりして、反応が鈍い
⑦65歳以上である
⑧喫煙をしている
⑨糖尿病などの基礎疾患がある


①~③は通常の風邪でもよくある症状だが、何日たっても治らない、または逆に症状が悪化するようであれば、医療機関を受診しよう。
さらに④の症状があれば肺炎の疑いが濃厚なので、ただちに病院へ行く必要がある。
⑤、⑥も要注意。
⑦、⑧に当てはまる人たちは、もともと肺炎にかかりやすく、特に⑨の人
は発病すると、重症化しやすい傾向がある。
軽いせきや微熱も甘く見ず、病院に行くようにしよう。

出典
朝日新聞・夕刊 2013.12.12
(一部改変。当時なかった定期接種が現在は行われるようになっています)


参考
死因の3位肺炎を肺炎球菌ワクチンで予防
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/42180189.html